第八項 そして、終末へ……
文字数 1,176文字
助け出したリジルをクレナに預け、僕はその場に座り込んでしまいました。激しい戦闘の疲労だけじゃない……リジルを失うかもしれなかったこと、それを知ってか知らずかのフェルトの泣き声が、僕の心臓を鷲掴むように締め付ける。
リジルは必死にフェルトをなだめていた。泣きながら幼い妹を抱きしめる。そんな光景を、僕は涙を浮かべながら眺めていたようです。
「おう、大丈夫か?」
イザークが僕の横に座りました。手には地元のビールをビンで2本持って……
「こうなっちまうんだな……お前の言うとおりだった」
「仕方ないさ……人間には”我”がある。種よりも個を優先してしまう……だから傲慢になって、嫉妬したり、怒ったり……そんでもって、最後には憎むんだ」
「人間くらいだよな。同種で殺し合うだけじゃない、とんでもなく残酷なことができる……それだけなじゃないな。全員面で近寄って、ルールで縛って貧困を産んで、他人を搾取し続ける……」
「怖いよ……俺が守りたいあの子たちは人間で、それを利用したり、殺そうとするのも人間だ……」
「そうだな。だがまあ、今は喜ぼうぜ。お前もガキどもも、クレナも無事だった。裏切り者どもも殲滅できた。戦力は大幅ダウンだけどな」
「そうだな……」
ビールを飲み干して、イザークは立ち上がりました。そんな彼の背中に
「おい、筋肉ゴリラ」「あん?」「ありがとな……助かったよ」
僕は感謝を音にしました。
彼は振り向かず、片手を振って行ってしまいました。最初はよそ者の僕を嫌って、真っ先にスパイと疑っていたイザーク。この土地で初めて出来た喧嘩友達です。そんな彼に、いえ、クレナにすら僕は打ち明けていません。何故、リジルだけ扱いが違うのか。クレナとフェルトは人質で、リジルは連れ去られそうだったのか。
答えは簡単です。リジルは僕と同じ、モルモットなのです。彼はその左目に、水のプラヴァシーを埋め込まれていたのです……
詳細は、いつか外伝でご説明しようと考えています。僕とクレナの急接近や、セシルさんとの関係悪化も含めて。ただ、ちょっとだけ補足説明をしておきますね。アルビジョワで内紛が始まる前、各村に医療機関が整っていないことを理由に、WTOを巻き込んで、クロミズは子供たちで実験を行いました。病気の予防と栄養補助を名目に、定期的に投薬し、検査を行っていました。そのとき、適正があったリジルは首都の病院に入院させられました。入院という名目で、プラヴァシーの移植手術がなされたのです。その後退院し、帰宅して一ヶ月も経たないうちに内紛が勃発し、通院どころではなくなって、現在に至るのです。だからクロミズは、僕だけでなくリジルも追っていたのです。幸いなことに、人体実験が中断していたから、リジルはまだ、烙印で汚れておらず、異能を獲得していませんでした。
リジルは必死にフェルトをなだめていた。泣きながら幼い妹を抱きしめる。そんな光景を、僕は涙を浮かべながら眺めていたようです。
「おう、大丈夫か?」
イザークが僕の横に座りました。手には地元のビールをビンで2本持って……
「こうなっちまうんだな……お前の言うとおりだった」
「仕方ないさ……人間には”我”がある。種よりも個を優先してしまう……だから傲慢になって、嫉妬したり、怒ったり……そんでもって、最後には憎むんだ」
「人間くらいだよな。同種で殺し合うだけじゃない、とんでもなく残酷なことができる……それだけなじゃないな。全員面で近寄って、ルールで縛って貧困を産んで、他人を搾取し続ける……」
「怖いよ……俺が守りたいあの子たちは人間で、それを利用したり、殺そうとするのも人間だ……」
「そうだな。だがまあ、今は喜ぼうぜ。お前もガキどもも、クレナも無事だった。裏切り者どもも殲滅できた。戦力は大幅ダウンだけどな」
「そうだな……」
ビールを飲み干して、イザークは立ち上がりました。そんな彼の背中に
「おい、筋肉ゴリラ」「あん?」「ありがとな……助かったよ」
僕は感謝を音にしました。
彼は振り向かず、片手を振って行ってしまいました。最初はよそ者の僕を嫌って、真っ先にスパイと疑っていたイザーク。この土地で初めて出来た喧嘩友達です。そんな彼に、いえ、クレナにすら僕は打ち明けていません。何故、リジルだけ扱いが違うのか。クレナとフェルトは人質で、リジルは連れ去られそうだったのか。
答えは簡単です。リジルは僕と同じ、モルモットなのです。彼はその左目に、水のプラヴァシーを埋め込まれていたのです……
詳細は、いつか外伝でご説明しようと考えています。僕とクレナの急接近や、セシルさんとの関係悪化も含めて。ただ、ちょっとだけ補足説明をしておきますね。アルビジョワで内紛が始まる前、各村に医療機関が整っていないことを理由に、WTOを巻き込んで、クロミズは子供たちで実験を行いました。病気の予防と栄養補助を名目に、定期的に投薬し、検査を行っていました。そのとき、適正があったリジルは首都の病院に入院させられました。入院という名目で、プラヴァシーの移植手術がなされたのです。その後退院し、帰宅して一ヶ月も経たないうちに内紛が勃発し、通院どころではなくなって、現在に至るのです。だからクロミズは、僕だけでなくリジルも追っていたのです。幸いなことに、人体実験が中断していたから、リジルはまだ、烙印で汚れておらず、異能を獲得していませんでした。