第31話「最終章」:トランプの強引な政治と世界の気候変更

文字数 1,892文字

 パリ協定とは、「京都議定書」に代わる温暖化対策の新たな国際的枠組みで2020年以降の取り組みを定めたもの。2015年12月の「COP21」と呼ばれる国際会議で採択され、2017年6月6日現在、148か国・地域が締結している。この「パリ協定」から2017年8月アメリカのトランプ大統領がからの離脱を表明し世界中を驚かせた。

 村井産業は、2017年には6億円の投資で5億円を回収し残り1億円となり三浦半島での電気事業の黒字化で会社の借金は、消えた。今後の会社の利益が全て純利益として計上される事になる。ただ、この商売の場合、常に天候に注意しなければならず、5月から9月の台風シーズンは神経質になるのは、依然として続いた。

 しかし2017年12月、借入金ゼロの祝賀パーティを社員全員28人を招待。この日には、村井孝一と父の次郎、母の聡子をも呼んで、横浜中海外の有名中華料理店の1室を借り切って盛大に開き、開会の辞を父、村井次郎に、お願いすると、今まで苦労話を話した。
「その後、乾杯と言った後、感極まって涙を見せた」

「その時、苦労を共にしたSM電工の山下さん、M電工の佐藤さん、後輩の下地さんが、抱きついて、ご苦労さんと言い、一緒に涙をふいた」
 その後、2018年1月の寒い日、村井次郎の体調が悪くなり、近くの内科にかかると、出来たら、老人ホームに入った方が、家族の人達も安心かもしれませんと言われた。

 三浦半島の南部、野比老人ホームを紹介してくれ、電話して2人用の1室、空きがあるから来て下さいと言われ、療養し体調が回復した。翌週、村井孝一と聡子さんの夫婦で野比老人ホームに入居する手続きを村井孝一がとり、早速入居した。

 2018年4月25日付けの学術誌「サイエンス・アドバンス」に発表された研究により気候変動が今世紀の半頃までに、この国の水源に致命的な打撃を及ぼす事が明らかになった。島の周囲の海水面が上昇すると大きい波が打ち寄せた時、これ迄より島の奥深くまで海水が到達するようになる。こうした波が連続して打ち寄せれば、島の淡水源は機能しなくなってしまう。

 報告書は2018年11月20日に発表。化石燃料の使用による炭素排出量は、2018年に過去最高の371億トンに達した。報告書の筆頭著者であるストックホルム環境研究所米国センターの所長マイケル・ラザルス氏は、化石燃料の生産量を減らさない限り炭素排出量を大幅に減らす事は不可能だと指摘。報告書では、各国政府が公開してる文書を元に分析が行われた。

 その結果、各国が2030年に計画する石炭、石油、天然ガスの生産量が、地球温暖化を1.5度未満に留める為の上限値の220%になると発表。石炭は380%にもなる。そうなると世界の気温は4度以上の上昇に向かう。この報告書は、パリ協定の目標と各国の石炭、石油、天然ガスの生産計画や政策が、いかに大きく乖離してるかを初めて示したと環境学者は語る。

 気温上昇が数々の自然災害を引き起こした事で、人類はついに気候変動の現実を直視せざるをえなくなった。温室効果ガスの排出量を減らすために今すぐ行動しなければ、事態がますます悪化する恐れがある事が、今回の研究で改めて示された。これらの報告書を読んで村井孝一は、子供たちへ環境教育の時、この資料から、どれだけ現状が切羽詰まっているかを正直に教えた。

 そして村井産業の村井孝一と清水君と下地君の3人が政府与党の首脳や環境省、気象庁に地球温暖化対策の提言書を提出するようになった。2019年3月、村井次郎は、体調を崩し、横須賀共済病院に入院し、体調が改善し2019年3月18日に、入居してる野比の海岸沿いの老人ホームに戻り、奥さんの聡子さんと、再び生活を始めた。

 その頃、村井産業は、M電気、SM電気工業、Z社と提携して、三浦半島と湘南海岸沿いに、12ケ所の自然エネルギーの拠点を作り、いくつもマンション、保育園、公営住宅、学生寮、社宅を中心に安価で電気を供給して、投資資金を回収し、利益の出る時代になっていた。その報告を息子の村井孝一・社長から聞くたび、村井次郎は、笑顔になって喜んだ。

 その後、4月の暖かい日、ベランダで村井次郎が日向ぼっこして気分よさそうに、うたたねしてると思った、その後、16時過ぎ、奥さんが村井次郎の肩をたたいて部屋に入りましょうと言っても応答がない。慌てて介護職員を呼ぶと3人がAEDを持って来て心臓再生をはかったが意識を戻す事なく亡くなった。しかし、その顔には、苦悶の表情は見られず、遠くを見つめるような穏やか表情であった。【終了】
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