第六項 瑕
文字数 883文字
「はぁっ…はぁっ…」
涙を流しながら見上げると、そこには母親が立っていました。母もやはりグールとなっていて、天井に頭が届いています。ただ、父の時とちょっと違うのは、母が僕の悪魔、銀色のそれを恐れているのです。
母はいろいろ考えたのでしょう。考えた末、顔だけ母に戻りました。繰り返しになりますが、身長が2メートルもあって、血で赤黒くなったエプロンをした、緑色の化け物が母の顔でそこにいました。
「お母さんも殺す気なのッ?」
その化け物が叫びます。顔だけ母親で全身の肌が爛れたグールの姿は……本当に怖かった。おぞましかった……あまりの酷さに僕は目をそむけてしまいました。
視線を外すと同時に、ドスッ!っという衝撃を受けました。見下ろすと、左脇に包丁で刺さっていました。そして見上げると、汚く歪んであざ笑う母の顔がありました。母のようでグールのような、白目をむいて、口が裂けんばかりに開いて笑っていました。
せめて……化け物の顔でいてくれよ……
僕は銀色の悪魔を召喚しました。母だったソレを滅ぼすために。振りぬいた悪魔の拳が、母の顔面を粉砕しました。
僕はそのまま、力なく床に膝をつきました。そのままゆっくりと仰向けに倒れ、ボーっと天井を眺めていました。この家に暮らすことはもうない……一緒に暮らす家族もいない……
「ああ……終わったんだな……」
自分の人生が、普通の暮らしがもう続かないことがわかりましたた。
化け物と戦った。
両親を殺した。
銀色の悪魔が殴打したけど、その感触が、両親を殺したときの感触が、何故かこの手に残っている。
僕の心に、しっかりと刻まれている……
「痛い……」
心臓を鷲づかみにされているみたいで、息が出来なくなりましたた。胸を押さえながら、激しい動悸に襲われました。とっても苦しかったけど、大量の出血でもう、身体が動かなくなっていて、悶えることもできませんでした。
薄れ行く意識の中で、セシルさんが駆け寄ってくるのがわかりました。あれ?セシルさんだけじゃないな。何人かの男性が、玄関に駆け込んで来たようです。
涙を流しながら見上げると、そこには母親が立っていました。母もやはりグールとなっていて、天井に頭が届いています。ただ、父の時とちょっと違うのは、母が僕の悪魔、銀色のそれを恐れているのです。
母はいろいろ考えたのでしょう。考えた末、顔だけ母に戻りました。繰り返しになりますが、身長が2メートルもあって、血で赤黒くなったエプロンをした、緑色の化け物が母の顔でそこにいました。
「お母さんも殺す気なのッ?」
その化け物が叫びます。顔だけ母親で全身の肌が爛れたグールの姿は……本当に怖かった。おぞましかった……あまりの酷さに僕は目をそむけてしまいました。
視線を外すと同時に、ドスッ!っという衝撃を受けました。見下ろすと、左脇に包丁で刺さっていました。そして見上げると、汚く歪んであざ笑う母の顔がありました。母のようでグールのような、白目をむいて、口が裂けんばかりに開いて笑っていました。
せめて……化け物の顔でいてくれよ……
僕は銀色の悪魔を召喚しました。母だったソレを滅ぼすために。振りぬいた悪魔の拳が、母の顔面を粉砕しました。
僕はそのまま、力なく床に膝をつきました。そのままゆっくりと仰向けに倒れ、ボーっと天井を眺めていました。この家に暮らすことはもうない……一緒に暮らす家族もいない……
「ああ……終わったんだな……」
自分の人生が、普通の暮らしがもう続かないことがわかりましたた。
化け物と戦った。
両親を殺した。
銀色の悪魔が殴打したけど、その感触が、両親を殺したときの感触が、何故かこの手に残っている。
僕の心に、しっかりと刻まれている……
「痛い……」
心臓を鷲づかみにされているみたいで、息が出来なくなりましたた。胸を押さえながら、激しい動悸に襲われました。とっても苦しかったけど、大量の出血でもう、身体が動かなくなっていて、悶えることもできませんでした。
薄れ行く意識の中で、セシルさんが駆け寄ってくるのがわかりました。あれ?セシルさんだけじゃないな。何人かの男性が、玄関に駆け込んで来たようです。