第六項 逃走開始
文字数 1,275文字
「隣、いいかな?」
とても穏やかで、優しい笑顔の少年が、僕の隣に腰掛けました。彼はとんでもないVIPなのでしょう。先ほどのリーダー的な男性が黙礼し、彼の指示で離れた席に座りました。
「一度、会いたかったよ。シーブック君」
「えっと……貴方は?」
「ごめんごめん。自己紹介がまだだったね。僕はアザリア。君の名づけ親だよ」
そういって、可愛らしい顔立ち少年が、複雑な大人の笑顔を見せるのです。
「僕の名づけ親で、あの連中のボスなんですか?お若いのに……」
「流石だね。”疑うのではなく、可能性の模索”をしてるんだね。そう。僕はある組織の幹部なんだ。こんな見た目なのにね」
「それが本当だとして、どうして僕にそれを教えるんですか?教えても問題ない、つまり、僕はもうすぐ死ぬんですか?」
「見た目には突っ込まないんだ。まあいいや。心配しないで。殺すつもりも、拘束して拷問するつもりもないから」
「なんというか、僕にとって好都合過ぎますね……なにが狙いですか?あ!聞いちゃだめか」
「ハハハ。君は本当に面白いね。会いに来た甲斐があったよ」
そういって彼は、楽しげに笑ったあと、真顔になりました。
「僕の実験(お遊び)に、協力してくれないかな?」
「貴様!アザリア様を放せ!!」
右腕でアザリアさんをヘッドロック状態、左手は機内食に着いていたナイフを握り、僕は人質を盾にするはいジャッカーになっていました。
「今すぐ飛行機を降ろせ!」
そんなめちゃくちゃなことを要求しながら、アザリアさんと三文芝居を続けるのです。
「刺激するな!お前たちは銃を床に置いて、そのまま伏せていろ!」
アザリアさんはそう指示し、僕と一緒に機内後方に向かいます。そこには出口だけでなく、緊急脱出用の空気ボンベとパラシュートがあるのです。
僕はアザリアさんを人質にとった体裁で、後ずさりしています。
「そろそろ、後ろから部下が飛び掛かる。君は僕を突き飛ばし、後ろの部屋に逃げ込め。鍵さえかけてしまえば、簡単には破られないさ」
そう囁くと、アザリアさんが誰かとアイコンタクトをします。そして直後に、後ろから僕に男が飛びかかりました。僕はアザリアさんを放して、その男の足にナイフを突き立てます。そしてそのまま男の顎を肘打ちして倒しました。すると前方からアザリアさんの部下たちが立ち上がります。その手には拳銃が握られていて……
「おらよ!」
僕は咄嗟にアザリアさんのお尻を前蹴りし、アザリアさんを部下たちのところに突っ込ませました。
「閣下!ご無事ですか?」
アザリアさんを受け止めた部下たちは、僕を追うどころでなくなり、アザリアさんが無事かどうかで騒いでいました。
「僕のことはいい!速く彼を捕まえろ!」
そうアザリアさんが叫ぶと、ハッと気づいて彼らは僕を追いかけます。脱出用の小部屋に逃げ込んだ僕は、扉に内側から鍵をかけて籠城しました。
「やれやれ……お尻を蹴られるなんて、思わなかったよ」
そんな僕の様子を満足げに眺めながら、アザリアさんは微笑んでいたようです。
とても穏やかで、優しい笑顔の少年が、僕の隣に腰掛けました。彼はとんでもないVIPなのでしょう。先ほどのリーダー的な男性が黙礼し、彼の指示で離れた席に座りました。
「一度、会いたかったよ。シーブック君」
「えっと……貴方は?」
「ごめんごめん。自己紹介がまだだったね。僕はアザリア。君の名づけ親だよ」
そういって、可愛らしい顔立ち少年が、複雑な大人の笑顔を見せるのです。
「僕の名づけ親で、あの連中のボスなんですか?お若いのに……」
「流石だね。”疑うのではなく、可能性の模索”をしてるんだね。そう。僕はある組織の幹部なんだ。こんな見た目なのにね」
「それが本当だとして、どうして僕にそれを教えるんですか?教えても問題ない、つまり、僕はもうすぐ死ぬんですか?」
「見た目には突っ込まないんだ。まあいいや。心配しないで。殺すつもりも、拘束して拷問するつもりもないから」
「なんというか、僕にとって好都合過ぎますね……なにが狙いですか?あ!聞いちゃだめか」
「ハハハ。君は本当に面白いね。会いに来た甲斐があったよ」
そういって彼は、楽しげに笑ったあと、真顔になりました。
「僕の実験(お遊び)に、協力してくれないかな?」
「貴様!アザリア様を放せ!!」
右腕でアザリアさんをヘッドロック状態、左手は機内食に着いていたナイフを握り、僕は人質を盾にするはいジャッカーになっていました。
「今すぐ飛行機を降ろせ!」
そんなめちゃくちゃなことを要求しながら、アザリアさんと三文芝居を続けるのです。
「刺激するな!お前たちは銃を床に置いて、そのまま伏せていろ!」
アザリアさんはそう指示し、僕と一緒に機内後方に向かいます。そこには出口だけでなく、緊急脱出用の空気ボンベとパラシュートがあるのです。
僕はアザリアさんを人質にとった体裁で、後ずさりしています。
「そろそろ、後ろから部下が飛び掛かる。君は僕を突き飛ばし、後ろの部屋に逃げ込め。鍵さえかけてしまえば、簡単には破られないさ」
そう囁くと、アザリアさんが誰かとアイコンタクトをします。そして直後に、後ろから僕に男が飛びかかりました。僕はアザリアさんを放して、その男の足にナイフを突き立てます。そしてそのまま男の顎を肘打ちして倒しました。すると前方からアザリアさんの部下たちが立ち上がります。その手には拳銃が握られていて……
「おらよ!」
僕は咄嗟にアザリアさんのお尻を前蹴りし、アザリアさんを部下たちのところに突っ込ませました。
「閣下!ご無事ですか?」
アザリアさんを受け止めた部下たちは、僕を追うどころでなくなり、アザリアさんが無事かどうかで騒いでいました。
「僕のことはいい!速く彼を捕まえろ!」
そうアザリアさんが叫ぶと、ハッと気づいて彼らは僕を追いかけます。脱出用の小部屋に逃げ込んだ僕は、扉に内側から鍵をかけて籠城しました。
「やれやれ……お尻を蹴られるなんて、思わなかったよ」
そんな僕の様子を満足げに眺めながら、アザリアさんは微笑んでいたようです。