3角形の小さな耳をピクピク刺せながら、スリスリと鼻をアイリスに押しつける。ご飯を食べていたのか、細長く小さい草が口の端についていて、おもしろい顔になっている。
「ゴッゴッ!!」
(レディに向かって変な顔ってなによ!)
怒ったムクに思いっきり体当りされカイは星になった。
「セレスさまのお側にいくんだから、キレイにしないとね」
フヨフヨと浮く布の中に地下室の鍵と簡単なメモを包むと、ムクの首に結ぶ。
あるハズのマスターキーがなかった。
マスターキーは魔術で作られている鍵で、魔術で開け閉めするタイプの鍵を魔力の少ない人でも開けることができる。
アイリスの持っていた鍵は魔術を必要とするタイプのものだが、セレスさまなら問題なく使えるはずだ。
「ムクも、カイもじゃれてないで!」
(時間ないんだから!)
勇ましく鳴いたムクは謁見の間にダッシュで向かった。
■□■□■□■□■□■□■□
□■□■□■□■□■
■□■□■□
かつての水と木々に囲まれた優美な城は、所々に骨組みが見えなぎ倒された木々が城を貫いている。
中に入ると思っていたよりも城の様態を保っていた。
思っていたよりだが……。
セレスさまの外交に同行した時の凛々しい姿が思い浮かぶ。
階段を昇りきったすぐそこになぎ倒されたと思われる木々が積み重なって、行く手を阻んでいる。
レヴィの大剣が木々を切り裂き道をつくる。
ここから先は謁見の間まで一直線だ。
謁見の間に近づくにつれて倒れている兵士がふえていく。
もっとちゃんと回復してあげたいが今はこれが精一杯だ。
時間がないーー!
謁見の間へと続く大きな扉を開ける。
他国の者が扉を開けるなど本来は非礼なこととして深く戒められているが、緊急事態だ。
他国の王族の隠し通路の場所など、わからないのが普通だ。
自国であってもその存在を知ってるのは1部の者だけだ。
玉座の裏でゴソゴソ不審な動きをしているレヴィに声をかけた。
「いや、この辺に隠しスイッチがあるはずなんだがーー!」
左上の厚いカーテンの裏側に下に続く階段が出現した!