再会と初めての謁見(挨拶編)

文字数 1,613文字

城下町を抜けるとグノーシス城の城門が見え、両側に門番が立っている。

レヴィと門番は、お互いに敬礼をすると顔パスで城の中に入る。

「勇者さま、お待ちしておりました」
黒のベストスーツを着た執事風の男性が和泉達の姿を見ると丁寧に頭をさげた。咲良と和泉も、戸惑いながらも軽く会釈する。
「久しいですな。レヴィさま、アイリス殿」
「アル爺?」
「アーノルドさん、ご無沙汰しております」
思わずセバスチャンと呼びたくなるが、彼の名前はアーノルド・ブラウン。

2年前までレヴィの家の執事兼剣の指南役として勤めていた。長女の体調が悪くなったため、国に帰っていたのだ。

「いつ、こっちに?」
「昨晩にございます」
「ご息女の体調は、もうよろしいのですか?」
「ええ、おかげさまで。国の錬金術師が良い薬を調合してくれましてな」
「そうか、よかった」

(治ったんだな、フレデリカ)

「ええ、ほんとうに」
「ありがとうございます。レヴィさま、アイリス殿。セレスさまをあまりお待たせしてもいけませんな。参りましょうか」
!?
アーノルド以外全員の顔に『!?』が浮かんでいる。特にレヴィとアイリスは、その意味をつかみかねていた。
「私めも、ご一緒に謁見するようにお城の遣いの方から申しつかっております」
「それで、ここで待っていたのか?」
「さようでございます。レヴィさま」
「オスカーさまの情h……」
「兄貴のっ!? ジュリアスさまは……」
アーノルドの肩をつかむとガシガシと揺さぶる。
レヴィさま

レヴィ

アーノルドとアイリスの声が重なる。
「……!悪い」
あわてて、アーノルドの肩から手を離す。
………………
……………………
「相変わらずですな、レヴィさま。グレイス家の男子たるもの常に騎士道を意識されるよう、常々申しあげておりましたがお忘れでしょうか」
「!悪い、気をつける」
「アーノルドさん、お時間が……」
「そうでしたな。レヴィさま、続きは後ほど」
「あ、あぁ」
長い廊下を抜けると目の前に螺旋状の階段があらわれた。スピードを緩めながら、ゆっくりめに階段をのぼる。


赤い絨毯に豪華な装飾がほどこされた長い廊下。その途中に謁見の間へと続く大きな扉があり、門番に型通りの挨拶をすると重々しく扉が開く。

アーノルドを先頭に、レヴィとアイリスが続き、その後ろにキョロキョロしながら進む和泉と小突いてる咲良の姿があった。
「勇者さま、アーノルドさん、お待ちしてました」
「お初にお目にかかります。勇者さま。私はセレス・グノーシス」
「古泉 咲良と申します」
「相原 和泉と申しみゃ……!」
「しちゃ、かんだ。えっと……申します」
(へぇ~!あれが勇者さま)
(うぅ~!緊張する。映画でしか、こんなのみたことないよ)
「そんなに緊張しなくても大丈夫よ。普段通りでかまわないわ」
……………………
(アーノルドさんの視線がいたい)
「お気遣いありがとうございます。セレスさま」
「レヴィもアイリスも、ご苦労様でした。勇者さまを無事にお連れしてくれたこと、感謝します」
「はっ、もったいなきお言葉」
「私の魔方陣が原因なので……。申し訳ありませんでした」
(……アイリスちゃん)
「咲良さん、和泉さん。こちらの都合で召喚し、危険な目にもあわせてしまったこと、申し訳なく思います」
セレスは、椅子から立ち上がると深々と頭をさげた。
「!……そんな困ります。王女さまにそんなこと……」
慌てて駆け寄ろうとする和泉。
「和泉さん」
いつのまにか後ろに来ていたレヴィに手を掴まれた。
「レ……ヴィさん?」
「こういう場では、不用意に近くに行かない方がいい」
小声で会話をすすめる。
「……はい」
「何かあれば、セレスさまの斜め後ろにいる騎士が間を取り次ぐことになっている。説明してなくてすまなかった」
セレスは頭をさげたままである。
「お気持ちはわかりましたから頭をおあげください」
「セレスさま。目を見てお話がしたいです。顔をあげてください」
膝まずいてセレスと視線を合わせると笑顔で話しかける。
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登場人物紹介

相原 和泉(あいはら いずみ)


高崎先輩に恋する剣道部チームリーダー


高二。剣道部。

咲良の親友。朝に弱く、毎朝チョコのムーンサルトダイブで起こされる。キノコの里山が大好き。

古泉 咲良(こいずみ さくら)


冷静沈着な純心寺の跡取り


高二。和泉の親友。

純心寺の後継ぎとして育てられたため、多少の術が使える。

しっかり者で、朝に弱い和泉を心配して毎朝迎えにきてくれる。パンケーキと紅茶に目がない。

レヴィ・グレイス


激辛好きな若き王国騎士団団長


王国騎士団団長。アイリスと同期

代々、騎士団団長をだしている名家の産まれ。

前騎士団団長は父であり、行方不明の父と兄の代理として騎士団団長を勤める。立場上、冷静にふるまってはいるが、熱血漢で正義感が強い。王家に対する忠誠心が高い。

アイリス・フォーミュラー


薬学に通じる刻と氷の魔術師


王宮魔術師。レヴィと同期。

王宮魔術師長ルーカスを父にもつ苦労人で少しドジなところはあるが魔力の高さは随一。エリクサーの創始者。かなりの苦さのため理由をつけて飲まない騎士団員や魔術師も多く、心を痛めている。


責任感が強く召喚の位置がずれたことを誰よりも申し訳なく思っている。


相原 チョコ


咲良と猫缶を愛する相原家の猫。

毎朝、和泉を起こすのが日課になってしまっている。

最初は鳴いたり肉球でプニプニしてたけど、和泉が起きないため起こす方法がエスカレートぎみ。


毎朝、優しくなでてくれる咲良が大好き。

案内ねこミュー

咲良に異様になついている。

和泉の枕元にトカゲの死骸など、ナゾのプレゼント畄⌒ヾ(・ω-。)♪をしたりとチョコと行動や性格がかぶっている。


本人(猫?)は絶対に隠したかったため、アイリスとレヴィにムチャクチャな契約をさせていたが、あえなくミュー=チョコだとバレた。


アーノルドのことを恐れている。

セレス・グノーシス   13歳   弟3王女


無事が確認できているグノーシス王家唯一の血筋。


叶わない願いと知りながらもジュリ兄大好きで、コロッと行動を変えてしまうこともあるが、国王達が帰ってきた時のために国を立て直そうと努力するがんばり屋。長く近衛を勤めたレヴィやアイリスの前では、年相応の振る舞いをみせることもあるが、公の場では毅然とした態度をとることが多い。

ルーカス・フォーミュラー


フリルとリボンを愛する凄腕の魔術師


国立魔術研究所所長、グノーシス城宮廷魔術師長

アイリスの父


おもしろいことと恋ばなが大好き。酒が入ると、その傾向はさらに加速する。猫好き。

シフォン・ブラウン


サルサの街を拠点に活動中の関西弁冒険者


もとアイリスの同僚。お節介なところがあるが本人に悪気はない。闘技場の警備や千尋のアトリエからの仕事を主にしている。

アーノルド・ブラウン


質実剛健の老紳士


レヴィが12歳の時から2年前までグレイス家に仕えていた。指南役であり、レヴィの剣術はアーノルドの影響が強い。お説教も含め、話が長いのがたまに傷。

カイ・ハズウェル


チャラさと真面目さが同居する魔法剣士


口から産まれてきたような性格だが剣の腕は確かで攻撃魔法も回復もこなす。レヴィの兄オスカーと仲がよく、レヴィのことは、からかいがいのある弟のように思っていて、本人は可愛がっているつもりである。

???

結城 千尋


5年前、不思議な光と共にやってきた凄腕錬金術師


現在は、名前だけ。

サルサの街で千尋のアトリエを経営している。

元々は女子高生だったが、1から錬金術をはじめた。

シフォンと採取に行くこともおおい。

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