3Dと3Dプリンタの仕組み

文字数 4,715文字

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

今日のテーマは、「第五章 俺の日常と梅雨の幽霊」の3話にあわせて『3Dプリンタの仕組み』についてちょっとかきます。やっつけ感はなくもない。

ものごっそ基本的なことだが、3Dとは何か。

ん? あれだろ? 立体に見える映像とか。
やっぱりそういうイメージだよね。間違ってはないんだけど。

もともとの語意はthree dimensions。縦横奥行という3つの視点から構成されるもの、まあ三次元なわけだ。三次元的な表現のグラフィックとかも指すけど、モニタ上にある限りは結局3Dに見えるだけの2D画像にしか見えないところは残念だな。ちなみに縦横だけだと2D。ただ、3Dと冠されるものは、基本的には3D情報をもっている。3DCGとかいうときは、データは3次元データだ。こういうデータを作る作業をモデリングって言ったりするな。そのモデリングされた3Dのデータにライティングとかテクスチャの設定をして実際の映画とかゲーム画面に打ち出す作業をレンダリングという。

Temppも昔少しモデリングやってたことがあるんだけど、昔はレンダリングに恐ろしく時間がかかってげんなりした。今は早いんだろうなぁ。

4Dってのはなんなんだ? 四次元なのか?
うんまぁそうなんだけどね、ただ四次元を再現してるわけじゃなくて、3Dに一つの定義を追加することをそう呼ぶことが多いかな。

例えば映画館で空気吹かせたり、水かけたり、においを出したりして臨場感をあげている。遊園地のアトラクションだと座席自体を動かすことで4Dって言ったりすることも多いな。

3Dまでは座標の話だが、4Dになるとちょっと違うんだ。

まぁそれはさておき、3Dってのは3次元ってわかったけど、それを2次元に表示しながら3次元に感じさせるという試みは昔からなされてきた。

古くは赤青眼鏡、最近では映画館である灰色の眼鏡だ。これは基本的な考え方は同じなんだ。

人の目は右目と左目で別々の映像を見ていて、そのずれで立体を認識する。近くのものほどずれて、遠くのものほどずれない。これの焦点がどこになるかってのがまあ近視と遠視なわけだが。

赤青眼鏡はアナグリフメガネっていうのが正式名称なのかな。右側が青、左側が赤なんだが、ようは青いが眼鏡の方では青い線が見えず赤い絵だけ見えて、赤い眼鏡では赤い線が見えず青い絵だけ見える。だから右目用の画像と左目用の画像をわけて表示する。問題は赤と青でわけるから、カラー画像は見えないとこだよな。

映画館の灰色のやつも赤青と同じなのか?
右目と左目の映像をわけるという点では同じ考え方だね。

でもどう分けているかっていうのは結構違う。

そうだな、昔のIMAXはパッシブ・ステレオという方式をとっていた。偏光板というものがある。それは一定方向の光しか入ってこない板だ。化学の実験とかでやったことがあるかもしれないが、2つの偏光板を重ねて回すと、ある角度では真っ暗になるのにある角度では透明になる。そうだな、窓のブラインドで説明するのがいいかもしれない。半分だけとじたブラインドを2つ重ねても光の強さはかわらず窓のそとが見えるけど、ブラインドを縦と横で重ねると外は見えなくなると思わないか?

簡単に言うと一方の目は縦の光しか通さない偏光板、他方の目は横の光しか通さない偏光板をいれて、それ縦だけ通る映像と横だけ通る映像を同時にながすんだ。だから右目と左目の映像はわかれて、立体に見える。

ただ問題があってだな。これは正しく縦横方向で見る必要がある。だから首を傾げたり、劇場の端っこの方から見たりすると正しく認識できない。この問題があるから、初期の3D映画は気持ち悪いとさんざん言われた。

その次に現れたのがReal Dというシステムだ。これは前述のパッシブに、この次に出てくるアクティブ・ステレオという技術を組み合わせたもの。

円偏向方式というのを使っているのだが、これはなんと説明したものかなぁ? さっきのパッシブは簡単にいうと縦方向とか横方向とか直線でくるのをわけてたんだ。円偏向は、右回転と左回転の光をそれぞれ左右で受けるっていうのかな。ごめん、説明難しい。

Real Dは右目用の画像と左目用の画像を交互に細切れに映写するから、従来の者より明るいと言われているね。左右の映像を同時にうつすとやっぱり重なり部分が暗くなるから。


だから前述のImaxより明るく、首を動かしても立体に見えるようになっている。

Real Dはユナイテッドとかコロナシネ系列でよくつかわれてるな。

それが今主流なの?
んー必ずしもそうじゃない。完全なアクティブ・シャッター方式をとっているのもある。

それがXpanDだ。

これはなんていうか、結構ゴツいゴーグル型の眼鏡で、MOVIXとかシネマサンシャイン系列でよく使われてる。

簡単に言うと、一方の画像が出てるときはもう一方を真っ暗にする。これを高速でくり返す。つまり右目は右目用、左目は左目用の映像しか見えないようにする。

欠点は、片目が真っ暗になるわけだから、画像がちょっと暗いことかな。


Real Dだと円偏向のスクリーンにしないといけないけど、XpanDだとスクリーンの変更はいらないところは利点か。流す映像だけ分岐してあとはカメラにまかsれてる。

そういえば裸眼で3D見えるってのもあっただろ。あれはどういう仕組みなんだ?
裸眼3Dテレビの話なら、あれも基本的には同じなんだよね。

画面の方に凹凸をつけたりフィルターをつけて、右目は右の映像だけ、左目は左目の映像だけ見せてる。ただやっぱ欠点はあって、斜めから見ると片方の映像しか見えなかったり、ちょっとしたときに左右が逆転したようにみえちゃったりする。


それとは根本的に違う考え方なのがホログラムだ。

ホログラムが3D映像と違うのは、どの角度からも違う映像が見れること。

例えば猫のホログラムを正面から見ると猫の顔、後ろから見ると猫のしっぽがみえる。つまりその場に3Dデータとして再現される。

ただこの仕組みはなぁ……うまく説明できないや。

えっと一応仕組みの解説は書いてみたんだけど、うまくいかないので、簡単にいうと「ホログラムをとるときは普通の映像に追加して位相っていう情報も保存するんだよ」ってことで、この吹き出しは飛ばしてください。


そもそもホログラムはホログラム映像として撮影する。

目の仕組みの説明をしよう。目と言うのは光の受容体で、色々な光を受け取って頭の中で立体を再現している。

で、例えば猫を見るときは、猫に反射した光を目で受け止めてる。この猫に反射した光は「物体光」、つまり物体に直接反射した光だ。その際目が受け取っているのは光の色(波長・赤外線とか紫外線とかそういうスペクトラム)と光の強さ(振幅)だ。

そして目で見るときには同時に光の位相も取得しているが、位相自体は見えるものじゃないんだ。だからこの光の位相の説明が難しい、ので放棄する。目が直接ものを見るときに取得してるのは色・強さ・位相。OK?

猫を見ると同時に、色々なものの光が見えてるじゃないですか。この、目的物以外の色々な光を参照光という。で、物体光と参照光は当然光なので重なるんです。光が重なると干渉縞っていうモアレができて、このモアレを記録することでホログラフを作る。それを再生する際に回折光が目に照射されてホログラムを読み取る。

本当ごめん、色々考えたけど、うまく説明できなかった。

ん、ごめ。よくわかんない。
デスヨネ。

でこのホログラムのシステムは特殊な方式でホログラムを入力して特殊な方式で出力する。でも、このシステムで注目されてるのは網膜投影ディスプレイなんだ。

QDレーザという会社がすでに今年(2020)の夏からディスプレイをレンタルしているんだが、これは直接網膜にレーザーで映像を投射するシステムだ。網膜に直接投影されるからピントを合わせる必要もないし、近視遠視とかも関係ない。そしてリアルの視界の上に上書きできるから、例えば「掌の上で小さいおじさんを躍らせる」ことも簡単にできる。

交通事故率が爆上がりしそうな気はするが。近未来SFはもうすぐ目の前に来ているな。でもまぁ、最初に飛びつくのはAV業界の予感はする。

今ある初〇〇クさんとかのホログラムはまた違う技術なの?

あの方はSEG★が威信をかけてものすごい技術を投入してるからなんともいえないんだけど、古典的な技術として「ペッパーズゴースト」というのがある。


これは昔から劇場とかで使われたものだけど、これは錯覚を利用したもの。

これも文字だけで説明するのはちょっと難しいんだけど、簡単にいうと劇場の舞台の隣の部屋にお化けを設置して、45度の角度でガラスを置く。それで舞台と部屋の明るさを調整して幽霊をスポットライトをあてたり消したりすると、光の反射で舞台に幽霊が浮かんだり消えたりする。

現代の疑似ホログラムは、原理としてはこれと同じで、舞台に半透明のスクリーンを設置してそこに映像を流す。プロジェクタで流す疑似ホログラム映像は半透明スクリーンに映るけど、それ以外のライトとかはスクリーンを透過するから、スクリーンの後ろの人とかはそのまま見える。それでスクリーンの後ろのものの手前にスクリーンのものを浮いたように表示させるんだ。

例えばミ〇さんをスクリーンに投影して、その後ろにもう一つスクリーンを設置してそこに背景映像を流すと、背景映像と別に〇クさんが動いているように見える。

今はこの半透明スクリーンじゃなくて水蒸気を噴霧させてそこに映写するとかいろいろ方法は開発されている。SEG★は独自の技術を開発してるんだと思う。正直なところ企業秘密なので知らないです。

そんでいつになったら3Dプリンタになるんだ?
そうだな、といってもそんなに難しい話でもないんだよ。

一番最初のほうで話した3Dのモデリングデータを印刷しているだけだから。でも面白い点というのは、世界最初の3Dプリンタの技術には日本の技術が使われていることかな。

一番最初の3Dプリンタは樹脂プリンタだ。液体樹脂に紫外線を照射することで樹脂を固めて作った。これを光造形法っていうんだが、この技術を開発したのが小玉秀男さんって人。実用化したのは外国の人だけどな。積層造形法っていって下の方から薄い板を重ね合わせる方式で印刷していく。だから逆凸型みたいな、突然真ん中が浮くような造形はつくれなかった。

そのうちいろんな方式ができてきて、今ではかなり自由度の高い造形物が安価でつくれるようになっている。

さて、本編に関係ある3Dプリンタは1コマで終わってしまって残念なアレですが、一応アイちゃんは人体内部のデータを持っていなかったから口内が再現できなくてもある意味仕方がなかった、という設定です。

うーん鼻から侵入すればできたといえばできたんだけど、まあ細かいことは気にしない。ご都合主義、そこはSF(すこしふしぎ)で押し切りたい。

アイちゃんはこっそりパッドに侵入しようとしていたけど、指紋認証というものを認識していなかったから、この時点では電子の海にDIVEできてない。DIVEできるようになったのは藤友君の指紋データを手に入れたこのタイミングからで、ここからディープラーニングは加速度的に進んでいく。

ディープラーニングの話はまた今度の機会に。


次回予告です。

5章はかなり人間関係が詰まった話です。5章の備忘はスカスカな4章と違ってどれも重いけど、お読みいただけると嬉しいです。

まぁ、夕方屋でぶっこんでる宇宙論とどっこいどっこいな気もしなくはない。

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登場人物紹介

東矢一人。新谷坂高校の寮に住む。

1年の春、新谷坂山の怪異の封印を解いてしまい、再封印のために散らばった怪異を追う。

作中ではイラストよりもう少し存在感薄いイメージ。

ナナオさん。本名は末井奈也尾。

作中では髪はアップにしている。

にぎやかしと友情担当。

ギャルっぽいなりだが人情に熱く、困った人を放っておけない。

黒猫のニヤ。

新谷坂山の怪異を封印していた。

雨谷さん。雨谷かざり。

「雨谷かざりは同じ日をくり返す。」だけ登場予定。

藤友晴希

坂崎安離

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