地下魔方陣の攻防2

文字数 2,077文字

狼達の連携技、デルタエンドをなんとか押し返し始めたアイリス達。

しかし別の狼達によるデルタエンドが発動。

別の力が加わったことで力の均衡が崩れ、レヴィ達を包んでいたプロテクトフォースの光の球体は消えてしまった。
結果、狼達の連携技デッドエンドがレヴィ達を直撃する。
「……ぐっ!」
大剣を盾がわりにすることでダメージを少しカットできたものの、それ以上を防ぐ事は難しかった。
「ぅわあああああ」
「うわああああああ」
とっさにアイリスをかばおうとするものの間に合わない。
「キャアアアアアア」
防御力をあげるアイリスの魔術がかかっていなかったら、危なかったかもしれない。
「エル・ヒールレイン」
全員の体力が、ほぼ全快まで回復した。
「アイリスちゃん」
「ええ」
「ブルージェット」
雷雲にたまった高圧の電流が激しくスパークし、一瞬鮮やかな青い光が輝く
「フローズンレイン」
アイリスの詠唱が終わる頃、雷雲の真上から幾筋もの雷が落雷し

いくつもの氷の柱ーー氷柱が狼達を貫いていく。

「グワアアアアアア」
「パーフェクトガード」
大剣を持つことで盾を持てないレヴィのいざという時用である。

1度だけ、具体的には次のターンのみ味方全員のダメージを約70%カットする。

アーノルド直伝のこの技はコスパがよく、すぐに次の行動に繋げることが可能だ。
「エアロクラッシュ」
螺旋状に渦巻く風と剣圧が、フローズンレインの威力を高め、
「ーーーーーー!!」
悲鳴をあげることもままならない痛みと寒さが狼達を襲う。
「ーーーーーー!!」
アイリスは素早く魔方陣の効果を閉じた。
「あと3つ……!」
シュルル……!!
パッションフラワーは左右にある2本の長い蔓を伸ばすとアイリスの身体を絡めとった。
「キャアアアアアアッ!」
アイリス!

アイリスちゃん!

逆さづりになったアイリスは条件反射でスカートを押さえ両手がふさがる。
「パワースラッシュ」
キンッ!
剣をあわせた時のような小さな金属音がすると、レヴィは大剣ごと弾かれた。身体を半回転させると受身をとりながら、後方へ着地する。
「……金属音がナゼ!?」
「マジで!?」
いろいろと突っ込みたいところはあるがスピード勝負だ。

モタモタしていたら、アイリスがご飯になってしまう。

「10時の方向、金属音だ」
言いながら大剣を鞘におさめると詠唱を始めた。
「……了解」
「サンダーボルト」
「フレアバースト」
雷と焔が正確に金属を捉え、金属もろとも蔓をやきつくしていく。
ーーーーーー!!
身をよじらせ、のたうち回るパッションフラワーは、アイリスを放り出した。
「キャアアアアアア」
「アイリス!」
「ボウルサム」
レヴィとカイは、ほぼ同時に勢いよく地面を蹴る。
フレア級の焔を剣にまとわせるとパッションフラワーを上から叩き斬る。

追加効果で鳳仙花が実を次々と弾くように、ファイアボールが次々にパッションフラワーに降りかかる。

シュウウウウウウ……
レヴィが空中でアイリスの手をつかむと、2人一緒に地面になだれこんだ。
「大事ないか?」
「え、ええ」
返事をしてレヴィに馬乗りになっていることに気づき、慌てて身体を離す。
「ご、ごめんなさい」
真っ赤になったアイリスが、うつむきかげんに謝る。
「あ、あぁ」
レヴィは照れたように目をそらした。
「ヴィもアイリスちゃんもイチャついてないで手伝ってよね」
「イチャ……!!」
「そんなんじゃねー!」
「またまたぁ」
無数の葉っぱがレヴィ達に襲いかかる。
「空気の読めない子は嫌われるよ」
葉っぱを斬りつつ最短距離でパッションフラワーに向かう。
「フレアレイン」
「エアロタイフーン」
降り注ぐ焔をアイリスの風が援護し、その勢いを強めた。
焼き尽くされたパッションフラワーは、悲鳴をあげる間もなく消し炭になった。
「あと2……!」
シャアアアアアア
シャアアアアアア
シャアアアアアア
シャアアアアアア
「どんだけ湧いてるんだよ!」
シャアアアアアア
シャアアアアアア
狭い地下室を覆い尽くしそうな勢いで増え続ける蛇に、3人は半ば呆れていた。
「フローズンレイン!」
その状態から、もっとも早く立ち直ったのはアイリスだった。
「フレアバースト」
「サンダーボルト」
蛇達を貫いた氷柱が焔で熔け下がぬるま湯になったところに、いくつもの雷が落ちる。下に水があることで雷の通りが良くなり数匹が麻痺した。
シュウウウウウウ
「エアロタイフーン」
「ライトニングボルト」
1つの魔方陣の側にいる蛇達が麻痺したため、

アイリスは魔方陣を1つ閉じた。

シャアアアアアア
シャアアアアアア
鎌首を持ち上げた蛇達を、時間差でレヴィ達を咬もうと襲いかかってくる。
あっという間に囲まれたかのように見えたカイは蛇達の牙が届く前に、地面をタンッと蹴ると蛇達よりも高くジャンプすると、ばくてんの要領でクルッと廻ると後方にフワッと着地する。
「パワースラッシュ」
それに合わせたように走り込んできたレヴィが、蛇達をまとめてなぎ倒した。
「フローズンレイン」
「ライトニングボルト」
総崩れになったところに氷柱と落雷が容赦なく蛇達の身体を貫いていた。
最後の魔方陣をアイリスが閉じた。
「急ぐぞ」
「ええ」
(……イヤな予感がする)
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登場人物紹介

相原 和泉(あいはら いずみ)


高崎先輩に恋する剣道部チームリーダー


高二。剣道部。

咲良の親友。朝に弱く、毎朝チョコのムーンサルトダイブで起こされる。キノコの里山が大好き。

古泉 咲良(こいずみ さくら)


冷静沈着な純心寺の跡取り


高二。和泉の親友。

純心寺の後継ぎとして育てられたため、多少の術が使える。

しっかり者で、朝に弱い和泉を心配して毎朝迎えにきてくれる。パンケーキと紅茶に目がない。

レヴィ・グレイス


激辛好きな若き王国騎士団団長


王国騎士団団長。アイリスと同期

代々、騎士団団長をだしている名家の産まれ。

前騎士団団長は父であり、行方不明の父と兄の代理として騎士団団長を勤める。立場上、冷静にふるまってはいるが、熱血漢で正義感が強い。王家に対する忠誠心が高い。

アイリス・フォーミュラー


薬学に通じる刻と氷の魔術師


王宮魔術師。レヴィと同期。

王宮魔術師長ルーカスを父にもつ苦労人で少しドジなところはあるが魔力の高さは随一。エリクサーの創始者。かなりの苦さのため理由をつけて飲まない騎士団員や魔術師も多く、心を痛めている。


責任感が強く召喚の位置がずれたことを誰よりも申し訳なく思っている。


相原 チョコ


咲良と猫缶を愛する相原家の猫。

毎朝、和泉を起こすのが日課になってしまっている。

最初は鳴いたり肉球でプニプニしてたけど、和泉が起きないため起こす方法がエスカレートぎみ。


毎朝、優しくなでてくれる咲良が大好き。

案内ねこミュー

咲良に異様になついている。

和泉の枕元にトカゲの死骸など、ナゾのプレゼント畄⌒ヾ(・ω-。)♪をしたりとチョコと行動や性格がかぶっている。


本人(猫?)は絶対に隠したかったため、アイリスとレヴィにムチャクチャな契約をさせていたが、あえなくミュー=チョコだとバレた。


アーノルドのことを恐れている。

セレス・グノーシス   13歳   弟3王女


無事が確認できているグノーシス王家唯一の血筋。


叶わない願いと知りながらもジュリ兄大好きで、コロッと行動を変えてしまうこともあるが、国王達が帰ってきた時のために国を立て直そうと努力するがんばり屋。長く近衛を勤めたレヴィやアイリスの前では、年相応の振る舞いをみせることもあるが、公の場では毅然とした態度をとることが多い。

ルーカス・フォーミュラー


フリルとリボンを愛する凄腕の魔術師


国立魔術研究所所長、グノーシス城宮廷魔術師長

アイリスの父


おもしろいことと恋ばなが大好き。酒が入ると、その傾向はさらに加速する。猫好き。

シフォン・ブラウン


サルサの街を拠点に活動中の関西弁冒険者


もとアイリスの同僚。お節介なところがあるが本人に悪気はない。闘技場の警備や千尋のアトリエからの仕事を主にしている。

アーノルド・ブラウン


質実剛健の老紳士


レヴィが12歳の時から2年前までグレイス家に仕えていた。指南役であり、レヴィの剣術はアーノルドの影響が強い。お説教も含め、話が長いのがたまに傷。

カイ・ハズウェル


チャラさと真面目さが同居する魔法剣士


口から産まれてきたような性格だが剣の腕は確かで攻撃魔法も回復もこなす。レヴィの兄オスカーと仲がよく、レヴィのことは、からかいがいのある弟のように思っていて、本人は可愛がっているつもりである。

???

結城 千尋


5年前、不思議な光と共にやってきた凄腕錬金術師


現在は、名前だけ。

サルサの街で千尋のアトリエを経営している。

元々は女子高生だったが、1から錬金術をはじめた。

シフォンと採取に行くこともおおい。

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