ピラー街道

文字数 1,732文字

簡易テントを片付けたレヴィ達は、ピラー街道を急ぎ進んでいた。

辺りが草原だったためか虫も多く、魔物の見張りが欠かせない野宿は異世界から来たばかりの2人にはキツイだろうとの判断である。

「サルサの街でいいのよね」
「あぁ、消耗品の補給も必要だしベッドで休みたいしな」
「サルサの街?」
「南西にあるここから1番近い街だ」
「どんな街なんですか?」
「船や海に出る以外のものは、ここで揃えられるわ」
「いろいろあって楽しそうな街ですね」
「そうね。他の国のものも海運商が運んでくるし、グノーシス王国で1番モノと人が集まるところよ」
「……海運商?」
隣で和泉がコクコクとうなづく。
「船で大陸を移動して商売をしている人のことだ」
「船で大陸を?男のロマンって感じですね」
「だろっ、自分の船で世界中をとびまわるとか憧れるよなぁ」
「わぁ~、いいですね」
「やっぱ、そう思うか?ギルド経由で人助けしたりしながら商売するとか最高だよなぁ」
「ギルドって?」
「助け合いのような感じだな。欲しいモノをギルドに依頼するとギルドに登録しているギルド員が依頼を受けて欲しいモノを揃えてくれるんだ」
「ギルド員は厳正な審査があるから、安全に取引できるのよ」
「すごいシステムですね」
「咲良さん達の世界には、なかったの?」
「残念ながら……」
「帰って広めたら、一気に浸透しそうだよね」
「あっ、それいいね」
「でしょーー?お寺とか神社でギルドを作って」
「うんうん(゜-゜)(。_。)(゜-゜)(。_。)」
「そしたら……純心寺ガッポガッポよね」
「いい、いいよ!それスッゴクいい」
「お代官さま、こちらが黄金饅頭にございます」
「うむ、苦しゅうない。越後屋そちも悪よのぉ」
「お代官さまこそ」
悪い笑顔で笑いあう勇者2人。
(よくわかんねーノリだな、けど楽しそうだしいいか)
ガサガサと斜め後ろで微かに物音がした。
「構えてっ!!」
アイリスの緊迫した声が響く
「キシャァーー!」
ドラゴがあらわれた!
「ポポポ」
ダンドリオンがあらわれた!
「悪い。遅れた」
「大事ないわ」
ドラゴは超音波を放った!

耳障りな高音が耳元で鳴り響く。

「!」
「和泉っ!」
「Zzz」
耳を押さえてうずくまる和泉と寝続けるミュー。

和泉にかけよる咲良。

「ディスペル」
螺旋状(らせんじょう)の光の粒が和泉の周りを飛び交う。
「えっ?」
足下から頭上に光の粒が届く頃には、不快な高音は消え去っていた。
「大丈夫か?」
「はい、ありがとうございます」
「そうか、良かった」
「あまねく光の精霊達よ、この者達を護りたまえ」
少しの間アイリスの周りを思い思いに飛んでいた精霊達が、和泉と咲良の周りを取り囲んだ。
「アス・シールド」
天に向かって金色の光が伸びていく。
「……すごい」
「キラキラして綺麗」
「そこから出ないでくださいね」
2人「はい」
ダンドリオンがギザギザの葉っぱをシュルシュルと伸ばすとレヴィの左右から襲いかかる。
身体に触れるか触れないかくらいのギリギリでレヴィが避けたために地面に突き刺さって動けなくなっているところをレヴィの大剣グラディウスが一閃した。
「ボボー‼」
少し苦しそうにしていたダンドリオンだったが、切られた葉っぱは、あっという間に再生していた。ダンドリオンは毒いりの綿毛を辺り一面に放った。
「ファイアウォール」
激しい炎が綿毛ごとダンドリオンを包み込む。
「ポボ、ポポボー!!」
「キシャァーー!キシャァーー!」
ドラゴは超音波を放った!

マナがたりない。

「超音波、超音波、超音波!!」
マナがたりない。

マナがたりない。

マナがたりない。


マナは魔力の源。たりないと魔力を必要とする魔法や技を使うことはできない。

「ファイアクラッシュ」
まっすぐにレヴィに向かって来たドラゴを炎をまとったレヴィの大剣が切り裂いていた。
「2人とも大丈夫?」
咲良達を取り囲んでいた精霊達は散り散りに去っていった。
「はい」
「大丈夫です」
「Zzz」
「では、行くぞ」
「サルサの街まで、どのくらいなんですか?」
「6~7時間ってところかしら」
「ろく……!」
「そんなにかかるんですか?」
「やはりキツイか。早めに出てきて正解だったな」
「半分くらい行ったところに魔術研究所があるから、最悪そこで泊まりましょう。宿泊向きではないけど」
「…………そうだな」
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登場人物紹介

相原 和泉(あいはら いずみ)


高崎先輩に恋する剣道部チームリーダー


高二。剣道部。

咲良の親友。朝に弱く、毎朝チョコのムーンサルトダイブで起こされる。キノコの里山が大好き。

古泉 咲良(こいずみ さくら)


冷静沈着な純心寺の跡取り


高二。和泉の親友。

純心寺の後継ぎとして育てられたため、多少の術が使える。

しっかり者で、朝に弱い和泉を心配して毎朝迎えにきてくれる。パンケーキと紅茶に目がない。

レヴィ・グレイス


激辛好きな若き王国騎士団団長


王国騎士団団長。アイリスと同期

代々、騎士団団長をだしている名家の産まれ。

前騎士団団長は父であり、行方不明の父と兄の代理として騎士団団長を勤める。立場上、冷静にふるまってはいるが、熱血漢で正義感が強い。王家に対する忠誠心が高い。

アイリス・フォーミュラー


薬学に通じる刻と氷の魔術師


王宮魔術師。レヴィと同期。

王宮魔術師長ルーカスを父にもつ苦労人で少しドジなところはあるが魔力の高さは随一。エリクサーの創始者。かなりの苦さのため理由をつけて飲まない騎士団員や魔術師も多く、心を痛めている。


責任感が強く召喚の位置がずれたことを誰よりも申し訳なく思っている。


相原 チョコ


咲良と猫缶を愛する相原家の猫。

毎朝、和泉を起こすのが日課になってしまっている。

最初は鳴いたり肉球でプニプニしてたけど、和泉が起きないため起こす方法がエスカレートぎみ。


毎朝、優しくなでてくれる咲良が大好き。

案内ねこミュー

咲良に異様になついている。

和泉の枕元にトカゲの死骸など、ナゾのプレゼント畄⌒ヾ(・ω-。)♪をしたりとチョコと行動や性格がかぶっている。


本人(猫?)は絶対に隠したかったため、アイリスとレヴィにムチャクチャな契約をさせていたが、あえなくミュー=チョコだとバレた。


アーノルドのことを恐れている。

セレス・グノーシス   13歳   弟3王女


無事が確認できているグノーシス王家唯一の血筋。


叶わない願いと知りながらもジュリ兄大好きで、コロッと行動を変えてしまうこともあるが、国王達が帰ってきた時のために国を立て直そうと努力するがんばり屋。長く近衛を勤めたレヴィやアイリスの前では、年相応の振る舞いをみせることもあるが、公の場では毅然とした態度をとることが多い。

ルーカス・フォーミュラー


フリルとリボンを愛する凄腕の魔術師


国立魔術研究所所長、グノーシス城宮廷魔術師長

アイリスの父


おもしろいことと恋ばなが大好き。酒が入ると、その傾向はさらに加速する。猫好き。

シフォン・ブラウン


サルサの街を拠点に活動中の関西弁冒険者


もとアイリスの同僚。お節介なところがあるが本人に悪気はない。闘技場の警備や千尋のアトリエからの仕事を主にしている。

アーノルド・ブラウン


質実剛健の老紳士


レヴィが12歳の時から2年前までグレイス家に仕えていた。指南役であり、レヴィの剣術はアーノルドの影響が強い。お説教も含め、話が長いのがたまに傷。

カイ・ハズウェル


チャラさと真面目さが同居する魔法剣士


口から産まれてきたような性格だが剣の腕は確かで攻撃魔法も回復もこなす。レヴィの兄オスカーと仲がよく、レヴィのことは、からかいがいのある弟のように思っていて、本人は可愛がっているつもりである。

???

結城 千尋


5年前、不思議な光と共にやってきた凄腕錬金術師


現在は、名前だけ。

サルサの街で千尋のアトリエを経営している。

元々は女子高生だったが、1から錬金術をはじめた。

シフォンと採取に行くこともおおい。

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