22. 〝月の病〟-1
文字数 496文字
砧がスマートフォンの音声を止める。
「そして真昼は、ウルヴズでありながらウルヴズを見つめる月側に立った。観察される側でいながら観察する側になった。デンさんは時々集合場所に送って行っていた」
「砧先輩は参加しなかったんですか?」
「しないよ」
「どーせあんたのことじゃ、金になんないことはやらないとか言う理由だろ?」
「それもあるが、月からの視点なら真昼だけで十分だろ?『誰が観察者を観察するか?』って問題も残るしな」
「あれ?これってニホンオオカミの話ですよね?」
「以前から真昼は遅くに返ってくることがありました。たいていは砧さんや伝さんと一緒だったし、あまり心配してませんでした。でも、事故の前の数か月は、どこかそれまでと違って」
「真昼は月の光を浴び過ぎて、月に魅入られた。一部でしかないはずのウルヴズが真昼を乗っ取ったってとこか。多分それは〝月〟の誤算だ。真昼がウルヴズだってことを役人が知っていたかどうかはわからないが」
そして再度音声を再生する。
『興味があるなら、いや、君なら興味なくともぜひ参加してほしい。陰にこもっていないで、夜に抱かれていないで。僕らは君を待っていた』
「そして真昼は、ウルヴズでありながらウルヴズを見つめる月側に立った。観察される側でいながら観察する側になった。デンさんは時々集合場所に送って行っていた」
「砧先輩は参加しなかったんですか?」
「しないよ」
「どーせあんたのことじゃ、金になんないことはやらないとか言う理由だろ?」
「それもあるが、月からの視点なら真昼だけで十分だろ?『誰が観察者を観察するか?』って問題も残るしな」
「あれ?これってニホンオオカミの話ですよね?」
「以前から真昼は遅くに返ってくることがありました。たいていは砧さんや伝さんと一緒だったし、あまり心配してませんでした。でも、事故の前の数か月は、どこかそれまでと違って」
「真昼は月の光を浴び過ぎて、月に魅入られた。一部でしかないはずのウルヴズが真昼を乗っ取ったってとこか。多分それは〝月〟の誤算だ。真昼がウルヴズだってことを役人が知っていたかどうかはわからないが」
そして再度音声を再生する。
『興味があるなら、いや、君なら興味なくともぜひ参加してほしい。陰にこもっていないで、夜に抱かれていないで。僕らは君を待っていた』