グノーシス城へ
文字数 2,383文字
背中を思いっきり叩かれ文句を言おうとしたレヴィは、シフォンの顔を見て言葉を飲みこんだ。
「ほんま、堪忍な。レヴィちゃんにあたってしもうて……」
「……収穫なかったわ。ゴメンね、むり言ってシフォンに替わってもらったのに!」
「謝らんでもえぇよ。情報ないんは、ウチらも一緒や」
「ここまで情報がないやなんて……」
(身を隠してるだけならええけど)
「国の意向でアイリスが勇者として召喚したことと、手違いがあり召喚される位置がずれてしまったことだけです」
「本当はもう少し話した方が良かったかもしれないけど、わからないことが多すぎるわ」
「そう……。あの子達、千尋のことを気にしてたみたいやったから、たぶんまた会うと思う。」
「めちゃ元気や。シュノーケル台地で採取して帰ってきたから、調合の鬼になってるんちゃうか」
「えぇ、昨日決勝戦だったから例年通りなら、そうですわね」
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和泉の部屋 AM7時
「うぅん。先輩にさえ触らせてないのに(´;ω;`)」
ドアを開けると入ってきたのは、レヴィとアイリスだった。
「さっきまで起きてたんですけど、すいません。いま起こしm……」
ダルーンのタマゴの目玉焼きとエルンストのサラダ、ナンのようなパンに近い主食と飲物という簡単な朝食だ。和泉だけを残していく訳にはいかないので、部屋にもってきてもらった。
さすがにこの部屋に4人は狭いけど、背に腹は変えられない。
「いえ、こちらこそ和泉が起きなくて……ごめんなさい」
「こちらの都合で申し訳ないが、謁見の予定が詰まっていてここを逃すと1週間後になってしまうんだ」
「……そうね、セレスさまが王位につかれて日が浅いから、外交が多く入ってるわ」
和泉を背負ったレヴィとアイリス、咲良はチェックアウトの手続きを済ませると、外にでた。
久し振りにレヴィに会ったことでテンションが上がってるセルードを優しく見守っていたい気分にさせられるが、時間がない
嬉しそうにレヴィのところに戻ると、顔をスリスリと擦り付けてくる。
友愛の印だ。
ブルル……!!ブル!
まったくわかっていない様子のレヴィにセルードは苛立っていた。
「セルード、異世界からきた勇者さまよ。大切なお方なのよ」
セルード(アイリスが、そう言うなら乗せてあげてもいい)
咲良に近づくと匂いをかぐ。
しばらく咲良をじっと見ていたセルードは咲良に背中を向けて、乗れというように静かに座った。
「咲良さん、セルードの上に座って、しっかりつかまって」
アイリスがそう言うと、フワフワした大きい布のようなものが現れた!
レヴィは、その布の上に優しく和泉をおろした。
こうして出発した4人はグノーシス城を目指していた。
サルサの街とグノーシス城を結ぶサルサ街道は治安が良く、魔物や盗賊の類いはあまり出ることはない。冒険者ギルドや闘技場があるこの街は、冒険者の出入りも多い。
騎士団や王宮魔術師も定期的に見回りをしているため、安全に通ることができる。
だから、これは保険だ。
何もなければ、城に早めに着くだけーー。
それだけの話だ。
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