隠し通路

文字数 2,309文字

!?
「替わってなくて助かったな。急ぐぞ!」
「いや、まてまてまてまてまて!!」
「なんでレヴィが知ってるのよ!」
「子供の時にちょっとな」
「……あの時か?」
「あぁ」
階段を降りると簡単な扉があり、鍵もかかっていないため簡単に開いた。
「これは、これはグノーシス王国の皆さん」
「あなた……!」
「ラズウェル殿?」
「お初にお目にかかります。カイ・ハズウェル殿」
「……なぜ名前を!」
「これは失礼。オスカー殿から、お噂はかねがね伺っております」
「……オスカーから?」

(フルネームでか?!それに嫌いそうなタイプなんだよな)

初対面どうしでも共通の知人がいると場が盛り上がることも多いが、この場合はそうはならなかった。
(兄貴に嫌いって聞いてるが……まぁいい。めんどうだ。)

「ラズウェル殿、俺達はセレスさまの勅命で」

「えぇ、存じておりますよ。避難訓練にいらしてくれたのでしょう?」

!!

「避難訓……!!」
(カイ、気持ちはわかるが抑えろ。こういう方だ)
………………
「セレスさまからは、1年前のグノーシスと同じ状況下と聞いております。国王さま方は、ご無事ですか?」
「えぇ、ご無事ですよ」

(兄弟そろって、いけすかないですね)


「ぐわぁああああ!!」

!!
「……なんですか?今の声!」
「ラズウェル殿!」
「どうぞ、こちらです」
ひと1人がやっと通れるくらいの狭い通路を

ラズウェルは、かなりゆっくりと歩いていく。

「ラズウェル殿。もう少し早く歩けないのですか?」
「申し訳ありません。カイ殿。先日、足を挫いてしまいまして……」
「トルート!」
フワフワした大きな布が目の前にあらわれる。
「……ほう、見事ですね」
アイリスの意図を察したレヴィとカイが乗る。


「……ラズウェルさんは、どうされますか?」
「僕は、ここに残ります。足手まといのようですからね」
………………
ラズウェルに教えられた通りに進むと魔物などにあうこともなく、かなり広い広間のようなところに出た。周囲の見通しもよく野営をするには充分な場所だ。
「陛下!メルディ殿!!」
さっきの悲鳴は、筆頭騎士メルディ殿だ。

まだ子供のころ、父上と一緒にアルティメット城の客室に泊まっていたレヴィは、メルディ殿によく遊んでもらっていた。見た目はゴツイが優しい人だ。

「アルティメット王!!」
「アルティメット国王さま!」
3人の声だけが虚しく響く。

辺りは不気味なほどの静寂に包まれている。

「ヴィ!」
「あぁ、おかしいな!」
「他の……!」
空中から複数本のナイフが的確にレヴィ達に向かって投げられた。
「アイスレイン」
キンッ!!
カイとレヴィが、とっさに剣でナイフを弾く。
「誰だっ!!」
「名乗る必要なんてないわ。あなた達は、ここで死ぬんだから!」
「どういうこと?」
「そのままの意味よ。ここが、あなた達の墓場になるの」
「誰に頼まれた!」
「……言うと思う?」
「冥土の土産に教えてくれたっていいだろ?」
「そうね。死んでから教えてあげるわ」
「遅いだろ、それ」
…………
「……あなたが相手をしてくれるのか?」
「まさか。あなた達の相手はこっちよ」
…………
………………
!?
「メルディ殿!?シルフィ殿!!」
「……ヴィ!?」
「……アルティメット王の側近だ」
「!?……どういうことだよ!」
「俺が知るわけないだろ!」
「ふふ。どんな気分かしら?」
「助けにきたはずの相手に剣を向けられる気分は」
心の底から愉しそうに笑う。
「いいわけないだろ!!」
「あら、残念」
「ーー2人に」
「2人に何をしたの!?」
「何もしてないわ」
………………

「ふざけんなっ!!」

……………………
「ふざけてなんかいないわ」
!?
「そんなわけ……!」
………………!
「サンドドラゴン」
「シルフィ殿!」
「なっ!」
「………………」
「サンドストーム」
大小様々な砂と石のつぶてが強い竜巻にのり、竜巻ごとレヴィ達に突っ込んできた。
「アs……きゃぁああああああああ!」
とっさにアス・シールドをはろうとするが間にあわない。
「うわぁああああああああ!」
「うわぁああああああああ!」
風で吹き飛ばされないように踏ん張ってみるが、まるで効果はない。

風の渦の中心に捲き込まれ、レヴィ達の身体を土砂や石が傷つけていく。

上昇気流にのり螺旋状の風に煽られて天井近くまで巻き上げられた瞬間、風がとまる。
!!
あとは重力に従って堕ちるだけーー!
「…………グッ!」
「…………かはぁっ!」
「……がぁっ!!」
………………
メルディは上段に構えた剣を無造作に、動けずにいるアイリスに斬りおろした。
「アイリス!」
アイリスの近くにいたカイが、とっさにメルディの剣を受けた。
「……グッ!」

(おっ、重っ)

上下左右に緩急をつけてうちこまれる剣をなんとか受けてはいるものの受けるだけで精一杯だ。
「…………ケハッ!」
内臓をやったかもしれない。

逆流した血を吐血する。

「エルド・ラ・トゥレス」
重い剣撃を伴った雷光がカイごとアイリスを貫く。
!!
「よそ見をしている余裕なんてあるのかしら?」
「アイスドラゴン」
……!
アイスドラゴンは氷の息を吐いた。
「ウインドドラゴン」
ウインドドラゴンは、翼を思いっきりはためかせ強風をおこす。
「ーー!」
氷の息をギリギリ避けきったレヴィだったが、ウインドドラゴンの風によって後押しされた氷の息はその射程を大幅に拡げ、レヴィの右足を凍りつかせた。
サンド
アイス
ストーム
石つぶての混ざった濁流が嵐を伴って動けないレヴィを直撃する。
「うわぁああああああああ!!」
「もう終り?もっと楽しませてよ」
苛立たしげにレヴィの腹を蹴りあげる。
「……くっ!」
「いつまで遊んでいる?」
「ルーティス、もう少し待って。今息の根をーー!」
「そんな雑魚棄てておけ。あのお方がお呼びだ」
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登場人物紹介

相原 和泉(あいはら いずみ)


高崎先輩に恋する剣道部チームリーダー


高二。剣道部。

咲良の親友。朝に弱く、毎朝チョコのムーンサルトダイブで起こされる。キノコの里山が大好き。

古泉 咲良(こいずみ さくら)


冷静沈着な純心寺の跡取り


高二。和泉の親友。

純心寺の後継ぎとして育てられたため、多少の術が使える。

しっかり者で、朝に弱い和泉を心配して毎朝迎えにきてくれる。パンケーキと紅茶に目がない。

レヴィ・グレイス


激辛好きな若き王国騎士団団長


王国騎士団団長。アイリスと同期

代々、騎士団団長をだしている名家の産まれ。

前騎士団団長は父であり、行方不明の父と兄の代理として騎士団団長を勤める。立場上、冷静にふるまってはいるが、熱血漢で正義感が強い。王家に対する忠誠心が高い。

アイリス・フォーミュラー


薬学に通じる刻と氷の魔術師


王宮魔術師。レヴィと同期。

王宮魔術師長ルーカスを父にもつ苦労人で少しドジなところはあるが魔力の高さは随一。エリクサーの創始者。かなりの苦さのため理由をつけて飲まない騎士団員や魔術師も多く、心を痛めている。


責任感が強く召喚の位置がずれたことを誰よりも申し訳なく思っている。


相原 チョコ


咲良と猫缶を愛する相原家の猫。

毎朝、和泉を起こすのが日課になってしまっている。

最初は鳴いたり肉球でプニプニしてたけど、和泉が起きないため起こす方法がエスカレートぎみ。


毎朝、優しくなでてくれる咲良が大好き。

案内ねこミュー

咲良に異様になついている。

和泉の枕元にトカゲの死骸など、ナゾのプレゼント畄⌒ヾ(・ω-。)♪をしたりとチョコと行動や性格がかぶっている。


本人(猫?)は絶対に隠したかったため、アイリスとレヴィにムチャクチャな契約をさせていたが、あえなくミュー=チョコだとバレた。


アーノルドのことを恐れている。

セレス・グノーシス   13歳   弟3王女


無事が確認できているグノーシス王家唯一の血筋。


叶わない願いと知りながらもジュリ兄大好きで、コロッと行動を変えてしまうこともあるが、国王達が帰ってきた時のために国を立て直そうと努力するがんばり屋。長く近衛を勤めたレヴィやアイリスの前では、年相応の振る舞いをみせることもあるが、公の場では毅然とした態度をとることが多い。

ルーカス・フォーミュラー


フリルとリボンを愛する凄腕の魔術師


国立魔術研究所所長、グノーシス城宮廷魔術師長

アイリスの父


おもしろいことと恋ばなが大好き。酒が入ると、その傾向はさらに加速する。猫好き。

シフォン・ブラウン


サルサの街を拠点に活動中の関西弁冒険者


もとアイリスの同僚。お節介なところがあるが本人に悪気はない。闘技場の警備や千尋のアトリエからの仕事を主にしている。

アーノルド・ブラウン


質実剛健の老紳士


レヴィが12歳の時から2年前までグレイス家に仕えていた。指南役であり、レヴィの剣術はアーノルドの影響が強い。お説教も含め、話が長いのがたまに傷。

カイ・ハズウェル


チャラさと真面目さが同居する魔法剣士


口から産まれてきたような性格だが剣の腕は確かで攻撃魔法も回復もこなす。レヴィの兄オスカーと仲がよく、レヴィのことは、からかいがいのある弟のように思っていて、本人は可愛がっているつもりである。

???

結城 千尋


5年前、不思議な光と共にやってきた凄腕錬金術師


現在は、名前だけ。

サルサの街で千尋のアトリエを経営している。

元々は女子高生だったが、1から錬金術をはじめた。

シフォンと採取に行くこともおおい。

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