召喚パニック
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ただ、召喚した場所が問題だった。
本来なら、この魔方陣の前に2人は召喚されるはずだった。
そしてアイリスが事情を説明し、現在王国を治めている王家唯一の生き残り、セレスの待つ謁見の間まで案内する、それが本来の手順だった。
ピラー草原の西に位置し、風の遺跡へと至る迷宮。
主に王国騎士団や王宮魔術師の訓練や試練などに用いられる曰く付きの迷宮。奥には風の宝珠がありグノーシス王国の管理下にあったが、最近の危機的な状況によって手が回らず、立ち入り禁止の措置をとってはいるものの魔物が徘徊する危険な地となっている。
2人は無事だろうか?勇者とはいえ、いきなりあんなところにーー!
現場への急行が求められる騎士団や魔術師の仕事では、座標軸と召喚の魔方陣を使うことがあった。この世界に限ってだけど。
王国の仕事は、座標軸と呼ばれるアルファベッドと数字で管理されている。
座標軸を召喚魔方陣に組み込むことで目的の場所にワープする仕組みになっていた。
13歳という年齢もあり幼さが残り王位継承権から、もっとも遠いところにいた彼女は、懸命に王国を立て直そうとしていた。
その1つが、この世界を救うという2人の勇者の召喚であった。
驚愕と同期であるアイリスへの心配が胸の中にひろがる。レヴィは、かすかに震える彼女の両肩をみつめていた。
魔方陣を再起動し、異世界から召喚された2人の勇者を探すためだ。それを使い近くまでワープする。
何ももたず、この世界の何も知らない状態で魔物が多く徘徊するところにいる勇者達。陽が落ちる前に見つけたい。
背中を優しくトントンされながらレヴィの胸に顔をうずめていた。
その様子をニヤニヤとカイルが見ていた。
そういいかけてやめた。