アルティメット城

文字数 1,483文字

「ムク」
召還獣ムクを召還する。
キュピ?
3角形の小さな耳をピクピク刺せながら、スリスリと鼻をアイリスに押しつける。ご飯を食べていたのか、細長く小さい草が口の端についていて、おもしろい顔になっている。
「ムク、変なかぉ」
「ゴッゴッ!!」

(レディに向かって変な顔ってなによ!)

「うゎあああああああああ!!」
怒ったムクに思いっきり体当りされカイは星になった。
(……なにやってるんだ。あいつは)
「ついてるわよ、ムク」
「セレスさまのお側にいくんだから、キレイにしないとね」
「キュピ、キュピピー」
「トルート」
フヨフヨと浮く布の中に地下室の鍵と簡単なメモを包むと、ムクの首に結ぶ。
あるハズのマスターキーがなかった。

マスターキーは魔術で作られている鍵で、魔術で開け閉めするタイプの鍵を魔力の少ない人でも開けることができる。

アイリスの持っていた鍵は魔術を必要とするタイプのものだが、セレスさまなら問題なく使えるはずだ。
「なにすんだよ!ムク」
「ゴッ、ゴゴゴッ」

(なによ!)

1人と1匹の間に火花が散っている。
「ムクも、カイもじゃれてないで!」

(時間ないんだから!)

「じゃれてない!」

「ゴッ、ゴッ」

「お願いね、ムク。セレスさまを御守りするのよ」
キュピッ!!
勇ましく鳴いたムクは謁見の間にダッシュで向かった。
「行くわよ」
「あぁ、頼む」
「うん、お願い」
「ポート  アルティメット」
■□■□■□■□■□■□■□

□■□■□■□■□■

■□■□■□

…………………………
「そんな……」
「ウソだろ」
「…………んだよ!これ」
かつての水と木々に囲まれた優美な城は、所々に骨組みが見えなぎ倒された木々が城を貫いている。
「……手遅れと決まったわけじゃない。急ぐぞ!」
「了解」

「ええ」

中に入ると思っていたよりも城の様態を保っていた。

思っていたよりだが……。

「うゎあああああああああ!」
「大丈夫か?援……」
声がした方に駆け寄ると助け起こした。
「……俺達は大丈夫だ。……王を!」
アイリスは戻ろうとする兵士の手を掴んだ。


「待って!回復をーー。エル・ヒール」
「これを」
少し乱暴に薬草を適当に掴むと兵士に渡す。
「すまない。恩にきる」
「ご武運をーー!」
「あぁ、ご武運をーー!」
兵士とレヴィ達は同時に走り出した。
(アルティメット王)
セレスさまの外交に同行した時の凛々しい姿が思い浮かぶ。
「ご無事で」
階段を昇りきったすぐそこになぎ倒されたと思われる木々が積み重なって、行く手を阻んでいる。
「ファイアクラッシュ」
レヴィの大剣が木々を切り裂き道をつくる。

ここから先は謁見の間まで一直線だ。

謁見の間に近づくにつれて倒れている兵士がふえていく。
「エル・ヒールレイン」
もっとちゃんと回復してあげたいが今はこれが精一杯だ。

時間がないーー!

「すまない、失礼する」
謁見の間へと続く大きな扉を開ける。

他国の者が扉を開けるなど本来は非礼なこととして深く戒められているが、緊急事態だ。

「アルティメット王。ご無事ですか?」
返事はない。


ーーというより誰もいない。

「隠し通路ということかしら」
「そうかもしれないが困ったな」
他国の王族の隠し通路の場所など、わからないのが普通だ。

自国であってもその存在を知ってるのは1部の者だけだ。

「おい。ヴィ、何を……!」
玉座の裏でゴソゴソ不審な動きをしているレヴィに声をかけた。
「いや、この辺に隠しスイッチがあるはずなんだがーー!」


                                                            カチッ!







ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!







左上の厚いカーテンの裏側に下に続く階段が出現した!
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登場人物紹介

相原 和泉(あいはら いずみ)


高崎先輩に恋する剣道部チームリーダー


高二。剣道部。

咲良の親友。朝に弱く、毎朝チョコのムーンサルトダイブで起こされる。キノコの里山が大好き。

古泉 咲良(こいずみ さくら)


冷静沈着な純心寺の跡取り


高二。和泉の親友。

純心寺の後継ぎとして育てられたため、多少の術が使える。

しっかり者で、朝に弱い和泉を心配して毎朝迎えにきてくれる。パンケーキと紅茶に目がない。

レヴィ・グレイス


激辛好きな若き王国騎士団団長


王国騎士団団長。アイリスと同期

代々、騎士団団長をだしている名家の産まれ。

前騎士団団長は父であり、行方不明の父と兄の代理として騎士団団長を勤める。立場上、冷静にふるまってはいるが、熱血漢で正義感が強い。王家に対する忠誠心が高い。

アイリス・フォーミュラー


薬学に通じる刻と氷の魔術師


王宮魔術師。レヴィと同期。

王宮魔術師長ルーカスを父にもつ苦労人で少しドジなところはあるが魔力の高さは随一。エリクサーの創始者。かなりの苦さのため理由をつけて飲まない騎士団員や魔術師も多く、心を痛めている。


責任感が強く召喚の位置がずれたことを誰よりも申し訳なく思っている。


相原 チョコ


咲良と猫缶を愛する相原家の猫。

毎朝、和泉を起こすのが日課になってしまっている。

最初は鳴いたり肉球でプニプニしてたけど、和泉が起きないため起こす方法がエスカレートぎみ。


毎朝、優しくなでてくれる咲良が大好き。

案内ねこミュー

咲良に異様になついている。

和泉の枕元にトカゲの死骸など、ナゾのプレゼント畄⌒ヾ(・ω-。)♪をしたりとチョコと行動や性格がかぶっている。


本人(猫?)は絶対に隠したかったため、アイリスとレヴィにムチャクチャな契約をさせていたが、あえなくミュー=チョコだとバレた。


アーノルドのことを恐れている。

セレス・グノーシス   13歳   弟3王女


無事が確認できているグノーシス王家唯一の血筋。


叶わない願いと知りながらもジュリ兄大好きで、コロッと行動を変えてしまうこともあるが、国王達が帰ってきた時のために国を立て直そうと努力するがんばり屋。長く近衛を勤めたレヴィやアイリスの前では、年相応の振る舞いをみせることもあるが、公の場では毅然とした態度をとることが多い。

ルーカス・フォーミュラー


フリルとリボンを愛する凄腕の魔術師


国立魔術研究所所長、グノーシス城宮廷魔術師長

アイリスの父


おもしろいことと恋ばなが大好き。酒が入ると、その傾向はさらに加速する。猫好き。

シフォン・ブラウン


サルサの街を拠点に活動中の関西弁冒険者


もとアイリスの同僚。お節介なところがあるが本人に悪気はない。闘技場の警備や千尋のアトリエからの仕事を主にしている。

アーノルド・ブラウン


質実剛健の老紳士


レヴィが12歳の時から2年前までグレイス家に仕えていた。指南役であり、レヴィの剣術はアーノルドの影響が強い。お説教も含め、話が長いのがたまに傷。

カイ・ハズウェル


チャラさと真面目さが同居する魔法剣士


口から産まれてきたような性格だが剣の腕は確かで攻撃魔法も回復もこなす。レヴィの兄オスカーと仲がよく、レヴィのことは、からかいがいのある弟のように思っていて、本人は可愛がっているつもりである。

???

結城 千尋


5年前、不思議な光と共にやってきた凄腕錬金術師


現在は、名前だけ。

サルサの街で千尋のアトリエを経営している。

元々は女子高生だったが、1から錬金術をはじめた。

シフォンと採取に行くこともおおい。

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