宿屋
文字数 2,093文字
騎士団や宮廷魔術師等が拠点として利用することも多く、その責任者であるレヴィとアイリスはお得意様だ。
優勝者は、なんでも1つだけ願いを叶えてもらえるというふれこみがあり、腕に覚えのある者が多数参加する人気の大会だ。
去年の優勝者レヴィとアイリスが願いを叶えてもらったかというと、そんなこともなく、願いを叶えてもらったのはルーカスだ。新薬を作るのに必要な材料の調達だったかーー!
買い物は諦めて、おとなしくしているのが安全だ。
すぐにでも問いただしたい気持ちはあるけど、たたき起こしてまでは可哀想でできなかった。
毎朝、和泉を起こしてくれたのは、実際には咲良ではなくチョコだ。
何もない状態で料理となったら調理用具を持って来てくれても不思議じゃない。
チョコなら、収納場所も知っているしミューの手なら抱えて持ってこれる……。
チョコのやり方とそっくり。
咲良ならチョコも知ってるし、なにかわかるかも?
住職を務める咲良のお父さんは1人でなんでもできる人だ。
ゴムのようになった豆腐と油揚げの味噌汁とか、蓮根とほうれん草の砂糖漬けとか。
精進料理をみんなが気軽に食べられるように研究をしているらしい。
本人の想いに反して、やればやるほど逆効果なのが哀しい。
「咲良」
考えるのが怖いので、みないようにしていたことでもある。
正直、勇者というのもよくわからない。
でもサルサの街に来て、周りの人をみるとここが異世界なことが現実だと思い知らされる。服装も、髪や目の色も、まるで違う。案内の看板も、なんて書いてあるのか、まるでわからない。