ブードゥー教とゾンビ映画
文字数 2,673文字
一般小説の『雨谷かざり(略』の第7話に関連する『ブードゥー教』について、備忘もかねて色々かいてきます。
ニワカなので、間違ってたらご指摘頂けるとありがたいです。
今日話したいのは最初のゾンビ映画。「恐怖城」又は「ホワイトゾンビ」と呼ばれる白黒トーキーの作品だ。製作は1932年。
これ、主演の人が「ベラ・ルゴシ」っていう目力のすごいめっちゃイケメン俳優さんなんだけど、前年に「ドラキュラ」のドラキュラ役で光った人だ。その辺がこんがらがってるんじゃないかと思ってる。この人は亡くなった時もドラキュラの衣装で埋葬されたという筋金入りだ。
簡単にあらすじをいうと、ハイチに新婚旅行に来たカップルが現地の地主に横恋慕される。地主はゾンビマスター(ルゴシ)からもらったゾンビパウダーを嫁さんにかけてゾンビにするんだけどちっともなびかなくて、マスターに文句いいにいったらゾンビにされちゃて、その後も色々あって結末は伏せるけどラストまでいってもなんだそりゃっていう話。
さて、そもそもの誤解があるんだけど、この映画のゾンビは「死体」じゃない。「生きてる人間」なんだ。で、作中のゾンビは基本的にハイチの砂糖工場で真面目に働いている。人を襲ったりしない。
以下は、ニワカなので誤解があるかもしれないことを予め断っておきます。
ブードゥー教っていうのはもともと西アフリカあたりにあった民間宗教だ。自然とか祖先を大事にする。
ブードゥー教自体には厳しい戒律があったりするわけではなく、現在では基本的にキリスト教に準拠していると思われる。これは、西アフリカから奴隷として連れてこられた際に弾圧を免れるために混ぜ合わされたためと言われている。
真なる神様がどこかにいるけど、神様は基本的に関与しないし、人間も神様に会えたりはしない。神様と人間の橋渡しをするのがたくさんのロアと呼ばれる存在。なんとなくイメージ大精霊っぽい。それで、ロアにも色々いて、愛のロアとか海のロアとか森のロアとかいろいろいる。この辺は日本の神話とかギリシャ神話っぽい。
なんとなく治一郎の師匠が共通性を覚えるのもわからなくもないんじゃないかな。ちなみにロアも系統があって和魂っぽいラダっていうグループと荒魂っぽいペトロっていうグループ、あと死神のゲーテがいる。
ロアの神官っていうのがいて、歌って踊ってロアをおろして神託とか裁判をする。このへん沖縄のユタと似てる気がする。
で、裁判の結果ゾンビの刑となった場合、ロアの神官が持ってるゾンビパウダーを使って刑を執行する。
外から見たら「ゾンビ」っていうイメージがついちゃったから変な感じはするけど、もともとは穏やかな民間信仰なんだよ。信者も結構いるし。
そんで、ゾンビパウダーの前にゾンビ化について考える必要がある。ここのゾンビは「死体がよみがえる」的なあれじゃなくて、「犯罪者を砂糖工場で働かせる」的なほう。
さっき「恐怖城」でゾンビパウダーをかけてゾンビにするってやつ。
これ、人を催眠状態にするか精神を壊して単純作業させるって代物。でもこれって、ある程度薬とか使えば実現可能な気がしない?
デイビスはゾンビ化の原因はフグ毒だって強プッシュしてたんだけど、ちょっと懐疑的。今はデイビスが組成を調べたゾンビパウダーの中に含まれていたダチュラ成分が有力なんではないかと考えられてる。
ハイチの刑法で「ゾンビの儀式を行ってはいけない」っていうのがあるらしいけど、やっぱり実際に何らかの効果がある薬品を使ってるからこそ法律になったんじゃないのかな。
朝鮮朝顔のことだ。っていっても原産は朝鮮じゃなくて南アジアの方っぽい。「外来」っていう意味で朝鮮なんだと思う。ダチュラっていう名前で園芸店とかに売られてる。
摂取すると色々作用はあるけど、意識障害とかせん妄が起こることがある。
江戸時代に華岡青洲ていう人が『通仙散』っていう名前で麻酔薬として使っていた。全身麻酔としては世界初らしく、今も日本麻酔学会のロゴマークで使われてる。華岡青洲は主に乳がんの手術にこれを使っていたが、当時の成功率(完全緩解かはさておき)はかなりのものだったらしい。ちなみにこれ、明治時代くらいまで使われていたから、治一郎の師匠の頭にもあったかもしれないな。