使者

文字数 1,514文字

「そろそろ、お時間にございますな」
「ええ。魔王復活の兆しについては、次回にするしかなさそうね」
「復活の兆し……ですか?」
「ええ。でも、いまのところ推測にすぎないわ」
「セレスさま……」
「セレスさま。カイをお借りしてかまいませんか?」
「えっ?ええ」
「アイリス……シフォンの予定が合えば、一緒に行ってあげてほしいの」
「ありがとうございます。セレスさま」
サルサの街でレヴィ達と別れ、城に戻ったシフォンの妹が、ジュリアスに合流したのか、国王側に合流したのかは不明だ。
妹の行方を探すため冒険者になったシフォンには行く権利がある。

ジュリアスに合流したなら、彼女も一緒にいる可能性が高い。

レヴィ、アイリス


「セレスさま、御前(ごぜん)を失礼いたします」

「和泉さん達も行くわよ。送るわね」


「はい。セレスさま、アーノルドさん、失礼します」
重々しい扉をレヴィが開けると何かが飛び込んできた。

とっさに避けたレヴィの横にドサリッ!!と音をたてて何かが倒れる。

「アイリス!治療をっ」
「エル・ヒール」
アイリスの手から白銀の光が放たれ傷が癒えていく。

しかし、動脈の深いところが傷ついているのか、呼吸の度にドクドクと血が流れる。レヴィが物理的に止血をしているが、焼け石に水だ。

「ファーストエイド」
風と水の複合魔法を詠唱なしで唱える。

蒼白色の光が辺りを覆い、傷ついた血管を補修していく。

「アナ・ヒール」
いつのまにかかけつけたカイが回復魔法を

アーノルドが止血をテキパキとこなす。

「セカンドエイド」
風と水の精霊の力を更に引き出していく。

額にアクアマリンに似た宝石と青い羽をつけたウサギに似た小動物の姿をした水の精霊と、すらりとした手足と白い羽をもち、長い金色の髪をなびかせた風の精霊が、フワフワと対象者の周りを飛びながら力を重ねていく。

「……ス…………れを!」
「おいっ!!」
「もう大丈夫。気を失ってるだけだわ」
■□■□■□
!!
満身創痍で謁見の間までたどり着いた使者のもたらした親書を、カイ経由で受け取ったセレスの顔色は優れなかった。
「……そんな…………こんなことって!」
「セレスさま?」
「予定を変更します。レヴィ、アイリス、カイ至急アルティメット城に向かってください!!」
!?
「アルティメット城は、1年前のこの城と同じことになってると思われます。」
「地下の魔方陣を使いましょう!」
「わかった」
「アル爺、セレスさまを頼む」
「和泉さんと咲良さんは、安全のためにもう少しここにいてください!」
「はい」
言うと同時に扉の方に歩き始め、扉の前に立っている騎士に指示をだした。

数分後ーー。

騎士団と宮廷魔術師数名が謁見の間にバタバタと到着した。


「……アーノルドさん」
モトは王国騎士団に所属していたとはいえ、既に引退して数十年経っているアーノルドに頼むのは、気がひける。でも、この中で何かあったとき勇者さまを護れるのは、実力的にも立場的にもアーノルド以外にいない。
………………
「1年前と同じなら、ここは襲われる危険があります。」
「さようでございますな」
「このようなことを頼むのは気がひけるのですが、和泉さんと咲良さんと一緒に街の宿屋に……」
「御身は、どうなさるおつもりですか」
「私は、クルト達とここに……」
「お断りいたします。休暇をいただいてはおりましたが、私はグレイス家の執事でございます。レヴィさまにセレスさまをお護りするよう頼まれた以上、違えることはできませぬ」
「でも……」
「セレスさま。よもやとは思いますが、私がセレスさまと勇者さま、どちらか一方だけしか護る実力がないとお思いではないでしょうな」
「えっ!?あ、いえ、そんなことは……」
「でしたら、問題ございませんな」
「はっ、はい」
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登場人物紹介

相原 和泉(あいはら いずみ)


高崎先輩に恋する剣道部チームリーダー


高二。剣道部。

咲良の親友。朝に弱く、毎朝チョコのムーンサルトダイブで起こされる。キノコの里山が大好き。

古泉 咲良(こいずみ さくら)


冷静沈着な純心寺の跡取り


高二。和泉の親友。

純心寺の後継ぎとして育てられたため、多少の術が使える。

しっかり者で、朝に弱い和泉を心配して毎朝迎えにきてくれる。パンケーキと紅茶に目がない。

レヴィ・グレイス


激辛好きな若き王国騎士団団長


王国騎士団団長。アイリスと同期

代々、騎士団団長をだしている名家の産まれ。

前騎士団団長は父であり、行方不明の父と兄の代理として騎士団団長を勤める。立場上、冷静にふるまってはいるが、熱血漢で正義感が強い。王家に対する忠誠心が高い。

アイリス・フォーミュラー


薬学に通じる刻と氷の魔術師


王宮魔術師。レヴィと同期。

王宮魔術師長ルーカスを父にもつ苦労人で少しドジなところはあるが魔力の高さは随一。エリクサーの創始者。かなりの苦さのため理由をつけて飲まない騎士団員や魔術師も多く、心を痛めている。


責任感が強く召喚の位置がずれたことを誰よりも申し訳なく思っている。


相原 チョコ


咲良と猫缶を愛する相原家の猫。

毎朝、和泉を起こすのが日課になってしまっている。

最初は鳴いたり肉球でプニプニしてたけど、和泉が起きないため起こす方法がエスカレートぎみ。


毎朝、優しくなでてくれる咲良が大好き。

案内ねこミュー

咲良に異様になついている。

和泉の枕元にトカゲの死骸など、ナゾのプレゼント畄⌒ヾ(・ω-。)♪をしたりとチョコと行動や性格がかぶっている。


本人(猫?)は絶対に隠したかったため、アイリスとレヴィにムチャクチャな契約をさせていたが、あえなくミュー=チョコだとバレた。


アーノルドのことを恐れている。

セレス・グノーシス   13歳   弟3王女


無事が確認できているグノーシス王家唯一の血筋。


叶わない願いと知りながらもジュリ兄大好きで、コロッと行動を変えてしまうこともあるが、国王達が帰ってきた時のために国を立て直そうと努力するがんばり屋。長く近衛を勤めたレヴィやアイリスの前では、年相応の振る舞いをみせることもあるが、公の場では毅然とした態度をとることが多い。

ルーカス・フォーミュラー


フリルとリボンを愛する凄腕の魔術師


国立魔術研究所所長、グノーシス城宮廷魔術師長

アイリスの父


おもしろいことと恋ばなが大好き。酒が入ると、その傾向はさらに加速する。猫好き。

シフォン・ブラウン


サルサの街を拠点に活動中の関西弁冒険者


もとアイリスの同僚。お節介なところがあるが本人に悪気はない。闘技場の警備や千尋のアトリエからの仕事を主にしている。

アーノルド・ブラウン


質実剛健の老紳士


レヴィが12歳の時から2年前までグレイス家に仕えていた。指南役であり、レヴィの剣術はアーノルドの影響が強い。お説教も含め、話が長いのがたまに傷。

カイ・ハズウェル


チャラさと真面目さが同居する魔法剣士


口から産まれてきたような性格だが剣の腕は確かで攻撃魔法も回復もこなす。レヴィの兄オスカーと仲がよく、レヴィのことは、からかいがいのある弟のように思っていて、本人は可愛がっているつもりである。

???

結城 千尋


5年前、不思議な光と共にやってきた凄腕錬金術師


現在は、名前だけ。

サルサの街で千尋のアトリエを経営している。

元々は女子高生だったが、1から錬金術をはじめた。

シフォンと採取に行くこともおおい。

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