日本の幽霊

文字数 2,943文字

いつもお読みいただき、ありがとうございます。


今日のテーマは、「外伝:叫ぶ家と憂鬱な殺人鬼」の6章瀧本家殺人事件にあわせて『日本の幽霊』の話を雑にしてみます。なんていうか、6~8章は正直テーマになることがない。有一君が化けてでてきたからとりあえず幽霊を突っ込む。6章のもう1個は思い浮かばない限り、外国の幽霊にでもしようかな。

さてこれまたどっから初めていいのかわからないが、いつもどおり古いところからいこう。

縄文時代だ。縄文時代の日本人は屈葬という埋葬方法をしてた。これはアジアでもかなり珍しくて、独自の文化色が強い、多分。それで屈葬の時に遺体は石を抱いていた。これは魂がふよふよ出ないようにというのが通説になっているようだ。つまり肉体と別に魂があるという考えは昔から日本人は持っていた。

でも多分このころは祟るとかそういう概念のものではなかったように思われて、これが『みおやのたま』に繋がってるのかなと思ってる。これはなんていうか守護霊とか護国というイメージで、悪いイメージはなかった。ご先祖様が子孫を守る。

悪い幽霊っていうのはいなかったのか?

魂が人に悪さをすると考えられ始めたのは多分古墳時代とか、中国文化とやり取りをするくらいからかなと思う。

前に道教の備忘で古代中国の祖霊神の話を書いたことがあるんだけど、東アジアに共通する価値観で、先祖を崇拝する考え方があるんだ。日本ではみおやのたま。で、中国は祖霊神は基本的には恐れるものという価値観な気はする。これに対応して、御霊信仰が生まれたんじゃないかなと思うんです。御霊信仰っていうのは恨みをもって死んだ人が天災や疫病っていう不幸を起こすんだ。平安時代には既にあって、これを鎮めるのが御霊会。菅原道真がいちばん有名だけど、もう少し前からあった。荒ぶる魂を鎮めるの。

 ただ、みおやのたまにしろ御霊信仰にしろ、これは幽霊とか霊魂というよりは神のレベルの話だな。国が滅ぶとかそういうレベル。

もう少し身近なというかパワー弱い魂というか、個人によせた記載が初めて出たのは多分古事記で、一番古い歴史書。これは天地開闢から始まる神話の話で、みんな大好き伊邪那美のお住まいの黄泉の国が出てくる。有名なあれ。1日1000人殺すなら1500人産んだるわ!って奴。要するに死後の国があるという概念です。正直これ以前の死後の考え方というのはよくわからないのと、古事記・日本書紀は後世にクリエイトされた説があるから原始的な死後感は正直わからないな。

ただこれは多分死んだら黄泉比良坂を下るよっていう話で、そのあとは多分穢れてゾンビで腐って特に輪廻転生もなくずっと黄泉の国、な世界観な気がする。

あれ? そういえば閻魔大王とか輪廻転生ってのはどういう話なんだ?
閻魔大王は基本的にヒンズーからきていて、仏教に混ざって中国で道教にまざってああなった。道教で十王思想ってのがあって他にも9人の仏が死者を裁くんだが、その一人が閻魔大王。他の9人には不動明王とかお釈迦様とかいる。

閻魔大王ってなんとなくキョンシーっぽい服だろ? この時点ですっかり道教にまじってて仏教とはぶった切られている。なお着てるのは唐の官服で、多分遣唐使と一緒に日本にやってきたんじゃないかな。

なお、日本には聖徳太子のころに別口の仏教ルートで閻魔大王がやってきてるんだが、その姿はお地蔵様だ。で、前に神社合祀のところで書いた本地垂迹が出てきて、お地蔵様が閻魔大王にメタモルフォーゼする@日本。日本は昔から変身ヒーローがすきなんだろうな。

そろそろ何の話をしてるのかよくわからない死後の世界の話だけど、死後の世界にいかずに現世に留まっているのが幽霊だよね。そういう幽霊が最初に出てくるのは万葉集だろうか。

「人魂のさ青なる君がただひとり逢へりし雨夜の葉非左し思ほゆ」

簡単に訳すと「前に雨の夜に人魂になった君にあって超びっくりして逃げ帰ったよ」

でもまあびっくりしたがメインであんまり怖くない。怖い幽霊が出てくるのはちょっとだけあとの時代の「日本霊異記」かな。これ、オリジナルタイトルは「日本国現報善悪霊異記」っていう厨二病的ネーミング。

結構変な話多いよね。ええと、その。
そうそう、ちん○に蟻が集って死ぬとか死んだ息子のちん○舐○て来世も一緒にいたいと仏に祈ったり、修行したり仙薬飲んだ人が空の彼方に飛んでった話とか結構変な話多い。

それはそれとして、これは平安時代に末法思想(あーこの世の終わりだーもうだめだー)が流行った時に仏教が勧誘活動した仏教説話なので、妙に仏教押しが増えている。

で、ここでドクロ探しで昇天の話とか、善い行いをしたり仏僧に優しくしたりするといいことがあるよ★ 仏僧をいじめると地獄におちるよ★ という話がたくさんある。で、仏というのは人を救うものだから、このころの幽霊はやたらとグロいのが多い。ちょっと時代は先だけど、平家の落ち武者とか頭に矢が刺さってたり具体的にグロいのは、こういうのを仏教が救うぞというアピールだと思う。なお、このころの幽霊は足が生えていて結構リアルな姿をしていた。

なお、幽霊が足をおっことしたのは江戸時代に入ってから。

wikiだと1673年の井上播磨掾の浄瑠璃って書いてあったけど、浄瑠璃はよく知らないのでノーコメな感じで。なお、幽霊は夏の季語なので、俳句の際にはお使い下さい。「ひゅーどろろ。幽霊出たぞ。ひゅーどろろ」でも立派な季語入り俳句になるという。

知らない話を書いても仕方がないので、日本霊異記に戻って鬼の話をする。

日本霊異記には鬼の話が3つある。閻魔様の手下のほっこり鬼2体と、女の人を食べちゃう悪い鬼1体。「鬼」はどこから出てきたのかを考えよう。鬼の初出は日本書紀。720年に完成したといわれている書物。ここに鬼というのは奇怪な姿で出てくる、でも特に悪さをしているわけではない。だから多分渡来人説は強いのかなと思うんだ。でもじゃあなんで渡来人を「鬼」という字が当てられたのかというと、自分的には中国から来たのかと思ってる。

前に書いてた志怪小説のやつか?
そうそう。前に道教で書いたやつ。曹丕が始めた志怪小説(不思議話集め)は唐の時代に伝記小説っていうので一大ブームになってさ。変な話がいっぱい集められたんだよ。それで閻魔大王と一緒に遣唐使で渡ってきたんじゃないかなと思ってる。
まあ日本書紀見るともっと前からあるけど、自分は編纂時期に若干疑問をもっていて、遣唐使の影響もあるんじゃないかなとこっそり思っている。

そもそも曹丕のは200年代だからもっと古い。それで曹丕の頃は鬼は幽霊とか不可思議なものを指していて(中国では今もそうだけど)、だから不可思議な渡来人をさしたんじゃないかと妄想しているなう。そっからどんどん遣唐使を通じて怪奇小説が入ってきて、そのころから日本でも怖い鬼が出てくる怪異ものの話が増えてきているイメージ。今昔物語はもう少しあとだけど。他にもいろいろな説はあるんだけど。

そんなわけで結局幽霊がなんなのかはよくわからないけど、とりあえずこれで急場は凌ぐ。6~8章はまじネタがない。どうしよう。困った。

何かいい案があればほしいです。お願いします。説に。

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登場人物紹介

東矢一人。新谷坂高校の寮に住む。

1年の春、新谷坂山の怪異の封印を解いてしまい、再封印のために散らばった怪異を追う。

作中ではイラストよりもう少し存在感薄いイメージ。

ナナオさん。本名は末井奈也尾。

作中では髪はアップにしている。

にぎやかしと友情担当。

ギャルっぽいなりだが人情に熱く、困った人を放っておけない。

黒猫のニヤ。

新谷坂山の怪異を封印していた。

雨谷さん。雨谷かざり。

「雨谷かざりは同じ日をくり返す。」だけ登場予定。

藤友晴希

坂崎安離

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