サルサの街到着

文字数 1,309文字

ーーサルサの街裏手にある魔方陣の上空にアイリス達の姿があった。
「アースシールド」
魔方陣とその周辺に薄い光のまくをはり着地の衝撃を抑える。

転移魔法の初歩の技術だ。しなければしないで普段なら問題はないが、かなり強制的に移動したため、いわゆる保険である。

光のまくがクッションになり、フワリと魔方陣の上に着地する4人。
「え~と、咲良さんに和泉さんとレヴィ、全員いるわね」
「………………あっ」
「どうした?」
「聖獣さま忘れました」
「…………あっ」
「……おやっさんと仲いいし大丈夫だろう……たぶん」
「そっ、そうよね。大丈夫よ、きっと」
気づかなかったことにした2人の顔には疲労の色が濃い。

明日中にグノーシス城に着かないとセレスさまに謁見できるのは、約1週間後ーー。

明後日からは、外交の予定がしばらくつまっているためだ。

サルサの街からグノーシス城までは、ゆっくり歩いても3時間ほど。

騎士団や宮廷魔術師、冒険者ギルド所属の冒険者等が出入りするため、治安もいい。このまま行けば、明日中にセレスさまとの謁見を終えることができる。

しかし魔術研究所に引き返せば明日中の謁見が無理になる可能性が高すぎる。


闘技場の決勝戦の優勝と聖獣さまを引き換えなどの面倒なことを言い出しかねない。これが敵対勢力なら多少の無理を押してでも取り返すことが必要だが、猫好きのルーカスが聖獣さまにヒドイことをすることは考えずらく、聖獣さまもルーカスによくなついている。

「とりあえず宿だな」
「そうね」
「ここがサルサの街」
「お店がいっぱいだね」
物珍しいものが、いっぱい並んでいる中を興味深そうに眺めながらレヴィ達の後について宿屋に向かっていく。
お店といってもその多くはテントを張ってそこに商品を並べており、地面にシートをひいて商品を並べる者もいた。彼らは露店商と呼ばれ家付きの店をもつことを目標にしている者が多く、家付きの2階だてのお店をもつことが、彼らにとってのステータスである。
それでも乱雑な感じがしないのは商会ギルドが出店管理をしているためで、ぼったくりなどもなく品揃えが充実していて安心して買い物ができる街として人気がある。
「綺麗な色、これってなにかなぁ」
「ほんと、向日葵(ひまわり)みたいな色ね」
「それは、トルンのさやね」
(これがトルンのさや)
「おっ、トルンのさやか。ちょうどほs……」
「いらないわ!」
「けど、あと1キロくらいしかないしそろそろ補充しねーと……」
「1キロあれば、2~3ヶ月はもつw……」
「イヤ、1週間もたねーだろ?」
(この2人も飽きねーなぁ)
2週間に1回くらい自分の店の前で、ほぼ同じようなやり取りをしているレヴィとアイリスを少し呆れぎみに見ている店主。

店主としては、レヴィに頑張ってほしいのだが……。

「騎士団に戻れば2キロあるじゃない」
「い・ら・な・い・わ・よ・ね」
「あ、あぁ」
いつも通りの結論

いつも通り、残念そうにトルンのさやをみるレヴィに、いつも通り店主が目配せする。

悪い笑顔で微笑みあうレヴィと店主。

といっても物凄く悪いことをする訳ではなく、アイリスの居ぬ間にレヴィの私費でお買い物というだけの話だ。目配せは、いつもの場所での合図である。

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登場人物紹介

相原 和泉(あいはら いずみ)


高崎先輩に恋する剣道部チームリーダー


高二。剣道部。

咲良の親友。朝に弱く、毎朝チョコのムーンサルトダイブで起こされる。キノコの里山が大好き。

古泉 咲良(こいずみ さくら)


冷静沈着な純心寺の跡取り


高二。和泉の親友。

純心寺の後継ぎとして育てられたため、多少の術が使える。

しっかり者で、朝に弱い和泉を心配して毎朝迎えにきてくれる。パンケーキと紅茶に目がない。

レヴィ・グレイス


激辛好きな若き王国騎士団団長


王国騎士団団長。アイリスと同期

代々、騎士団団長をだしている名家の産まれ。

前騎士団団長は父であり、行方不明の父と兄の代理として騎士団団長を勤める。立場上、冷静にふるまってはいるが、熱血漢で正義感が強い。王家に対する忠誠心が高い。

アイリス・フォーミュラー


薬学に通じる刻と氷の魔術師


王宮魔術師。レヴィと同期。

王宮魔術師長ルーカスを父にもつ苦労人で少しドジなところはあるが魔力の高さは随一。エリクサーの創始者。かなりの苦さのため理由をつけて飲まない騎士団員や魔術師も多く、心を痛めている。


責任感が強く召喚の位置がずれたことを誰よりも申し訳なく思っている。


相原 チョコ


咲良と猫缶を愛する相原家の猫。

毎朝、和泉を起こすのが日課になってしまっている。

最初は鳴いたり肉球でプニプニしてたけど、和泉が起きないため起こす方法がエスカレートぎみ。


毎朝、優しくなでてくれる咲良が大好き。

案内ねこミュー

咲良に異様になついている。

和泉の枕元にトカゲの死骸など、ナゾのプレゼント畄⌒ヾ(・ω-。)♪をしたりとチョコと行動や性格がかぶっている。


本人(猫?)は絶対に隠したかったため、アイリスとレヴィにムチャクチャな契約をさせていたが、あえなくミュー=チョコだとバレた。


アーノルドのことを恐れている。

セレス・グノーシス   13歳   弟3王女


無事が確認できているグノーシス王家唯一の血筋。


叶わない願いと知りながらもジュリ兄大好きで、コロッと行動を変えてしまうこともあるが、国王達が帰ってきた時のために国を立て直そうと努力するがんばり屋。長く近衛を勤めたレヴィやアイリスの前では、年相応の振る舞いをみせることもあるが、公の場では毅然とした態度をとることが多い。

ルーカス・フォーミュラー


フリルとリボンを愛する凄腕の魔術師


国立魔術研究所所長、グノーシス城宮廷魔術師長

アイリスの父


おもしろいことと恋ばなが大好き。酒が入ると、その傾向はさらに加速する。猫好き。

シフォン・ブラウン


サルサの街を拠点に活動中の関西弁冒険者


もとアイリスの同僚。お節介なところがあるが本人に悪気はない。闘技場の警備や千尋のアトリエからの仕事を主にしている。

アーノルド・ブラウン


質実剛健の老紳士


レヴィが12歳の時から2年前までグレイス家に仕えていた。指南役であり、レヴィの剣術はアーノルドの影響が強い。お説教も含め、話が長いのがたまに傷。

カイ・ハズウェル


チャラさと真面目さが同居する魔法剣士


口から産まれてきたような性格だが剣の腕は確かで攻撃魔法も回復もこなす。レヴィの兄オスカーと仲がよく、レヴィのことは、からかいがいのある弟のように思っていて、本人は可愛がっているつもりである。

???

結城 千尋


5年前、不思議な光と共にやってきた凄腕錬金術師


現在は、名前だけ。

サルサの街で千尋のアトリエを経営している。

元々は女子高生だったが、1から錬金術をはじめた。

シフォンと採取に行くこともおおい。

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