ヤバい家の賃貸広告

文字数 3,683文字

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

ということで俺氏渾身の『空想科学呪いの家』が始まった!。序から結構気合い入れてるんだけどどうでしょうか(どきどき。

今日のテーマは、「叫ぶ家と憂鬱な殺人鬼」の第1章にあわせて『ヤバい家の賃貸広告』についてちょっとかきます。ようは事故物件の扱い方だ。法律的な話が多いので、興味がなければスルー下さい。

ところでこの話、冒頭に呪いの家の物件広告を入れているんだ。そこに気になる一文があるだろう。『ご契約に際し説明事項がございます』。

呪いの家っていう説明?

幽霊が出ますとか説明するのか?

ここに多少誤解があることがある。

『幽霊』や『呪い』があるから説明するわけではないんだよね。『幽霊』や『呪い』の噂がありますっていう説明をするんだよ。本当にいるかどうかは関係ない。

んん?幽霊が出るかどうかは関係ないのか?よくわかんねぇ。
んんん、なんて言ったらいいかなぁ。

民法という人同士の約束をするときの決まりを定めた法律があるんだ。それに『瑕疵』っていう概念がある。『瑕疵』っていうのは簡単に言うと『通常有すべき性能を欠いている』っていう状況だな。

ちょっと前にこの民法っていう法律はかわって、この条文から『瑕疵』っていう概念がなくなって『契約不適合責任』っていうのに変わった。

それによって例えば損害賠償の内容とか細かいところは変わったりはしてるんだが、根本的な『瑕疵』というのは『契約不適合』の状態とおそらくほとんどズレがないと思うので、その前提に話をするね。

そもそもの話、例えば裁判になったとしてさ。

『幽霊が出て住んでる人が祟り殺されたから損害賠償しろ』っていうのは通らないんだよ。だって『幽霊』がいる証拠と『幽霊のせいで』死んだ証拠ってないだろ? だから幽霊で直接相手を攻めるのは無理なんだわ。

『幽霊』の有無っていうのはこの瑕疵には入らない。
そこで出てくるのが『心理的瑕疵』ってやつ。

例えばさ、雨漏りがする、とか地盤が傾いている、とか『知ってたら買わなかった』よな。

それと同じように幽霊が出ると『知ってたら買わなかった』、それなら瑕疵にあたる。


気にしないから買うっていう奴もいるだろ?

そういうときはどうなるんだ?

世の中にはそういうのを狙ってる人もいるとは聞くよね。

結局の所は裁判例で多少は限定されていて、

①普通の人にとって当然予定されててるだろってことを知らせないのは瑕疵にあたる。

②その約束した人から予めここは気にしてるからって言われてたのに知らせないのは瑕疵にあたる。

①についてはまあ、大量殺人が起きたとかいうならこれは知らせるべきだろっていうか普通知りたいだろ。

まあここもあいまいな部分はあるけど、なんとなく普通は知りたいだろうなっていう情報は知らせたほうがいい。

②については例えば『事故物件は嫌だ!』っていってたら、事故物件は知らせたほうがいいし、前の人が病気で亡くなってたりしたら知らせたほうがいいと思う。事故物件が嫌ってのは前に人が死んでるから嫌なわけで、普通に考えたら病死でも嫌だよなと思うだろうから。

アンリだと『面白い家がいい』とかいいそうだけどそれはどうなんだ?
あーうーん。それ言われると不動産屋さんめっちゃ困るよね。

基本的に希望に沿う家を仲介しないといけないから、何らかの理由で坂崎さんが面白いと感じる要素のある家を仲介しないといけない義務が発生するというか。まあ、将来的に藤友君と同棲でもすればいいと思うよ? 藤友君は絶対嫌がるだろうけど。

まあそんな感じなんだが、これってものすごい判断が難しいんだ。


結構昔の大阪高裁の裁判例だと「建物にまつわる嫌悪すべき歴史的背景など客観的な事情に属しない事由をもって瑕疵といいうるためには、単に買主において右事由の存する家屋の居住を好まぬというだけでは足らず、さらに進んで、それが通常一般人において右事由があれば『住心地の良さ』を欠くと感ずることに合理性があると判断される程度にいたったものであることを必要とする」としてて、実際はその内容がどれだけヤバいかとか時間がどのくらい過ぎてるかとか、使う人の目的とか周りの人が覚えてるかとか、そういういろんなことを検討して判断される。

ようは裁判官のフィーリングによるところが大きいと……。
そこなんだよなぁ。限界事例がわからない。

例えば最近は人がなくなるときはだいたい病院でなくなるでしょう? じゃあ長年その家で闘病生活を送ってた人は含まれるのか、とか。これは直近ならともかく結構前ならいいような気もする。

もっと困るのはその建物で過去に誰も死んでいないのにポルターガイストが起きたり幽霊が見えるとかそういう場合。こういう建物ってたまにあるんだわ。これは直前の人がそう感じていたのなら説明すべき気もするが、精神領域の方は困るよな……。いや、どちらかというと精神領域の人が住んでいたことのほうが瑕疵にあたるのか?

でもそれならプライバシーとかで無理、免責事由にならないから、「そういう話を聞いている」という説明をしないと後で損害賠償請求されるかもしれない。

それともう一つ問題なのは、この分野は裁判例がそれなりには積み上がっているんだけど、死生観は多少ずれるような気がするんだよな。一応大丈夫だった裁判例を上げとくとこんなのがある。

・建物建てて分譲する予定の土地に昔建築されていた共同住宅で9年弱前に焼身自殺があった。

・建物取り壊して新しく分譲建物を建てる予定の既存建物に2年前に自殺した人がいた。

・売買のときにもう建物はなかったけど、前の建物で7年前に自殺があった。
・借りた部屋の近くで自殺があった。

傾向としてはなんとなくだが、建物が違う場合やその家ではない場合は大丈夫なケースが多い気はする、がその他はアウトなイメージだ。

事件があったと知らなかたらどうなのかな。
売買とかで所有者が何度も変わっている場合に、最終の売り主が知らないことはあるな。

買主もあとから知って売り主は知らなかったっていう場合は責任を免れている事例を見たが、例えば地元の不動産業者が実は知ってた場合はやっぱり知らせないとだめな気はする。

知ってたらアウトだと認識したほうがいい。

そんで話を寄せるが、結局不動産業者としても仲介してあとで説明して契約しないなら無駄手間だから予め募集広告には記載したい。でも『この家で前の住人が自殺してます』とか書くとそれが業者に知れ渡るわけだろ? 最近はネットで広告もするし近隣住民に見られたらひどい二次被害が起こりかねない。

だから苦肉の策で『説明事項があります」とか書くわけだよ。柚の住んでる呪いの家の物件広告みたいに。

ほへー。そういうことか。最初見たとき「なんじゃこりゃ」って思ったわ。

まあ家賃とかからみてもやばいことは一目瞭然だったけどな。

まあ基本的にはそんな感じ。それで心理的瑕疵ってのは結構幅広い。

例えば忌避施設っていうのがあって、廃棄物処理場とか火葬場とか留置場とかそういうものが近くにあるとなんだか嫌だなと思うときは告知するべきだと思う。あとは組事務所とか。

ここで最近困るのが『学校』なんだよな。子供の声を不快に思う人が何故か若者より老人世帯に多い気がする。このへんを広げていくと正直本当にどこまで広がるかわからないんだよ。

だから国とか都道府県にガイドラインを作って欲しいとこっそり思っている。

東京都は結構前に賃貸借の原状回復のガイドラインを作ったことがあって、そういう基準があれば『通常一般人』と言い切れる気はするし。まあ結局状況にもよるだろうから難しいし作られないんだろうねとは思っている。

何年以上の自殺の場合は告知すべし、ってのもおかしな話。

結局賃貸の場合は大家さんは大損だ。原状回復はともかくこういうのって死んだ人の遺族に請求できないもんな。

さてじゃあその『家』以外のはどうなのか。例えば近隣でエゲツない人の死に方をしているとき。これは基本的によっぽどじゃない限りはある程度の説明義務は免れるように思う。だって具体的な事情とか知りようがないしね。

それに近隣で死んでも普通はその該当の家に影響を及ぼすとは考えられないような気がする。ただ1件ずつ持ち主が順番に死んでいて近づいてきているなら告知したほうがいいような気はするけど。

隣近所の不幸って知りようがないのかな。
まあ周りの人に聞き込みするとかかな。

大島てるっていうサイトで事故物件と事故内容が掲示されていたりする。でもTemppの住んでる東京って人が多くてさ、当然事故や死ぬ人も多い。だから東京に限っては近隣の事故物件は気にしても仕方がない気がするな。

さて、現在『叫ぶ家と憂鬱な殺人鬼』を順次公開しています。

一応全部は下記がってるんだけど、後半は少し付け足す予定。あわせてこの備忘も3~5日に1回UPできればいいなと思っています。次はどうしようかな、1章の間はあまりネタがない。

『呪い』について書いてみようかな、と思っている。

まだ未定。

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登場人物紹介

東矢一人。新谷坂高校の寮に住む。

1年の春、新谷坂山の怪異の封印を解いてしまい、再封印のために散らばった怪異を追う。

作中ではイラストよりもう少し存在感薄いイメージ。

ナナオさん。本名は末井奈也尾。

作中では髪はアップにしている。

にぎやかしと友情担当。

ギャルっぽいなりだが人情に熱く、困った人を放っておけない。

黒猫のニヤ。

新谷坂山の怪異を封印していた。

雨谷さん。雨谷かざり。

「雨谷かざりは同じ日をくり返す。」だけ登場予定。

藤友晴希

坂崎安離

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