口裂け女は現代日本で生きていけるか

文字数 3,434文字

いつもお読みいただき、誠にありがとうございます。

今回のテーマは『口裂け女』です。

連載中の『不運な俺と首狩り魔人』で、ちょくちょく例に出しているので、なんか書いてみたいと思います。

なお、作中の都市伝説感は、勝手に作った空想科学都市伝説なので、あまり本気にされないでください。

あの、さ、申し訳ないんだけど、そもそも高校生に『口裂け女』ってわかるもんなんか? 私らは都市伝説好きだから大丈夫だけどさ。
!!
そうか……高校生ではわからんか……。なろうで先に投稿したんだけど、ひょっとして誰も意味がわからんかった可能性があるんかな……。

でもTempp だってリアルタイムに知ってるわけじゃないからな? 念のため。

お……おぅ。
口裂け女の歴史から。といっても妖怪としてはもっと前の江戸時代のころからいたんだけど。

いわゆる「口裂け女」の始まりは1978年末の岐阜が発祥とされている。

今では通学路とか路地とかで待ち受けていそうなイメージだが、最初の事件は農家のばあちゃんが家から離れのトイレに行く時に見かけたってのがあらましで、これが岐阜新聞にのった。昔のトイレは家の外にあったんだよな。

どういう報道だったのかは気になる。事件欄なのかゴシップ欄なのか。

なんか随分イメージ違うね。
そしてそっから怒涛の勢いで全国に広がり、各地の小中学校に集団ヒステリーを巻きおこしながら、1979年の夏には突然収束する。
えっなんで?
夏休みに入って子供があわなくなって噂をしなくなったから、という説がある。
…………。
でもこれって都市伝説としてはセオリー的な動きだと思うんだ、所詮うわさだから。『首狩り魔人』の空想科学都市伝説も同趣旨だけど。

でも口裂け女の面白いところは、比類なきリバイバル性だと思う。


ナナオさんはこのころの都市伝説って他に何か知ってる?

うーん、人面犬とかトイレの花子さんとか?
人面犬はわかりやすいかも。人面犬とか人面魚とか、動物に人の顔がついてるモチーフは世界中で結構ある。人面犬の噂が流行る直前の映画に『ボディ・スナッチャー』というSFホラーがあるんだが、これにも人面犬はでてる。日本の人面犬はこの映画を見た酔っ払いが路地で見間違えたんじゃないか、と思ってたりもする。

ちなみにこの映画は、ちょっとした違和感というものがいかに気持ち悪いかっていう点で、昔の映画という点を了承いただければ、ホラー映画好きには結構お勧めできる。

妖怪だと『くだん』もいるよね。凶事を予言するっていう。コロナ前にくだんをみたっていう記事をネットで見た気がするな。
人面犬ってのはリバイバルしないんだ。人面犬は襲ってくるわけでもなくグチいってやさぐれてる犬で、物珍しいけど怖くはない。そうすると都市伝説が内包すべき恐ろしさに欠ける。わざわざ広めるほどのことか?ってやつ。

ちなみにTemppは人面犬が最初に発見されたと言われてる中野の路地に行ったことがある。中野通りっていう結構大きい道路とサンモールっていう商店街に挟まれた短い路地で、薄暗さはかけらもなかった。昔このあたりに「中野武蔵野館」っていう映画館があって、そこで「ボディ・スナッチャー」やってたとしたら、やっぱり映画を見た酔っ払いが見間違えたんじゃないかな。


わざわざみにいくって……。
目的は他にあったの! ついでなの!

と、話を戻すと、口裂け女のリバイバル性だ。口裂け女の話が大規模に広がったのは先の1979年だが、その後も折をみて噂が復活している。しかも時代に合わせたバリエーションをつけながら。

ポマードとかか? あと三つ子とか聞いたことがあるぞ。
ポマードは発祥当時の噂じゃないかなぁ?ポマードってそのくらいの年代な気がする。

口裂け女のベーシックストーリーは、マスクをつけた女が「わたしきれい?」って聞いてきて、きれいって答えたら口裂け女はマスクを外す。そうすると口が裂けてて、口裂け女にハサミで口を裂かれるってパターン。

これに、口が裂けた理由として整形手術の失敗ってのが加わったのが1990年代。

1979年頃は整形手術って知られてなかったから存在しなかったのを、1990年ごろの整形手術への不安とか反発とかを取り込んで、新しい理由づけになった。

つまり口裂け女は流行を取り込んだんだ。

そういう変化するのって珍しいの?
同じ話が基本を変えずにここまでバリエーションを持つのも珍しいと思う。

さっき上がったトイレの花子さんも似た系統ではある。友達妖怪とかいろいろなバリエーションがあるし、最近は男子バージョンもあるらしい。小学校っていう舞台と子供の発想の豊かさから、どんどん新しい噂が誕生するんだ。荒唐無稽でも子供は気にしないからな。でも場面が学校に限定されるから社会に広がるのは難しいし、今のトイレは明るくて綺麗だから、今後はなかなか難しいかもしれない。

口裂け女が長年愛されている?のは、「怪しい女が道に立ってて襲われる」っていう条件がメタすぎるからだと思う。

普通に事件としてもあり得るよね。不審者とか異常者とかリアルに存在しえるから、長年ありうるうわさとして存在しえたんだと思う。

空想科学都市伝説でかいてみた、実在性というか。結構突拍子もない設定を付け加えてみてもありえると思えてしまうところとか。

ああ、限界値が6話ででてきた『口裂け女はかかと落とししながら斧を投げてきたりしない』ってやつか。

確かにそこまでいくとないだろと思うけど、包丁もってたり首を切ったあと口を裂くとか、いくらでもバリエーションはできそうだなぁ、怖ぇぇ。

でも最近はあんまり聞かないぞ。もう廃れたんじゃないの?
流石に今は不審者がいたら警察に取り締まってもらえる時代になっちゃったからなぁ。無言で道に立ってたら通報されるっていう今まで考えられてなかった切り口から、口裂け女の実在性に不自然さが生まれるようになってきた。

だから今の口裂け女は別の方向で草の根活動をしている。

草の根活動?
ナナオさんは『貞子vs伽椰子』って映画知ってる? 続編も出てるけど。
おお。リングの貞子と呪怨の伽耶子が殴り合うやつな。結構笑えた。特にラストバトルがやべぇ。
そうそう、口裂け女はいまその方向で頑張ってる。かしまさんと2回、ひきこさんとメリーさんと1回ずつ戦ってる。

しかもメリーさんは2017年、かしまさん2は2018年の最近の話だ。

ちなみに面白いかというとどれも微妙なとこだが。

あと海外展開もしてる。2019年の秋「ゴーストマスク〜傷〜」ていう口裂け女モチーフの韓国映画が上映された、見てないから見たい。2014年だが「口裂け女in LA」ってのもある。こっちは何が何だかよくわからん映画だったがジャケは怖い。

やっぱ口裂け女は知名度大きいからオファーはよくあるのかもな。大抵の人は名前だけは知ってる、多分。

でも最近の都市伝説感からは離れて来てるから、そろそろリアルでは廃れる気もする。

ところでナナオさんは、最近の都市伝説って何が思い浮かぶ?

うーん、くねくねとか如月駅とかかなぁ?
そういうのってだいたいネット発祥じゃない? 現代のコミュニケーション自体がネットとかSNSとかを媒体とするようになっているから、そういうのを媒体にしないご近所付き合いベースの口裂け女が今後も現代社会でいきていくのは大変かなっていう気がするな。

知らない女に話しかけられて応答するところから始まるだろ? ところが今の子供は知らない人に話しかけないし話しかけられたら逃げるように指導されてる。きれいもなにもないな。会話が始まらん。

それに今は着信アリとか前に流行った呪いのチェンメとかのキャラクターがないのも台頭してる。電話系はメリーさんに先取りされてるしな。

だからこそ、電脳空間にダイブする方式でパラダイムシフトをしてもらえると面白いんだが。他の怪異とのメディアミックスでドリームチームを作るとか。口裂け女にも頑張ってほしい。なんだろう、この非現実の更なる非現実化というカオスな感じ。

最近ではUFOもドローンに駆逐されておるしのう。
お父さんが子供にUFOだよっていったら子供にドローンだよって訂正されるとかね。

もっと世の中に怪異が増えた方が個人的には面白いかなと思います。

そんなわけで、今回はここまで。

ちなみに今回の話は他のと違って根拠のない話なので、あまり信用しないでいただけると幸いです。ご意見は歓迎です。

それではまたお会いできれば嬉しいです。

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登場人物紹介

東矢一人。新谷坂高校の寮に住む。

1年の春、新谷坂山の怪異の封印を解いてしまい、再封印のために散らばった怪異を追う。

作中ではイラストよりもう少し存在感薄いイメージ。

ナナオさん。本名は末井奈也尾。

作中では髪はアップにしている。

にぎやかしと友情担当。

ギャルっぽいなりだが人情に熱く、困った人を放っておけない。

黒猫のニヤ。

新谷坂山の怪異を封印していた。

雨谷さん。雨谷かざり。

「雨谷かざりは同じ日をくり返す。」だけ登場予定。

藤友晴希

坂崎安離

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