1. 〝ナインスゲート〟-1
文字数 956文字
「天気もいいし、思ったより早く終わりそうで良かったね」
ペットボトルのお茶をカップに注ぎながら深夜が言った。正面の微笑が頷く。
「はい、もっとかかるもんだと思ってました」
「ま、お兄ちゃんにかかればこんなもんよ」
深夜の隣の萌が鼻を鳴らし、対面でスマートフォンを見る砧に言った。
「何か文句ある?」
「いや別に」
「でも、よくよく考えると、この状況って砧先輩からしたらハーレムですよね」
微笑が紙コップに手を伸ばしながら言った。
「女子の家のキッチンで、女子三人で男子一人ですもんね」
「俺を嫌いな奴らに囲まれてるのはハーレムと言わないぞ」
砧が顔を上げずに答える。萌が「よくわかってんじゃん」と笑う。
「あ、微笑は砧先輩嫌いじゃないですよ。どうでもいいだけで」
「萌ちゃん!エミちゃんも」
深夜が眉を顰め、そして砧に半笑いで言う。
「わ、私は砧さん、す、好きですよ」
「じゃあ、深夜先輩。砧先輩と手を繋げます?キスできます?」
「あ、ええと」
「やめろ微笑!そんなこと口に出すだけで深夜が穢れるだろうが!」
「エマ、無理するな」
「で、でも、何だかんだでこうやって引越し手伝ってくれるし。砧さんもありがとうございました。とても助かりました」
「ああ。貸しだな」
「はー、相変わらずせこいというか、器が小さいねー。お昼やお土産まで用意してくれたお兄ちゃんとえらい違いだわ」
「デンさんは仕事だ。教育委員会の支払いってことだが、いずれにせよ有償だ。一緒にするな」
「あんた、結局何だかんだでお兄ちゃんにバイト代貰ってたじゃん。重い物はほとんどお兄ちゃんが運んだのに」
「俺が車でノノ達を連れて諏訪までミーナを迎えに行ったことは忘れたか?」
「車ったって本部から支給された配達用のEVじゃん。電気代だってネストの経費じゃん」
「まあ、確かに実働三時間半で五千円はありがたいが」
「伝さんも一緒にごはん食べてってもらえば良かったけど、仕事じゃしょうがないよね」
「お兄ちゃんは引く手あまただし」
「違うな。デンさんはこの場で自分が邪魔なのを知ってるんだよ」
「邪魔っていうな!」
「繁忙期も終わった四月の休日に二件目の仕事なんてあるわけないだろ?今頃道の駅か退避所に車を停めて、荷台の中で資材を片付けてるよ」
ペットボトルのお茶をカップに注ぎながら深夜が言った。正面の微笑が頷く。
「はい、もっとかかるもんだと思ってました」
「ま、お兄ちゃんにかかればこんなもんよ」
深夜の隣の萌が鼻を鳴らし、対面でスマートフォンを見る砧に言った。
「何か文句ある?」
「いや別に」
「でも、よくよく考えると、この状況って砧先輩からしたらハーレムですよね」
微笑が紙コップに手を伸ばしながら言った。
「女子の家のキッチンで、女子三人で男子一人ですもんね」
「俺を嫌いな奴らに囲まれてるのはハーレムと言わないぞ」
砧が顔を上げずに答える。萌が「よくわかってんじゃん」と笑う。
「あ、微笑は砧先輩嫌いじゃないですよ。どうでもいいだけで」
「萌ちゃん!エミちゃんも」
深夜が眉を顰め、そして砧に半笑いで言う。
「わ、私は砧さん、す、好きですよ」
「じゃあ、深夜先輩。砧先輩と手を繋げます?キスできます?」
「あ、ええと」
「やめろ微笑!そんなこと口に出すだけで深夜が穢れるだろうが!」
「エマ、無理するな」
「で、でも、何だかんだでこうやって引越し手伝ってくれるし。砧さんもありがとうございました。とても助かりました」
「ああ。貸しだな」
「はー、相変わらずせこいというか、器が小さいねー。お昼やお土産まで用意してくれたお兄ちゃんとえらい違いだわ」
「デンさんは仕事だ。教育委員会の支払いってことだが、いずれにせよ有償だ。一緒にするな」
「あんた、結局何だかんだでお兄ちゃんにバイト代貰ってたじゃん。重い物はほとんどお兄ちゃんが運んだのに」
「俺が車でノノ達を連れて諏訪までミーナを迎えに行ったことは忘れたか?」
「車ったって本部から支給された配達用のEVじゃん。電気代だってネストの経費じゃん」
「まあ、確かに実働三時間半で五千円はありがたいが」
「伝さんも一緒にごはん食べてってもらえば良かったけど、仕事じゃしょうがないよね」
「お兄ちゃんは引く手あまただし」
「違うな。デンさんはこの場で自分が邪魔なのを知ってるんだよ」
「邪魔っていうな!」
「繁忙期も終わった四月の休日に二件目の仕事なんてあるわけないだろ?今頃道の駅か退避所に車を停めて、荷台の中で資材を片付けてるよ」