第25話 明美おばさん

文字数 643文字

「アケミがそうだよ」
とんっと竈から飛び降りて、カドマがマドカの隣に腰かけた。
「アケミは今でもぼくたちが見えるんだ。だからあいつは東京から帰って来たんだ」
「そうなの?」
「そう、あいつ東京で一流企業に就職が決まっていたんだ。それをただの力試しだ、とか言って断って帰って来ちゃったんだよ」
「両親は怒らなかったわ。何も言わずにお帰り、て」
「だからぼくが怒ってやったんだ、もったいないって。そしたらあいつ、なんて言ったと思う?」
「さあ?」
「『お姉ちゃんが嫁に行っちゃったから、私が跡を継がなきゃ、竈祀る人がいなくなっちゃうでしょ。そしたら、あんたたちいらなくなっちゃうでしょ』だって」
 シュンは昨日のおばさんの姿を思い出して、そんなこと言いそうだな、と思った。
「だから、アケミは藤原明美のままなんだ」
「えっ、だって結婚してるじゃん」
「婿養子を取ったんだよ」
「シュン君が来るのを教えたのも私たち。私たちはアケミの前では双子なの」
「年は?」
「二十才位。アケミの精神年齢が若いから」
 大人のマドカを想像して、シュンはドキドキした。
「ねえ、お母さんもおばあちゃんも、どうして十四才で見えなくなったの?」
「さっき、もう私たちが何か手助けをしなくてもいいと言う証って言ったわよね。それは、子供と大人の境目のことなの。昔は、元服や働き始めるころ、お嫁に行くころがそれだったわ。それが今は義務教育とか高校があって、大きくなるまで働いたりお嫁に行ったりしないでしょ。だから、ここでルールを決めたの」
「ルールって?」
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