風の宝珠

文字数 1,560文字

レヴィ達が地下室の魔物と格闘していたころ、グノーシス城の謁見室は、先ほどのピリピリした雰囲気から毒気をぬかれた様子のセレスが声をかけた。
「ごめんなさい。驚かせてしまったわね」
「いえ」
「少しビックリしたけど大丈夫です」
「ありがとう」
「セレス。……僕には?」
セレスの膝に跳びのると上目遣いにおねだりをする。


「聖獣さまも、ありがとうございます」
セレスが優しく頭を撫でると、膝の上で丸くなってウトウトし始める。
「チョコッ!失礼でしょう?」
Zzz
「かまわないわ」
「すいません。セレスさま」
なでなでなでなでなで…………(*≧∀≦*)
「……セレスさま」
!!
「……そうでしたわね。ごめんなさい、アーノルドさん」
「いまさらだけど、この国は4つの大きな国で成り立っているわ」
「4つの国ですか?」
「えぇ。風を司るグノーシス王国、水を司るアダトール王国、火を司るグランザルク王国、地を司るアルティメット王国の4つがあるわ」
「……えっと、水がアルティトール?」
「和泉。混ざってる、混ざってるから」
「……むぅ~‼」
「水はアダトール王国でございます」
「あっ、はい。ありがとうございます。アーノルドさん」
「えっと、書くものをいただいてもいいですか?」
羊皮紙っぽい紙と羽ペン、インクを受け取った咲良がサラサラと書き始め、書き終わったものを和泉に渡す。
「さすが咲良!ありがとーー」
「もう、ほめても何もでないよ」
「よろしいですかな?」
「はっ、はい」
「この国には、それぞれに司る力を宝珠にこめて対応する遺跡に納めることで精霊の力を得た大気ーーマナと聖獣さまと精霊の御名(みな)のもとに国を治めてきた歴史があるわ」
「えぇと御名(みな)?」
「お名前のことよ」
「ありがとうございます。それで対応する遺跡が宝珠で……あれ?」
「…………和泉。言ってることがメチャクチャだよ」
………………

(レヴィさま以上の強敵ですな)

咲良は、和泉から紙を受け取るとサラサラと書きたして渡す。
「咲良ーー!ありがと~!」
「ちょっ、いきなり抱きつかないで」
キュピッ
「きゃぁぁああああああ」
ギュビピ
和泉に押し倒された咲良にムクが巻き込まれて下敷きになった。
「咲良さん、ムクッ!?」
「……痛っ。和泉っ!」
「……ごめん」
キュピーΣ(×_×;)
「ムク?ムク!!」
「セレスさま」
「……アーノルド……さん」
「ヒーリング」
「あの……ごめんなさい」
「大事ないわ。私もムクに気づかなかったもの」
そうよ。

アイリスの召喚獣だもの。大事ないわ。

2人への答えだったが、同時に自分にも言い聞かせる。

キュピッ!!

きゅぴきゅぴきゅきゅ!キュピピピ、キュピッ!!

「なにかついてますな」
ムクの首に結んである布を取り、安全を確認するとセレスに渡した。
!?
「……地下室を封鎖したそうよ」
「地下室を……でございますか?」
「えぇ、魔物g……!?」
「セレスさま、勇者さま。私から離れませぬよう……」
「えぇ。和泉さん、咲良さん。こちらに」
「はい」
「フレア」
謁見の間の扉を乱暴に魔法で破壊すると華奢な女性が入ってきた。
「どなたですかな」
「ジジイは引っ込んでな!」
「年寄りだと侮っていると痛いめをみますぞ」
「私が用があるのは風の宝珠だけ」
!!

「風の宝珠?」

「噂に聞く遺跡荒しは、あなたでしたか」
「遺跡荒しってのは、お洒落じゃないね」
「ハーティスさま配下、4天王リディアよ」
………………
「ハーティス……復活したというの?」
「そうよ。風の宝珠さえ渡してくれたら、おとなしく帰るわ。平和主義者だもの、私」
(……平和主義者?)
(謁見の間の扉、粉々なんだけど……)
「風の宝珠は、渡さないわ!!」
「そう。これと交換で、どうかしら?」
「………………セレス」
!?

「なに?この揺らぎ」

!!

(このマナは……!)

!!

「ジュリアス……兄さま?」

(………………どうして?)

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登場人物紹介

相原 和泉(あいはら いずみ)


高崎先輩に恋する剣道部チームリーダー


高二。剣道部。

咲良の親友。朝に弱く、毎朝チョコのムーンサルトダイブで起こされる。キノコの里山が大好き。

古泉 咲良(こいずみ さくら)


冷静沈着な純心寺の跡取り


高二。和泉の親友。

純心寺の後継ぎとして育てられたため、多少の術が使える。

しっかり者で、朝に弱い和泉を心配して毎朝迎えにきてくれる。パンケーキと紅茶に目がない。

レヴィ・グレイス


激辛好きな若き王国騎士団団長


王国騎士団団長。アイリスと同期

代々、騎士団団長をだしている名家の産まれ。

前騎士団団長は父であり、行方不明の父と兄の代理として騎士団団長を勤める。立場上、冷静にふるまってはいるが、熱血漢で正義感が強い。王家に対する忠誠心が高い。

アイリス・フォーミュラー


薬学に通じる刻と氷の魔術師


王宮魔術師。レヴィと同期。

王宮魔術師長ルーカスを父にもつ苦労人で少しドジなところはあるが魔力の高さは随一。エリクサーの創始者。かなりの苦さのため理由をつけて飲まない騎士団員や魔術師も多く、心を痛めている。


責任感が強く召喚の位置がずれたことを誰よりも申し訳なく思っている。


相原 チョコ


咲良と猫缶を愛する相原家の猫。

毎朝、和泉を起こすのが日課になってしまっている。

最初は鳴いたり肉球でプニプニしてたけど、和泉が起きないため起こす方法がエスカレートぎみ。


毎朝、優しくなでてくれる咲良が大好き。

案内ねこミュー

咲良に異様になついている。

和泉の枕元にトカゲの死骸など、ナゾのプレゼント畄⌒ヾ(・ω-。)♪をしたりとチョコと行動や性格がかぶっている。


本人(猫?)は絶対に隠したかったため、アイリスとレヴィにムチャクチャな契約をさせていたが、あえなくミュー=チョコだとバレた。


アーノルドのことを恐れている。

セレス・グノーシス   13歳   弟3王女


無事が確認できているグノーシス王家唯一の血筋。


叶わない願いと知りながらもジュリ兄大好きで、コロッと行動を変えてしまうこともあるが、国王達が帰ってきた時のために国を立て直そうと努力するがんばり屋。長く近衛を勤めたレヴィやアイリスの前では、年相応の振る舞いをみせることもあるが、公の場では毅然とした態度をとることが多い。

ルーカス・フォーミュラー


フリルとリボンを愛する凄腕の魔術師


国立魔術研究所所長、グノーシス城宮廷魔術師長

アイリスの父


おもしろいことと恋ばなが大好き。酒が入ると、その傾向はさらに加速する。猫好き。

シフォン・ブラウン


サルサの街を拠点に活動中の関西弁冒険者


もとアイリスの同僚。お節介なところがあるが本人に悪気はない。闘技場の警備や千尋のアトリエからの仕事を主にしている。

アーノルド・ブラウン


質実剛健の老紳士


レヴィが12歳の時から2年前までグレイス家に仕えていた。指南役であり、レヴィの剣術はアーノルドの影響が強い。お説教も含め、話が長いのがたまに傷。

カイ・ハズウェル


チャラさと真面目さが同居する魔法剣士


口から産まれてきたような性格だが剣の腕は確かで攻撃魔法も回復もこなす。レヴィの兄オスカーと仲がよく、レヴィのことは、からかいがいのある弟のように思っていて、本人は可愛がっているつもりである。

???

結城 千尋


5年前、不思議な光と共にやってきた凄腕錬金術師


現在は、名前だけ。

サルサの街で千尋のアトリエを経営している。

元々は女子高生だったが、1から錬金術をはじめた。

シフォンと採取に行くこともおおい。

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