ピラー草原3

文字数 1,369文字

「覚悟はできておろうな」

!!

頭の中に直接響く有無を言わせない声ーー!

さきほどまでのどこかくすぐったい闘気は影をひそめ辺りを包む空気がピリピリしている。

チョコの周りには、金色の光の中に白く輝く稲妻があった。

「和泉と咲良を傷つけた当然の報いと知るがいい!!」


■□■□■□■□■□


そのころ、レヴィとアイリスは風の迷宮を抜けるとアイリスの召喚獣ムクに二人乗りをしアイリスが気配を追っていた。ムクはカピバラを大きくしたような草食動物で穏やかな性格の子が多い。
「これは……聖獣さま?」
「あぁ、間違いない」


方向を変えるため、手綱を引きながら答える。

(聖獣さまは勇者召喚後は勇者の居場所を護ると聞いてるが、緊急措置か?)

「アイリス、しっかりつかまってろよ!」


■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

グオオオオオッ
魔物の鈎ヅメがチョコを切り裂こうとするが、ギリギリでかわすとそのまま魔物の後方に回り込んだ。

光の結界に魔物を閉じ込めると、無数の白い稲妻と光の矢が魔物の体を貫いていく。

魔物が自分を閉じ込める四角の箱状のモノをガンガン叩いているが、厚い結界に阻まれ、何も聞こえない。
「これは、咲良の分」
「これは、和泉の分」
チョコの手は止まることなく光の矢を打ち続けている。
そして、これが
「僕の分ーー!」


数刻後ーー
「……なんだ、これは…………!」
急ぎ、駆けつけたレヴィとアイリスは、目の前の光景に茫然としていた。

無数の深い穴があき、その中央に原型をとどめていない謎の死骸……らしきものが転がっている。

ここは、草原……のハズ。


少し離れたところに赤毛のねこが「ねこ缶」という謎の言葉をつぶやきながら、ヨダレを垂らして寝ている。

その奥には、勇者と思われる少女2人が傷つき倒れていた。

「レヴィ、勇者達を」
「あ、ああ。そうだな、すまない」
「いえ、私もさっきまで茫然としてたから」
奥に進み、別れて勇者達の様子をみる
「…………………」
「大丈夫か?」

(この感じ、魔力の枯渇か?)

「俺は、レヴィ・グレース。騎士団の者だ。これは魔力の回復薬。少し苦いが飲めるか?」

「…………コクッ」
「一気に飲んだ方が楽だぞ。すごく苦いから、それ」
「………っうぅ…………」
「ヒーリング」
淡い光が和泉を包み傷が癒えていく。
「……あれ?私……」
「大丈夫ですか?勇者さま」
「アイリスッ!!」
「ゆう……しゃ…………?あ、あの……」
かぶせるようにレヴィが言ったものの遅かったようで、しっかり和泉の耳に入っていた。咲良は何も言わなかったが、言える状態ではなかった。
「こちらから話をふっておいてすまないが、答えは少し待ってくれるか?」
「はい、あの…咲良のところに行ってていいですか?」
「魔力が枯渇してたから、まだ話すのはつらいかもしれないが、無理をさせなければ大丈夫だ。すまないが、よろしく頼む」
「はい。それではあとで」
「ふふ、可愛らしい子ね。でも、こういうことは早い方がいいと思うの」
「そうだな。だが奥の子はまだ無理だ。しっかりした感じだから魔力が戻れば大丈夫だと思うが…」
「でも、それでは間に合いませんわ」
「…………うっ、それは……。出発はどうせ明日なんだ。今日は休んでもらって」
「私達がパーティメンバーになれるわけではないのですよ」
「ああ、そうだよな」
人手があればなぁ……

2人してそう思い同時にため息をつく。

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登場人物紹介

相原 和泉(あいはら いずみ)


高崎先輩に恋する剣道部チームリーダー


高二。剣道部。

咲良の親友。朝に弱く、毎朝チョコのムーンサルトダイブで起こされる。キノコの里山が大好き。

古泉 咲良(こいずみ さくら)


冷静沈着な純心寺の跡取り


高二。和泉の親友。

純心寺の後継ぎとして育てられたため、多少の術が使える。

しっかり者で、朝に弱い和泉を心配して毎朝迎えにきてくれる。パンケーキと紅茶に目がない。

レヴィ・グレイス


激辛好きな若き王国騎士団団長


王国騎士団団長。アイリスと同期

代々、騎士団団長をだしている名家の産まれ。

前騎士団団長は父であり、行方不明の父と兄の代理として騎士団団長を勤める。立場上、冷静にふるまってはいるが、熱血漢で正義感が強い。王家に対する忠誠心が高い。

アイリス・フォーミュラー


薬学に通じる刻と氷の魔術師


王宮魔術師。レヴィと同期。

王宮魔術師長ルーカスを父にもつ苦労人で少しドジなところはあるが魔力の高さは随一。エリクサーの創始者。かなりの苦さのため理由をつけて飲まない騎士団員や魔術師も多く、心を痛めている。


責任感が強く召喚の位置がずれたことを誰よりも申し訳なく思っている。


相原 チョコ


咲良と猫缶を愛する相原家の猫。

毎朝、和泉を起こすのが日課になってしまっている。

最初は鳴いたり肉球でプニプニしてたけど、和泉が起きないため起こす方法がエスカレートぎみ。


毎朝、優しくなでてくれる咲良が大好き。

案内ねこミュー

咲良に異様になついている。

和泉の枕元にトカゲの死骸など、ナゾのプレゼント畄⌒ヾ(・ω-。)♪をしたりとチョコと行動や性格がかぶっている。


本人(猫?)は絶対に隠したかったため、アイリスとレヴィにムチャクチャな契約をさせていたが、あえなくミュー=チョコだとバレた。


アーノルドのことを恐れている。

セレス・グノーシス   13歳   弟3王女


無事が確認できているグノーシス王家唯一の血筋。


叶わない願いと知りながらもジュリ兄大好きで、コロッと行動を変えてしまうこともあるが、国王達が帰ってきた時のために国を立て直そうと努力するがんばり屋。長く近衛を勤めたレヴィやアイリスの前では、年相応の振る舞いをみせることもあるが、公の場では毅然とした態度をとることが多い。

ルーカス・フォーミュラー


フリルとリボンを愛する凄腕の魔術師


国立魔術研究所所長、グノーシス城宮廷魔術師長

アイリスの父


おもしろいことと恋ばなが大好き。酒が入ると、その傾向はさらに加速する。猫好き。

シフォン・ブラウン


サルサの街を拠点に活動中の関西弁冒険者


もとアイリスの同僚。お節介なところがあるが本人に悪気はない。闘技場の警備や千尋のアトリエからの仕事を主にしている。

アーノルド・ブラウン


質実剛健の老紳士


レヴィが12歳の時から2年前までグレイス家に仕えていた。指南役であり、レヴィの剣術はアーノルドの影響が強い。お説教も含め、話が長いのがたまに傷。

カイ・ハズウェル


チャラさと真面目さが同居する魔法剣士


口から産まれてきたような性格だが剣の腕は確かで攻撃魔法も回復もこなす。レヴィの兄オスカーと仲がよく、レヴィのことは、からかいがいのある弟のように思っていて、本人は可愛がっているつもりである。

???

結城 千尋


5年前、不思議な光と共にやってきた凄腕錬金術師


現在は、名前だけ。

サルサの街で千尋のアトリエを経営している。

元々は女子高生だったが、1から錬金術をはじめた。

シフォンと採取に行くこともおおい。

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