第一項 炎にまかれて

文字数 579文字

 目の前が真っ赤になりました。それは本当に、突然の出来事でした。足元から轟音が響き、衝撃で打ち上げられ、そのまま炎の中に落下ました。急降下するジェットコースター、それが一番近い感覚でしょうか?僕は自分の内臓が、”グンッ!”ってなる感じに、吐き気を催しました。
 何メートル打ち上げられて、そして落下したのか、僕にはよくわかりません。ほんの数秒の出来事だったと想います。でも、まるで走馬灯を見ているかのように(実際に見たことはありませんが)、全てがスローモーションに感じられました。たくさんの人が同じように吹き飛んでいて、たくさんの人たちが燃えていました。熱くて、痛くて、気持ちが悪くって……でも、すぐに何も感じなくなりました。落下して、頭と背中を打ち付けたのでしょう。その衝撃で僕は、意識を失ったのです。
 意識があって焼け死んだり、苦しんで窒息するくらいなら、このまま、眠ったまま死んだほうが楽なのかもしれません。ぼーっとする意識が途絶えようとしたとき、ふっと、陽二のことが気になりました。
「あいつ、大丈夫かな……そういえば、明日の朝、待ち合わせしてたんだっけ……予習……しないと」

 そのまま僕は、深い眠りに落ちていきました。暗い海に沈むようなな感じで、夢の中に降りていきました。暗闇の中にひとり佇む、ローブ姿の男性が僕の身体を受け止めてくれました。
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登場人物紹介

主人公の少年。

他のシリーズでは「蓮野久季(はすのひさき)(21?)」と名乗っていた。

本名は明かされないが、2章以降では”シーブック”と名づけられる。

セシル・ローラン(17)

”恋人ごっこ”に登場し、蓮の辛い過去を暴いて苦しめた女性。

本編では、蓮と出会い、惹かれ、壊れる様子が語られる。

閉じた輪廻が用意した、蓮を苦しめるための女性。

リジル(14)

アルビジョワ共和国で戦火に見舞われ、両親を失った少年。

妹のフェルトを守るために必死で生きている。蓮と出会い保護された。

水のプラヴァシーを継承し、「恋人ごっこ、王様ごっこ」では”耐え難き悲しみの志士(サリエル)”となって戦った。

フェルト(5)

リジルの妹。戦争で両親を亡くし、また栄養失調から発育が遅れている。

リジルと蓮に無邪気に甘える姿が、蓮の中に眠る前世の記憶(前世の娘)を呼び起こす。

この幼女の存在が、リジルを強くし、蓮に優しさを取り戻させる。

クレナ・ティアス(24)

アルビジョワで蓮が出会う、運命の女性。

レジスタンスの参謀として活躍する、聡明な女性。

アルビジョワ解放戦争の終盤、非業の死を遂げ、永遠に消えない蓮の瑕となる。

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