14. 〝道成寺〟-2
文字数 883文字
「道成寺博士夫妻を中心とするグループは、感染者から抽出した冥王ウイルスをもとにベクターウイルスを作り出し、これを感染者に再度投与することで、冥王ウイルスによって遺伝子に組みこまれたアデニン異常を弾き出すことに成功しました。同時に、小惑星の一部が原始地球に組み込まれたように、ウイルスベクターも体内に定着し、ワクチンとなって抗体を作っていく。臨床試験は成功。冥王症は急速に収束しました。開発の中心となった道成寺博士は、この薬の開発でノーベル賞候補となりましたが、受賞に至らなかったのは、そもそもオオカミを復活させた過去から、マッチポンプでは、と非難されたこともあります。一方、道成寺夫妻の娘で、弁護士の道成寺八重子氏は、テイアの特許を管理するためにDoujouji Nature Alliance、D―NAを設立し、欧米を中心とした数十か国でのテイアに関連する基本特許を押さえました。そしてそれを各国の公的機関に無償でライセンスすることで、特許戦争を未然に防ぎました。更に彼女が中心となり、そのような特許、経済戦争も含んだ感染症による災害を防ぐ協定、通称アハトを提示。これは世界のほとんどの国によって批准されました。八重子氏の理念は高く評価され、『命をマネーゲームに使用しない』という潮流を作ったとしてノーベル平和賞が授与されました」
「その後政界に身を投じた、と」
「はい。そして夫妻の息子、八重子氏の弟にあたる道成寺九重彦氏は、ITベンチャー『グローバルネットワーク』、通称『GN 』を設立し、今や日本での普及率九割以上のHELIXを生み出しました」
「GNは運送業にも手を広げてるからね。噂は聞いてるよ」
「一年半ほど前、埼玉から年配の女性の引越しをされましたよね?荷物を積んで、その女性を隣に乗せて」
「良く知ってるね、と言いたいけど、個人情報だからね」
「道成寺圓氏。テイア、そしてもちろん、オルフェウスの開発者の一人です。また、HELIXの生みの親、道成寺九重彦 氏の母であり、短期間ですが、形式上は雨月一陽校長の義母でもありました」
「その後政界に身を投じた、と」
「はい。そして夫妻の息子、八重子氏の弟にあたる道成寺九重彦氏は、ITベンチャー『グローバルネットワーク』、通称『
「GNは運送業にも手を広げてるからね。噂は聞いてるよ」
「一年半ほど前、埼玉から年配の女性の引越しをされましたよね?荷物を積んで、その女性を隣に乗せて」
「良く知ってるね、と言いたいけど、個人情報だからね」
「道成寺圓氏。テイア、そしてもちろん、オルフェウスの開発者の一人です。また、HELIXの生みの親、道成寺