冬島へ
文字数 2,008文字
冬島から返事がきたのは、私が手紙を書いてからすぐだった。
冬島の白神官ルーシャス・バートラムの名前で書かれた手紙には、訪問するのに都合のいい日時が書いてあった。
指定された日にこちらが都合をあわせる。
冬島には、私とコウとで行くことにした。
一番大事なのは、コウの説明だからだ。
それをコウに伝えると、彼はまた己の使命に頬を紅潮させた。
冬島へいくために、私はいまコウと季主の道を歩いている。
「コウ。このまえ私に話したことのすべてを、冬主ネイスクレファとルーシャス白神官に伝えるんだ。そのあとに、ネイスクレファの意見を聞いてみる」
「はい。うまく説明できるよう、努力します」
季主の道をあるく彼は、緊張に身を固くしていた。
それが歩き方にもでていて。
「ずいぶん緊張しているね。手足が左右一緒に出ているよ」
「あ、はい! すみません」
「あやまる必要はないのだけどね」
季主の道を先に歩く私は、苦笑して彼をみる。
彼はやはり緊張から、資料をもつ手がわずかに震えていた。
「コウ……」
「はい。なんでしょうか」
「いや、なんでもない」
彼の手の震えが気になったが、見なかったことにしてまた先をあるく。
私もまだ、厳密にいえばこの話を認めてはいない。だから、私とて彼に納得のいく説明と計画内容を説明してもらえなければ、この話はなかったことにするだろう。
ここは、彼の正念場なのだ。
「ついたよ」
「え、もう冬島についたんですか?」
「ああ。季主の道を使うのは裏技だけど、早くていい」
私は季主の道にある白い扉をあけて、冬神殿の中庭にある祠から神殿内へと入った。
ネイスクレファとルーシャス白神官を訪問し、手土産を渡すと、彼らは私が「話がある」と手紙で伝えたからか、冬主の執務室へと通してくれた。
そこには四人がけの大きな机があり、話ができるようになっている。
コウは頬を紅潮させ、溌剌と声をあげた。
「はじめまして。私はコウ・サトーといいます。今日はお時間をつくってくださり、ありがとうございます」
挨拶をすると、ネイスクレファに勢いよく頭をさげた。
「このコウ博士の言うことを、少しのあいだ聞いていてくれないかな」
コウの言葉のあとにそう言葉を続けて、ネイスクレファの意見も聞かせて欲しい、と彼女に頼んだ。ネイスクレファはいぶかしげに「わかった」と頷いた。
手紙で「話をきいてほしい」と言って冬島までおしかけたのだから、ネイスクレファとしても、普通の話ではないと思ったのだろう。
ネイスクレファの隣にいるルーシャス白神官にも、よく聞いて欲しいと念を押して、私はコウに説明をするように促した。
コウは、水を得た魚のように、とうとうと話し出す。
説得させるために力強く、演説するように説明していった。
すべての説明がおわると、私はネイスクレファに意見を求めた。
「さて、話は終わりだけど……ネイスクレファはどう思った? ちなみに私の意見を言うと、正直困惑している。確かに便利だけど、作って支障のないものなのか。だから、何よりも先にネイスクレファに相談にきた。これは私と君の力が動力になっているものだしね。そして、リアスさまにも相談しに行くのがいいと思っている」
彼女は渋い顔をして、ぽつりと言った。
「……もともと、この冬島は、寒い場所に住む生きもの為の浮島じゃ」
「夏島もね。暑い場所の生物のための浮島だよ。だから私もとても考えた。なによりもそんな大きな力を人間がもってもいいものか、ということも考えた。貴石の保管場所もきちんとしないと、別の目的で使われることもあるかもしれない、ともね」
しばらく彼女は考えているようだった。そして。
「あたしも、リアスさまに相談しに行くのがいいと思う」
彼女も、私と同じ意見を言ってきた。
私と同じことを思い、同じ心配をしているのだろう。
とうぜんの結果だと言える。
話し合った結果、私たちは四人で主島にある大神殿へと行くことになった。
そこにいる創造主リアスさまに会うために。
次の日、コウはネイスクレファとルーシャス白神官の前で、実際に夏主 の力のこもった貴石 を装置にはめこみ、温風を作りだしてみせた。
きのう話をした内容が、現実味をおびて冬島の二人へと伝わっていく。
ネイスクレファは、自分の力からは冷風が生み出せるとコウに説明されると、自分のダイアモンドのネックレスを外し、そこに力をこめてコウに渡した。
コウのつくった装置は、ネイスクレファの力を取り込んで、冷風をふき出す。
「なるほどな。これの大規模なものを首都につくろうというわけか」
「はい」
コウは自信のある目で冬島の二人を見た。
実際に、コウにはこの計画の先までが、見通せているように思える。
頼りになる目だった。
そして、彼は冬主のちからのこもったダイアモンドが夏島には必要だと説得し、彼女からそのダイアモンドをもらい、嬉しそうに懐へとしまった。
冬島の白神官ルーシャス・バートラムの名前で書かれた手紙には、訪問するのに都合のいい日時が書いてあった。
指定された日にこちらが都合をあわせる。
冬島には、私とコウとで行くことにした。
一番大事なのは、コウの説明だからだ。
それをコウに伝えると、彼はまた己の使命に頬を紅潮させた。
冬島へいくために、私はいまコウと季主の道を歩いている。
「コウ。このまえ私に話したことのすべてを、冬主ネイスクレファとルーシャス白神官に伝えるんだ。そのあとに、ネイスクレファの意見を聞いてみる」
「はい。うまく説明できるよう、努力します」
季主の道をあるく彼は、緊張に身を固くしていた。
それが歩き方にもでていて。
「ずいぶん緊張しているね。手足が左右一緒に出ているよ」
「あ、はい! すみません」
「あやまる必要はないのだけどね」
季主の道を先に歩く私は、苦笑して彼をみる。
彼はやはり緊張から、資料をもつ手がわずかに震えていた。
「コウ……」
「はい。なんでしょうか」
「いや、なんでもない」
彼の手の震えが気になったが、見なかったことにしてまた先をあるく。
私もまだ、厳密にいえばこの話を認めてはいない。だから、私とて彼に納得のいく説明と計画内容を説明してもらえなければ、この話はなかったことにするだろう。
ここは、彼の正念場なのだ。
「ついたよ」
「え、もう冬島についたんですか?」
「ああ。季主の道を使うのは裏技だけど、早くていい」
私は季主の道にある白い扉をあけて、冬神殿の中庭にある祠から神殿内へと入った。
ネイスクレファとルーシャス白神官を訪問し、手土産を渡すと、彼らは私が「話がある」と手紙で伝えたからか、冬主の執務室へと通してくれた。
そこには四人がけの大きな机があり、話ができるようになっている。
コウは頬を紅潮させ、溌剌と声をあげた。
「はじめまして。私はコウ・サトーといいます。今日はお時間をつくってくださり、ありがとうございます」
挨拶をすると、ネイスクレファに勢いよく頭をさげた。
「このコウ博士の言うことを、少しのあいだ聞いていてくれないかな」
コウの言葉のあとにそう言葉を続けて、ネイスクレファの意見も聞かせて欲しい、と彼女に頼んだ。ネイスクレファはいぶかしげに「わかった」と頷いた。
手紙で「話をきいてほしい」と言って冬島までおしかけたのだから、ネイスクレファとしても、普通の話ではないと思ったのだろう。
ネイスクレファの隣にいるルーシャス白神官にも、よく聞いて欲しいと念を押して、私はコウに説明をするように促した。
コウは、水を得た魚のように、とうとうと話し出す。
説得させるために力強く、演説するように説明していった。
すべての説明がおわると、私はネイスクレファに意見を求めた。
「さて、話は終わりだけど……ネイスクレファはどう思った? ちなみに私の意見を言うと、正直困惑している。確かに便利だけど、作って支障のないものなのか。だから、何よりも先にネイスクレファに相談にきた。これは私と君の力が動力になっているものだしね。そして、リアスさまにも相談しに行くのがいいと思っている」
彼女は渋い顔をして、ぽつりと言った。
「……もともと、この冬島は、寒い場所に住む生きもの為の浮島じゃ」
「夏島もね。暑い場所の生物のための浮島だよ。だから私もとても考えた。なによりもそんな大きな力を人間がもってもいいものか、ということも考えた。貴石の保管場所もきちんとしないと、別の目的で使われることもあるかもしれない、ともね」
しばらく彼女は考えているようだった。そして。
「あたしも、リアスさまに相談しに行くのがいいと思う」
彼女も、私と同じ意見を言ってきた。
私と同じことを思い、同じ心配をしているのだろう。
とうぜんの結果だと言える。
話し合った結果、私たちは四人で主島にある大神殿へと行くことになった。
そこにいる創造主リアスさまに会うために。
次の日、コウはネイスクレファとルーシャス白神官の前で、実際に
きのう話をした内容が、現実味をおびて冬島の二人へと伝わっていく。
ネイスクレファは、自分の力からは冷風が生み出せるとコウに説明されると、自分のダイアモンドのネックレスを外し、そこに力をこめてコウに渡した。
コウのつくった装置は、ネイスクレファの力を取り込んで、冷風をふき出す。
「なるほどな。これの大規模なものを首都につくろうというわけか」
「はい」
コウは自信のある目で冬島の二人を見た。
実際に、コウにはこの計画の先までが、見通せているように思える。
頼りになる目だった。
そして、彼は冬主のちからのこもったダイアモンドが夏島には必要だと説得し、彼女からそのダイアモンドをもらい、嬉しそうに懐へとしまった。