第二項 バルザタールの虐殺
文字数 1,079文字
車は便利だ……本当にそう感じました。よく少年漫画とかで、すごい速さで走る主人公とか宇宙人とか、すごい方々がいると思います。でも、人間の心配機能ではそんな無理はできません。全力で動ける乗って、39秒が限界だと聞いたことがあります。
だけど機械である車は、時速100キロとかで1時間以上走るなんて余裕です。つまり時間をかければ、燃料さえあれば、人体では考えられないくらい長時間動き、びっくりするくらいの遠距離を進むことが出来るのです。運転は疲れますが、それ以上に得られる効果が大きいと、僕は改めて実感していました。
リジルとフェルトは、最初は車酔していました。だから何度か停車して、外の空気を吸っていましたが、今では大分慣れてくれたのか、はたまた疲れきっているからなのか、後部座席で2人寄り添いながらスヤスヤ眠っています。
「もうすぐ、バルザタールが見えてくるはずです」
僕はセシルさんに声をかけました。セシルさんは一応、軍隊で訓練を受けていました。それに若いといっても、リジルたちより大人な年齢です。本来はしっかりして欲しいのですが、今の彼女はこどもたちより憔悴していて、正直扱いが難しくなっています。塞ぎ込んでしまって、ただ助手席にいるだけの存在でした。僕の声が聞こえているはずですが、彼女はなんの反応も示さず、ただ前をじっと見つめていました。
バルザタールまであと数キロというところに差し掛かった時、時刻は17時を少し過ぎていて、薄暗くなり始めていました。薄暗く鳴り始めたのに、目の前の空が赤く燃えていました。
視界に入ったバルザタールは、地獄そのものでした。国連軍による虐殺がなされていたのです。北の国道がトンネルの崩壊で進めなくなり、南側から押し寄せる国連軍から逃げる術がないのです。3台の装甲車とマシンガンやライフルで武装した20名ほどの兵士たちが、民間人に銃弾の雨を降らせていました。逃げ惑うだけで無抵抗な老若男女が、鉛玉に貫かれていました。
僕たちのワゴンが村に差し掛かった時、広場の中央で公開処刑が始まりました。四つん這いにさせた村民の後頭部を、兵士が1人ずつ撃ち抜くのです。
「あいつら、また!」
その光景を見たリジルが、フェルトの頭を抱き抱えて、見させないように伏せていました。おそらく彼は見てしまったのです。自分の両親が同じように殺される現場を。だから怖いのを必死にこらえて、目に涙を浮かべながら妹を守ろうとするのです。
そんなリジルの様子と、残虐な国連軍を目の当たりにしたとき、僕はアクセルを踏んでいました。
だけど機械である車は、時速100キロとかで1時間以上走るなんて余裕です。つまり時間をかければ、燃料さえあれば、人体では考えられないくらい長時間動き、びっくりするくらいの遠距離を進むことが出来るのです。運転は疲れますが、それ以上に得られる効果が大きいと、僕は改めて実感していました。
リジルとフェルトは、最初は車酔していました。だから何度か停車して、外の空気を吸っていましたが、今では大分慣れてくれたのか、はたまた疲れきっているからなのか、後部座席で2人寄り添いながらスヤスヤ眠っています。
「もうすぐ、バルザタールが見えてくるはずです」
僕はセシルさんに声をかけました。セシルさんは一応、軍隊で訓練を受けていました。それに若いといっても、リジルたちより大人な年齢です。本来はしっかりして欲しいのですが、今の彼女はこどもたちより憔悴していて、正直扱いが難しくなっています。塞ぎ込んでしまって、ただ助手席にいるだけの存在でした。僕の声が聞こえているはずですが、彼女はなんの反応も示さず、ただ前をじっと見つめていました。
バルザタールまであと数キロというところに差し掛かった時、時刻は17時を少し過ぎていて、薄暗くなり始めていました。薄暗く鳴り始めたのに、目の前の空が赤く燃えていました。
視界に入ったバルザタールは、地獄そのものでした。国連軍による虐殺がなされていたのです。北の国道がトンネルの崩壊で進めなくなり、南側から押し寄せる国連軍から逃げる術がないのです。3台の装甲車とマシンガンやライフルで武装した20名ほどの兵士たちが、民間人に銃弾の雨を降らせていました。逃げ惑うだけで無抵抗な老若男女が、鉛玉に貫かれていました。
僕たちのワゴンが村に差し掛かった時、広場の中央で公開処刑が始まりました。四つん這いにさせた村民の後頭部を、兵士が1人ずつ撃ち抜くのです。
「あいつら、また!」
その光景を見たリジルが、フェルトの頭を抱き抱えて、見させないように伏せていました。おそらく彼は見てしまったのです。自分の両親が同じように殺される現場を。だから怖いのを必死にこらえて、目に涙を浮かべながら妹を守ろうとするのです。
そんなリジルの様子と、残虐な国連軍を目の当たりにしたとき、僕はアクセルを踏んでいました。