使者
文字数 1,514文字
「ええ。魔王復活の兆しについては、次回にするしかなさそうね」
「アイリス……シフォンの予定が合えば、一緒に行ってあげてほしいの」
サルサの街でレヴィ達と別れ、城に戻ったシフォンの妹が、ジュリアスに合流したのか、国王側に合流したのかは不明だ。
妹の行方を探すため冒険者になったシフォンには行く権利がある。
ジュリアスに合流したなら、彼女も一緒にいる可能性が高い。
レヴィ、アイリス
「セレスさま、御前(ごぜん)を失礼いたします」
重々しい扉をレヴィが開けると何かが飛び込んできた。
とっさに避けたレヴィの横にドサリッ!!と音をたてて何かが倒れる。
アイリスの手から白銀の光が放たれ傷が癒えていく。
しかし、動脈の深いところが傷ついているのか、呼吸の度にドクドクと血が流れる。レヴィが物理的に止血をしているが、焼け石に水だ。
風と水の複合魔法を詠唱なしで唱える。
蒼白色の光が辺りを覆い、傷ついた血管を補修していく。
いつのまにかかけつけたカイが回復魔法を
アーノルドが止血をテキパキとこなす。
風と水の精霊の力を更に引き出していく。
額にアクアマリンに似た宝石と青い羽をつけたウサギに似た小動物の姿をした水の精霊と、すらりとした手足と白い羽をもち、長い金色の髪をなびかせた風の精霊が、フワフワと対象者の周りを飛びながら力を重ねていく。
満身創痍で謁見の間までたどり着いた使者のもたらした親書を、カイ経由で受け取ったセレスの顔色は優れなかった。
「予定を変更します。レヴィ、アイリス、カイ至急アルティメット城に向かってください!!」
「アルティメット城は、1年前のこの城と同じことになってると思われます。」
「和泉さんと咲良さんは、安全のためにもう少しここにいてください!」
言うと同時に扉の方に歩き始め、扉の前に立っている騎士に指示をだした。
数分後ーー。
騎士団と宮廷魔術師数名が謁見の間にバタバタと到着した。
モトは王国騎士団に所属していたとはいえ、既に引退して数十年経っているアーノルドに頼むのは、気がひける。でも、この中で何かあったとき勇者さまを護れるのは、実力的にも立場的にもアーノルド以外にいない。
「1年前と同じなら、ここは襲われる危険があります。」
「このようなことを頼むのは気がひけるのですが、和泉さんと咲良さんと一緒に街の宿屋に……」
「お断りいたします。休暇をいただいてはおりましたが、私はグレイス家の執事でございます。レヴィさまにセレスさまをお護りするよう頼まれた以上、違えることはできませぬ」
「セレスさま。よもやとは思いますが、私がセレスさまと勇者さま、どちらか一方だけしか護る実力がないとお思いではないでしょうな」
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