第100話 エピローグ、のようなもの 2

文字数 867文字

 そんな風にして、矢城野からやいのやいのと言われ出してから1年ほど経ったある日。憂鬱な気分で、ごろりと横になりながら彼が置いて行った生涯後見人関係の雑誌をパラパラとめくっていると、最年少(当時)で二種試験に合格した女性の特集記事が載っているのが目に留まった。
 介護施設で働きながら、がんばって勉強して難関の資格を取ったって。ふーん、と思いながらページをめくり、そのまま目が釘付けになった。前のページの扉の写真が透けて見えて、彼女が胸に付けたネームプレートの文字が、左右逆になって目に飛び込んできたから。え、これって…!?
 がばりと身を起こし、手近な紙に、その名前を書き写してみた。右から左へ、ゆっくりと指でなぞる。ああ、そうか、そういうことだったのね!

        ***

 クマのすけの謎がようやく解けた、と同時に、この子にものすごく興味が沸いた。フォローしてみよう。あの子が使っているチャットサイトを見つけ、Moiの名で登録し、アプローチして。
 そうして、話せば話すほど(チャットだけど)興味が沸いて、矢城野に事情を説明して作戦を練ったのよ。どうしたら、後見人にできる?? って。

        ***

 それからの2年間は、あっという間だった。計画どおり、私はあの子の被後見人に収まって。ま、あの子にしてみれば、うまく私の後見人に収まった、ということになるのでしょうけれど。

「それにしても、うまく行きすぎだったわね」
 本当にね。ふふっと、笑いが漏れた。クマのすけが、ううん、もしかしたら、息子が、私たちを結び付けてくれたのかしら。そんな考えすら、浮かんでしまう。


 あの子が戻ってきたら、話してあげましょうかね。一体、どんな顔をするかしら?
 …驚いて、私の失態を忘れてくれるといいんだけれど―。



FiN





2人のお話は、これでひとまず終了です。
お付き合いいただき、心より御礼申し上げます。どうもありがとうございました!

なお、このお話は、「私が 泣いた 理由」とも、ちょっぴりつながっています。
よろしければ、お読みいただけましたら幸いです。


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