むりやり魔方陣に突っ込まれてグッタリしているレヴィ達をゲストルームに適当に放りこむと、自身も髪をおろし着替えを終え、せわしなくお昼の用意をしていた。
「お昼は、これでオッケ~。お寝坊さん達を起こしにいかないとね~」
「……そうよね。ずっと固まってるし、大丈夫かしら」
不満をくちにするレヴィとアイリス、放心状態の和泉と咲良と平和に眠り続けるミューがよく磨かれたフローリングの床に転がっていた。
「レヴィちゃんが起きてたのは、ちょっと残念だったわね~」
(寝てたら、あんなことやこんなことも……ハート)
「ふふっ、真に受けちゃって。ほんとレヴィちゃんもアイリスも可愛いわね~」
「ご飯の用意ができてるわ。3分以内にダイニングに集合よ。」
アイリスとレヴィの顔に緊張がはしる。
遅れたら経験上いつもヒドイめにあうのだ。
薬の材料がたりないからとドラゴンの角とエビルザメのヒレ、ダンドリオンの綿毛、ヒウナヅンのヒゲなど希少素材ばかりを取りに行かされたり、凶悪な魔物と戦われたり、闘技場に出るはめになったりなど散々である。
レヴィ達は和泉と咲良を背負うとダッシュで研究所の広い廊下を駆け抜けていく。普通に行ってもゲストルームからダイニングまでは、3分ギリギリである。和泉と咲良を起こして説明している時間はない。
遅刻は連帯責任だ。
一人が遅れたら全員遅刻扱いというよくわからないシステムだが、集団行動が必要な軍隊などでは、よく用いられる。
和泉達を巻き添えにできない。
その思いがレヴィとアイリスの足を動かしていた。
「ふふっ、さすがレヴィちゃんとアイリスね。合格よ~」
赤い絨毯の上に繊細な彫刻が周りに彫られたテーブルには、ところ狭しと昼食が並べられていた。
個人にはナンのような生地と具だくさんのスープ、
大皿に肉料理、魚料理、野菜や豆などが綺麗に盛り付けられている。
レヴィとアイリスは和泉と咲良の後ろにまわりこむと、膝を背中にあて和泉と咲良の両肩を後ろに引いた。
「……父上がごめんなさい。何か聞かれても、言いたくないことは言わなくていいのよ」
「あら~、可愛らしいそちらのお嬢さん達も起きたのね」
「咲良ちゃんに和泉ちゃんね~。やっぱり可愛い子には可愛らしい名前が似合うわね~」
「改めましてルーカス・フォーミュラよ。ここ魔術研究所の所長をしているわ~」
「そうね、勅命の方が優先って大義名分もあるし……」
言いつつスープを口に運ぶ。
野菜の旨味が十分にでていて普通に旨い。
「ところでレヴィちゃん、アイリスとはどこまでいったのかしら~?」