国立魔術研究所

文字数 1,547文字

むりやり魔方陣に突っ込まれてグッタリしているレヴィ達をゲストルームに適当に放りこむと、自身も髪をおろし着替えを終え、せわしなくお昼の用意をしていた。
「お昼は、これでオッケ~。お寝坊さん達を起こしにいかないとね~」
その頃のゲストルーム
「ってぇ!」
「ほんと乱暴なんだからっ」
ーーーーーーー
「Zzz」
ーーーーーーー
「父上がごめんなさいね」
「アイリスのせいじゃねーよ」
「だが、問題は……」
「……そうよね。ずっと固まってるし、大丈夫かしら」
不満をくちにするレヴィとアイリス、放心状態の和泉と咲良と平和に眠り続けるミューがよく磨かれたフローリングの床に転がっていた。
「頼もうーー!」
「父上」
「着替えられたのですか?」
「そうよ~、この方が動きやすいんですもの~」
「レヴィちゃんが起きてたのは、ちょっと残念だったわね~」

(寝てたら、あんなことやこんなことも……ハート)

!!


「父上!」
「ふふっ、真に受けちゃって。ほんとレヴィちゃんもアイリスも可愛いわね~」
「ご飯の用意ができてるわ。3分以内にダイニングに集合よ。」
アイリスとレヴィの顔に緊張がはしる。

遅れたら経験上いつもヒドイめにあうのだ。

薬の材料がたりないからとドラゴンの角とエビルザメのヒレ、ダンドリオンの綿毛、ヒウナヅンのヒゲなど希少素材ばかりを取りに行かされたり、凶悪な魔物と戦われたり、闘技場に出るはめになったりなど散々である。

レヴィ達は和泉と咲良を背負うとダッシュで研究所の広い廊下を駆け抜けていく。普通に行ってもゲストルームからダイニングまでは、3分ギリギリである。和泉と咲良を起こして説明している時間はない。
遅刻は連帯責任だ。

一人が遅れたら全員遅刻扱いというよくわからないシステムだが、集団行動が必要な軍隊などでは、よく用いられる。

和泉達を巻き添えにできない。

その思いがレヴィとアイリスの足を動かしていた。

ダイニング前ーー
ハァハァハァ……!
ハァハァハァ……ゴホッ
「ふふっ、さすがレヴィちゃんとアイリスね。合格よ~」
「お昼にしましょ~」
赤い絨毯の上に繊細な彫刻が周りに彫られたテーブルには、ところ狭しと昼食が並べられていた。
個人にはナンのような生地と具だくさんのスープ、

大皿に肉料理、魚料理、野菜や豆などが綺麗に盛り付けられている。

「大事ないか?」
「え、ええ」
肩で息をしながらアイリスが頷く。
「……可哀想だが、起こすしかなさそうだな」
「……そうね」
レヴィとアイリスは和泉と咲良の後ろにまわりこむと、膝を背中にあて和泉と咲良の両肩を後ろに引いた。
「手荒にしてすまない。大丈夫か?」
「はい……ここは?」
「魔術研究所よ」
「魔術研究所?」
「あぁ、森であった女装した男性を覚えているか?」
「はい。すごく個性的な人ですよね」
「彼から昼食の招待を受けて、いまここにいる」
「……父上がごめんなさい。何か聞かれても、言いたくないことは言わなくていいのよ」
「アイリスさん?」
「…………先に謝っておくわ」
「悪い人じゃないんだが、クセのある人だな」
「あら~、可愛らしいそちらのお嬢さん達も起きたのね」
「はい……古泉咲良と申します」
「相原和泉です」
「咲良ちゃんに和泉ちゃんね~。やっぱり可愛い子には可愛らしい名前が似合うわね~」
「改めましてルーカス・フォーミュラよ。ここ魔術研究所の所長をしているわ~」
「酒がはいる前に撤退しよう」
「そうね、勅命の方が優先って大義名分もあるし……」
小声で会話を進める。
「……あぁ」
言いつつスープを口に運ぶ。

野菜の旨味が十分にでていて普通に旨い。

「ところでレヴィちゃん、アイリスとはどこまでいったのかしら~?」
!?
口にいれたスープを吐き出しそうになった。
「父上!」
「どっ、どこまでって……」
「決まってるじゃな~い。恋のABCよ~」
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登場人物紹介

相原 和泉(あいはら いずみ)


高崎先輩に恋する剣道部チームリーダー


高二。剣道部。

咲良の親友。朝に弱く、毎朝チョコのムーンサルトダイブで起こされる。キノコの里山が大好き。

古泉 咲良(こいずみ さくら)


冷静沈着な純心寺の跡取り


高二。和泉の親友。

純心寺の後継ぎとして育てられたため、多少の術が使える。

しっかり者で、朝に弱い和泉を心配して毎朝迎えにきてくれる。パンケーキと紅茶に目がない。

レヴィ・グレイス


激辛好きな若き王国騎士団団長


王国騎士団団長。アイリスと同期

代々、騎士団団長をだしている名家の産まれ。

前騎士団団長は父であり、行方不明の父と兄の代理として騎士団団長を勤める。立場上、冷静にふるまってはいるが、熱血漢で正義感が強い。王家に対する忠誠心が高い。

アイリス・フォーミュラー


薬学に通じる刻と氷の魔術師


王宮魔術師。レヴィと同期。

王宮魔術師長ルーカスを父にもつ苦労人で少しドジなところはあるが魔力の高さは随一。エリクサーの創始者。かなりの苦さのため理由をつけて飲まない騎士団員や魔術師も多く、心を痛めている。


責任感が強く召喚の位置がずれたことを誰よりも申し訳なく思っている。


相原 チョコ


咲良と猫缶を愛する相原家の猫。

毎朝、和泉を起こすのが日課になってしまっている。

最初は鳴いたり肉球でプニプニしてたけど、和泉が起きないため起こす方法がエスカレートぎみ。


毎朝、優しくなでてくれる咲良が大好き。

案内ねこミュー

咲良に異様になついている。

和泉の枕元にトカゲの死骸など、ナゾのプレゼント畄⌒ヾ(・ω-。)♪をしたりとチョコと行動や性格がかぶっている。


本人(猫?)は絶対に隠したかったため、アイリスとレヴィにムチャクチャな契約をさせていたが、あえなくミュー=チョコだとバレた。


アーノルドのことを恐れている。

セレス・グノーシス   13歳   弟3王女


無事が確認できているグノーシス王家唯一の血筋。


叶わない願いと知りながらもジュリ兄大好きで、コロッと行動を変えてしまうこともあるが、国王達が帰ってきた時のために国を立て直そうと努力するがんばり屋。長く近衛を勤めたレヴィやアイリスの前では、年相応の振る舞いをみせることもあるが、公の場では毅然とした態度をとることが多い。

ルーカス・フォーミュラー


フリルとリボンを愛する凄腕の魔術師


国立魔術研究所所長、グノーシス城宮廷魔術師長

アイリスの父


おもしろいことと恋ばなが大好き。酒が入ると、その傾向はさらに加速する。猫好き。

シフォン・ブラウン


サルサの街を拠点に活動中の関西弁冒険者


もとアイリスの同僚。お節介なところがあるが本人に悪気はない。闘技場の警備や千尋のアトリエからの仕事を主にしている。

アーノルド・ブラウン


質実剛健の老紳士


レヴィが12歳の時から2年前までグレイス家に仕えていた。指南役であり、レヴィの剣術はアーノルドの影響が強い。お説教も含め、話が長いのがたまに傷。

カイ・ハズウェル


チャラさと真面目さが同居する魔法剣士


口から産まれてきたような性格だが剣の腕は確かで攻撃魔法も回復もこなす。レヴィの兄オスカーと仲がよく、レヴィのことは、からかいがいのある弟のように思っていて、本人は可愛がっているつもりである。

???

結城 千尋


5年前、不思議な光と共にやってきた凄腕錬金術師


現在は、名前だけ。

サルサの街で千尋のアトリエを経営している。

元々は女子高生だったが、1から錬金術をはじめた。

シフォンと採取に行くこともおおい。

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