久久能智神と木の神様に関係しそうな日本神話

文字数 4,249文字

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

今日のテーマは、「怪談6章 小さいさんの贈り物」にあわせて『木の神様』の話を雑にしてみます。もう6章終わってるけど忙しかったorz

6章で登場するくくのちの神は『古事記』では久久能智神、『日本書紀』では句句廼馳と書かれる木の神様です。この神様は伊邪那岐命と伊邪那美命が国産みのあと神産みとして生んだ神様だ。

国産みって何だ? 国が生まれるのか?
そうそう。イザナギとイザナミは高天原の神様に命じられて天沼矛でぐるぐる大地のもとをかき混ぜて淤能碁呂島(おのごろじま)を作る。その後この島に降りて八島(日本列島)をつくるんだけど、その前に結婚するわけでその表現がなんかエロい。日本神話は素エロが結構多くはあるのだけど。

ええとお互いの体はどうやってできてるかって聞いて、「私の体はどんどんできたけどちょっと足りないところがあるワ」「俺の体もどんどんできて余ったところがある」「じゃあ足りないところに余ったところを刺して国をつくりまそう」まんまやんか!

まあそれで天御柱を別れて会って、イザナミから「まあイケメン」って声をかけてヤッたらヒルコができて、もう1回やったら淡島ができて、その2柱はまとめて船に乗せて流した。そんでなんでできへんのって声をかけたら「女から誘ったらあかんのや」みたいなことを言われてイザナギから声をかけたら国が生まれたという、なんだかものすごく生臭い経緯で日本列島ができました。

その次にヤッたのが神産みで、建材の神とか風とか海とかいろいろなものの中で11番目に生まれた神とされている。

木の神や芽の神。その次に生まれたのが大山津見神(オオヤマツミ)と鹿屋野比売神(カヤノヒメ)だ。

その後は技術というか、船の神様である鳥之石楠船神(トリノイハクスブネ)、穀物の神様である大宜都比売神(オオゲツヒメ)、火の神様の火之迦具土神(ヒノカグツチ)で、ここまで35柱生んだあと、イザナミは最後に産んだ火之迦具土神にアソコを焼かれて死んだ。

スケールが大きすぎるのか小さいのかよくわからないよね。

さて、くくのちの神自体は古事記でも日本書紀でもとりたてて何をしたという記載はない。多分扱いは大精霊とかエレメンタルとかそういうイメージな気がする。

でも結構身近なことは身近で、屋船豊宇気姫命(アフネトヨウケヒメ)とともに祀られる屋船久久遅命(ヤフネククノチノカミ)はこのくくのち神と同じものとされている。建物を新築した時に上棟式や竣工式で祀られる屋敷神で氏神さまと共に祀られる。

これは昔からの話で、延喜式という平安時代の法律細則でも大殿祭の祝詞の中で建材の神とされていて、『これ木霊なり』と記載されている。でも木霊となるともう少し神格は下がって身近な感じはする。

その木霊(樹霊)なんだけど、これはよんでそのままこだまで、木のエレメンタル。平安中期の和名抄なんかでは文献を引いて『木魅山鬼と同じもの』としている、今の木霊のイメージって『お前に3を救えるか』的な小さくてかわいいものがメインストリームな気がするけど、もともとはもっと荒々しいイメージだった。

木というものは近代文明(石造り)がやってくるまでは日本ではとても重要なもので、今は薄れってしまってるけど木を伐採する時はお供えをすることが多かった。今も神社にお願いすればやってもらえるけどあんまり聞かないよね。

それで日本神話には他にも木の神様がいて大屋毘古神(おおやひこのかみ)、五十猛命(やそたけるのみこと)、木俣神(きのまたのかみ)かな。

大屋毘古神は家宅六神っていうのはイザナミとイザナギが一番最初に生んだ家を守る神なんだけど、けっこうごちゃごちゃしていて五十猛命と同じ神という説と違う神という説がある。違うという説では五十猛命は須佐之男命(すさのおのみこと)と櫛名田姫(くしなだひめ)の子供という記載もあるんだけど、須佐之男が最初に高天原から降りたのが新羅で、その時に五十猛命も高天原から木の種をたくさん持っておりたっていう説がある。それだと櫛名田姫との子供とは違う。それで新羅から九州に渡ってきて木を沢山植えたという伝説がある。須佐之男が渡来人といわれるのはこのせい。ちなみに木俣神もまた五十猛命と同じ神だという説がある。日本書紀は色々Verがあって記載がカオスだ。全部並行して比較しているわけではないので、適当な部分があるところを始めに誤っておきます(遅。

新羅って言うと韓国とか朝鮮か? 日本の神様じゃないのか?
そうだなぁ。木の神様だけじゃじゃいまいち面白くないからなんでそんな事になったのか書いてみる。須佐之男命ってのはヤマタノオロチで有名だけど結構イカレた神。古事記ベースに話をすると、伊邪那岐が黄泉の国から帰ってきて阿波岐原(あわぎはら)で禊を行ったときに鼻を洗いだ時に生まれた神様。須佐之男は夜の食国(ヨルノオスクニ)か海を治めるよう言われたけど、伊邪那美(ここの表記は古事記では伊邪那美は母になってるんだけどでも古事記だと禊で生まれたから母なはずがなくて何か変)のいる黄泉の国へいきたいんじゃ! って言って伊邪那岐に追放されるん。まあ1000人殺して1万人産む関係だからな……。

それで根の国に行こうとするんだけど、根の国っていうのは出雲にあるとされている。黄泉の国と根の国は同じくにという説と違う国という説があるんだけど、なんとなく黄泉平坂が分かれ道で、黄泉の国と根の国は別々なんじゃないかなとおもている。そのへんの違いとかそのへんを始めると楽しいけどそれは置いておいて、ともかくお出かけする前にお姉さんの天照大神(あまてらすおおみかみ)に挨拶に行くんですよ。

それで登場があまりにも荒々しかったから須佐之男が攻めてきたんかと思って天照大神は男装で武装して戦うんですよ。で須佐之男は自分に悪意はないんだと言い訳して、子供が男だと潔白で女なら悪心があるってことにして男を5人生んで誤解が解けた。
ちょっと何言ってるかわかんない。
まあ日本神話ってそんな感じなんだよ。

それで一応誤解は解けたんだけど、その後が酷くてさ、須佐之男は田んぼの畦を壊したり天照大神が機織りしている最中に屋根から皮をはいだ馬を投げ入れたりするんだ。お前根の国行くんじゃなかったのかよみたいな。天照大神がブチ切れて天岩戸に閉じこもって世界が闇に包まれんだ。それで天鈿女命(あめのうずめのみこと)が裸踊りして出てくる。

でその落とし前っつか、須佐之男は結局髪むしられて手足の爪を抜かれて追放されて流れ着いたのが出雲の国でヤマタノオロチに食われそうになった櫛名田姫を助けるっていう話。で結局その後根の国に行った。

で根の国に行くのが古事記の話。【もある】というのは他のVerもある。須佐之男命は結構変な話が色々混在しているパターンの人だ。

そんなわけで高天原から降りてきた五十猛命は国中に樹を植えて国を緑にした。それで須佐之男の髭を抜いて杉にして、胸毛を抜いて桧にして、尻毛を抜いて槇にして、眉毛をくすのきにした。日本の木は須佐之男の毛です。

それで須佐之男の子供で一緒におりてきた五十猛命と大屋都比賣神(おおやつひめ)と抓津姫神(つまやつひめ)は日本全国に木の種をまいた後、紀伊の国に住んだことになっている。五十猛命は功績があったという有功(いさおし)の神といわれて紀伊の国の大神になった。

最後の木俣神っていうのはどんな神様なんだ? なんか名前が適当だけど。
木俣神は大穴牟遅神(おおなむちのみこと。古事記だと大国主神(おおくにぬしのかみ)の息子とされているけど日本書紀だと大国主神と同じ神とされていて、どっちみち五十猛命の親戚)と因幡の八上比売木(やかみひめ)との間にできた子供なんだけど、大穴牟遅が須勢理毘売(すせりひめ)と結婚する時に八上比売木が木の俣に挟んでおいていったから木俣神と名付けられた。なんか可哀想。
この話は因幡の白うさぎと関係があってさ。大穴牟遅は兄弟の八十神(やそがみ、八百万と一緒で複数形)が八上比売に求婚に行くのに荷物持ちでついていった。そこで因幡の白うさぎをみつけたんだけど、八十神は皮を剥がされたうさぎに潮風に当たるといいとか騙したところを大穴牟遅は傷薬をつけて助ける。

多分この辺までが因幡の白うさぎの一般的な話でこのあともgdgdな展開がある。

大穴牟遅はうさぎに「意地悪な八十神はだめだけどあなたの求婚は通じますよ」と言われる。うさぎの予言通り八十神は八上比売にふられたけどうさぎを助けた優しい大穴牟遅はOKで結婚することになったんだ。なお、こんなご縁で大穴牟遅はうさぎの神様でもある。

その話はなんとなく聞いたことがあるな!

けども八十神が逆恨みするんです。大穴牟遅に赤い猪を自分たちが追い落とすから捕まえろ、逃がすとお前を殺すと騙してでかい石を真っ赤に焼いて山の上から転がすんだよ。それで大穴牟遅が組み付いてそのまま焼け死んじゃうの。

それで大穴牟遅の母が高皇産霊神(たかみむすびのかみ)に助けをもとめて蚶貝媛(きさがいひめ、赤貝)の殻を削って黒い粉を作って蛤貝媛(うむがいひめ、蛤)が水を出してこねて乳白色になったナニカ(なんかエロいよね)を大穴牟遅に塗りつけるととりあえず治ったんだ。

でも八十神は今度は大きな木を切って罠をしかけてその間に大穴牟遅を木に挟み殺してたんだけど、今度は母が木から取り出してなんとかして、木国(きのくに、多分紀伊国)の大屋毘古神のところに逃がす(ここの大屋毘古神=十猛説がある)。でもそこでも八十神はおいかけてきたから父の須佐之男のいる根の国に大穴牟遅を逃がすんだ。そこで須佐之男の試練をクリアして娘の須勢理媛と太刀と弓矢を受け取って八十神を皆殺しにして須勢理媛と暮らしましたとさ。

でもこの話のもともとは八上比売木との求婚の話なのに、恨みで殺されかけて兄弟皆殺しで須勢理媛と結婚するってなんだか物凄く不毛なような。

それで木俣神は須佐之男に会いにいったけど須勢理媛とよろしくやっているのを知って大穴牟遅に木の俣に置いて実家の因幡に帰った。

というなんだか中途半端なところで次回予告、というかこの時点ですでに7章が終わってインターバルになっている件。

7章用に何か各予定ではある。なんというか日本神話は発想が斜め上ばかりでつなげるのはなかなか難しい。

そんなわけで引き続きお読み頂けると嬉しいです。

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登場人物紹介

東矢一人。新谷坂高校の寮に住む。

1年の春、新谷坂山の怪異の封印を解いてしまい、再封印のために散らばった怪異を追う。

作中ではイラストよりもう少し存在感薄いイメージ。

ナナオさん。本名は末井奈也尾。

作中では髪はアップにしている。

にぎやかしと友情担当。

ギャルっぽいなりだが人情に熱く、困った人を放っておけない。

黒猫のニヤ。

新谷坂山の怪異を封印していた。

雨谷さん。雨谷かざり。

「雨谷かざりは同じ日をくり返す。」だけ登場予定。

藤友晴希

坂崎安離

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