24. 〝月の病〟-3
文字数 1,315文字
「それにしても、三国志か何かじゃ、司馬って走らされる側じゃなかったっけ?箙司馬は、まるで、あの世か、どこか遠い世界からこっちが右往左往するのを眺めているみたいだな。あ、重いだろ?持つよ」
駐車場に車を停めた田村が、巴から鞄を受け取りながら言った。
「すみません」
「で、その後どうなった?」
「そこまでです。署長がそれ以上追及するなと。銃だけは確保しましたが」
「ああ、そう」
「驚きませんね?」
「巴だって驚いてないだろ?」
「驚かないとしても呆れています」
「まあ、そう言うなよ。署長も大変なんだよ、いろいろと」
「私はまだ、大人の事情に染まるほど年を取っていませんよ。それはともかく、結局、家宅捜索で押収できたものはこれだけです」
巴が歩きながらビニール袋に入ったディスクケースを取り出す。
「パソコンどころか生活用品もなく、ただ、手書きで文字が書かれたこのCD―Rだけ」
「"Z74-B747 (1)1992,7 76-81"?何これ?」
「わかりません。どこかで見たような気もしますが。仲間にでも向けたものでしょうか?」
「仲間に向けたものをそれだけわざわざ部屋に残すのも変だよね。で、中身は?」
「これです」
巴がタブレットを取り出した。
「中身を読み込んでみました。ウイルス、あ、あくまで今は、コンピューターウイルスのことですが、はないようでしたが」
タブレットの画面に文字列が表示される。
CG G G CT CG C C G CGG GT TGT C GT GT TG
TG G GTCTTG TGCTTGGGTGG TTTTTG TTTTTC TTTTTT C TTTTGTC TTTTTC T C
G C T G C G G CGT CT CGG GCTGT GG GT
TCTTTTGTTTT TCTGTT GTTGGTTG TGC TTG TG TTG G C TTG CTC
巴が指を滑らせ、画面をスクロールさせる。以下も似たような文字列が延々と続く。
「何これ?」
「おそらく、各記号はDNAの核酸塩基、チミン、グアニン、シトシンだと思われます」
「もう一個なかったっけ?」
「アデニンですが、Aはありません。冥王症はヒトアデニン異常ですから、それが何かの鍵になるのかも知れません。とにかく、このような記号が延々と続きます。もしかしたら、仲間にでも向けたものでしょうか?」
「仲間に向けたものをそれだけわざわざ部屋に残すのも変だよね」
流れていく文字列を横目で見ながら田村が言う。
「はい。あ」
刑事課への階段の前を通過する田村に巴が問い掛けた。
「あの、どちらへ?」
「別館の地下。既に納品されてるはずだ」
「納品?」
階段を降りる田村を巴が小走りで追いかける。
「専門家に鑑定してもらう」
「どういうことですか?」
「正確には、専門道具と言うべきかもしれないが」
そう言うと、田村が地下の突き当りの扉を開けた。部屋の中を見た巴の足が止まる。
「ウルヴズ?」
駐車場に車を停めた田村が、巴から鞄を受け取りながら言った。
「すみません」
「で、その後どうなった?」
「そこまでです。署長がそれ以上追及するなと。銃だけは確保しましたが」
「ああ、そう」
「驚きませんね?」
「巴だって驚いてないだろ?」
「驚かないとしても呆れています」
「まあ、そう言うなよ。署長も大変なんだよ、いろいろと」
「私はまだ、大人の事情に染まるほど年を取っていませんよ。それはともかく、結局、家宅捜索で押収できたものはこれだけです」
巴が歩きながらビニール袋に入ったディスクケースを取り出す。
「パソコンどころか生活用品もなく、ただ、手書きで文字が書かれたこのCD―Rだけ」
「"Z74-B747 (1)1992,7 76-81"?何これ?」
「わかりません。どこかで見たような気もしますが。仲間にでも向けたものでしょうか?」
「仲間に向けたものをそれだけわざわざ部屋に残すのも変だよね。で、中身は?」
「これです」
巴がタブレットを取り出した。
「中身を読み込んでみました。ウイルス、あ、あくまで今は、コンピューターウイルスのことですが、はないようでしたが」
タブレットの画面に文字列が表示される。
CG G G CT CG C C G CGG GT TGT C GT GT TG
TG G GTCTTG TGCTTGGGTGG TTTTTG TTTTTC TTTTTT C TTTTGTC TTTTTC T C
G C T G C G G CGT CT CGG GCTGT GG GT
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巴が指を滑らせ、画面をスクロールさせる。以下も似たような文字列が延々と続く。
「何これ?」
「おそらく、各記号はDNAの核酸塩基、チミン、グアニン、シトシンだと思われます」
「もう一個なかったっけ?」
「アデニンですが、Aはありません。冥王症はヒトアデニン異常ですから、それが何かの鍵になるのかも知れません。とにかく、このような記号が延々と続きます。もしかしたら、仲間にでも向けたものでしょうか?」
「仲間に向けたものをそれだけわざわざ部屋に残すのも変だよね」
流れていく文字列を横目で見ながら田村が言う。
「はい。あ」
刑事課への階段の前を通過する田村に巴が問い掛けた。
「あの、どちらへ?」
「別館の地下。既に納品されてるはずだ」
「納品?」
階段を降りる田村を巴が小走りで追いかける。
「専門家に鑑定してもらう」
「どういうことですか?」
「正確には、専門道具と言うべきかもしれないが」
そう言うと、田村が地下の突き当りの扉を開けた。部屋の中を見た巴の足が止まる。
「ウルヴズ?」