第三項 セシルさん
文字数 1,625文字
金髪のきれいな女性が、僕の顔を覗き込んでいました。
「えっと、ここは?」
「ここは聖路婦(せいろふ)病院よ。あなた二週間も意識不明だったんだから」
「二週間?今日は何日ですか?家に連絡しないと」
僕は質問しながら体を起こそうとしました。すると
「ッ!いてて……」
全身を貫く激痛で、びっくりしてそのままベッドに倒れました。とても起き上がれないほどでした。
「ほら、無理しないで。今日は8月31日よ」
その女性は僕を労わりながら答えてくれました。
「実はお家に電話したけどつながらないの」
彼女は僕の携帯を取り出し
「あなたの持ち物、ほとんど燃えちゃってたみたい。でも、携帯電話は無事だったから……悪いと思ったけど見せてもらったの……ごめんなさい」
申し訳なさそうに謝ってくれました。
「いえ。そんな……あの、家族が心配してるだろうし、入院費のこととかあるから、僕からも連絡していいですか?」
「ええ、どうぞ」
手渡された携帯の画面を見ると、確かに8月31日で、8時22分と表示されていた。充電してくれていたみたいで、バッテリーはほぼ100%みたいだ。
自宅に電話をかけてみると、3コール目で母親が出ました。
「あ、もしもし俺だけど。は、詐欺じゃねーよ。まったく……うん、今病院にいて、それで……」
ツー、ツー、ツー……
話の途中で何故か電話が切れてしまいました。その後何度かけ直しても、話し中で繋がりません。
「すいません。なんか電話切られちゃって……家に直接行きたいんですけど、いいですか?」
「いいわよ。ただ、先に朝ごはん食べましょ」
そう言って彼女は、さっき看護士さんが運んでくれた朝食を持ってきてくれました。そしておもむろに
「はい。あ~ん」
スプーンで食べさせてくれようとしました。
みなさん、想像してみてください。彼女いない歴18年、最近は受験勉強しかしていない少年が、突然であった金髪美女に、”はい。あ~ん”ってされたら……
ヒトによっては、ビックリして拒否しちゃうかもですよね。でも僕は、キレイな女性がそんな可愛らしい仕草をするもんだから、嬉しくなってそのままいただいちゃいました。たぶん、どこからどう見ても、僕の目はハートマークになっていたでしょう。なんていうか、自分が今幸せなんだって、とんでもない錯覚をしてました。
まあ、若気の至りと言うか、女性に免疫のない少年だから、仕方ないですよね?
「じゃあ一緒にいきましょ。車出してあげるからついて来て」
最高の朝ごはんを頂戴して、もったいないけど歯磨きして、僕は着替えを完了しました。その間に彼女はお医者さんや看護士さんと調整したらしく、僕は外出できることになっていました。
「この書類に名前を記入してもらえるかしら。外出申請よ」
そう言われて僕は、申請書とペンを受け取りました。名前と携帯番号を記入していると
「左利きなんだぁ~」
彼女が楽しそうに声を上げました。
「ええ、小さい頃はぎっちょ、ぎっちょってよくいじめられました。でも、箸とペンだけですよ。ボール投げたりとかは…えーと右投げ右打ちです」
僕は苦笑いしながら答えます。
「そうなんだ~」
彼女の周りに左利きがいないのか、とても面白そうに見ていました。
「そういえば、まだお名前を聞いてなくて」
申請書とペンを返しながら、僕は今更なことを尋ねました。
「ああ、ごめんなさい。私はセシル。セシル・ローランです」
「セシルさん。お礼がまだでした。ありがとうございます。日本語上手ですね」
「ありがとう。あ、車が来たわ」
病院の駐車場から、高そうな黒い車が走ってくる。前に運転手、後部座席の左にセシルさん、その隣の右側に僕が座る。どうやらセシルさんは病院関係者のお嬢様らしい。後に分かるんだけど、今17歳で1歳年下とのこと。外人さんは大人っぽく見えるなぁと関心しつつ、僕は彼女の美しい横顔に見入っていました。
「えっと、ここは?」
「ここは聖路婦(せいろふ)病院よ。あなた二週間も意識不明だったんだから」
「二週間?今日は何日ですか?家に連絡しないと」
僕は質問しながら体を起こそうとしました。すると
「ッ!いてて……」
全身を貫く激痛で、びっくりしてそのままベッドに倒れました。とても起き上がれないほどでした。
「ほら、無理しないで。今日は8月31日よ」
その女性は僕を労わりながら答えてくれました。
「実はお家に電話したけどつながらないの」
彼女は僕の携帯を取り出し
「あなたの持ち物、ほとんど燃えちゃってたみたい。でも、携帯電話は無事だったから……悪いと思ったけど見せてもらったの……ごめんなさい」
申し訳なさそうに謝ってくれました。
「いえ。そんな……あの、家族が心配してるだろうし、入院費のこととかあるから、僕からも連絡していいですか?」
「ええ、どうぞ」
手渡された携帯の画面を見ると、確かに8月31日で、8時22分と表示されていた。充電してくれていたみたいで、バッテリーはほぼ100%みたいだ。
自宅に電話をかけてみると、3コール目で母親が出ました。
「あ、もしもし俺だけど。は、詐欺じゃねーよ。まったく……うん、今病院にいて、それで……」
ツー、ツー、ツー……
話の途中で何故か電話が切れてしまいました。その後何度かけ直しても、話し中で繋がりません。
「すいません。なんか電話切られちゃって……家に直接行きたいんですけど、いいですか?」
「いいわよ。ただ、先に朝ごはん食べましょ」
そう言って彼女は、さっき看護士さんが運んでくれた朝食を持ってきてくれました。そしておもむろに
「はい。あ~ん」
スプーンで食べさせてくれようとしました。
みなさん、想像してみてください。彼女いない歴18年、最近は受験勉強しかしていない少年が、突然であった金髪美女に、”はい。あ~ん”ってされたら……
ヒトによっては、ビックリして拒否しちゃうかもですよね。でも僕は、キレイな女性がそんな可愛らしい仕草をするもんだから、嬉しくなってそのままいただいちゃいました。たぶん、どこからどう見ても、僕の目はハートマークになっていたでしょう。なんていうか、自分が今幸せなんだって、とんでもない錯覚をしてました。
まあ、若気の至りと言うか、女性に免疫のない少年だから、仕方ないですよね?
「じゃあ一緒にいきましょ。車出してあげるからついて来て」
最高の朝ごはんを頂戴して、もったいないけど歯磨きして、僕は着替えを完了しました。その間に彼女はお医者さんや看護士さんと調整したらしく、僕は外出できることになっていました。
「この書類に名前を記入してもらえるかしら。外出申請よ」
そう言われて僕は、申請書とペンを受け取りました。名前と携帯番号を記入していると
「左利きなんだぁ~」
彼女が楽しそうに声を上げました。
「ええ、小さい頃はぎっちょ、ぎっちょってよくいじめられました。でも、箸とペンだけですよ。ボール投げたりとかは…えーと右投げ右打ちです」
僕は苦笑いしながら答えます。
「そうなんだ~」
彼女の周りに左利きがいないのか、とても面白そうに見ていました。
「そういえば、まだお名前を聞いてなくて」
申請書とペンを返しながら、僕は今更なことを尋ねました。
「ああ、ごめんなさい。私はセシル。セシル・ローランです」
「セシルさん。お礼がまだでした。ありがとうございます。日本語上手ですね」
「ありがとう。あ、車が来たわ」
病院の駐車場から、高そうな黒い車が走ってくる。前に運転手、後部座席の左にセシルさん、その隣の右側に僕が座る。どうやらセシルさんは病院関係者のお嬢様らしい。後に分かるんだけど、今17歳で1歳年下とのこと。外人さんは大人っぽく見えるなぁと関心しつつ、僕は彼女の美しい横顔に見入っていました。