最終話

文字数 938文字

 季主たち四人は、大神殿の廊下を抜けて、創造主の聖殿がある中庭へとぬけた。
 その中にたつ聖殿の外観は、白い列柱がならび、窓にはステンドグラスがはまっていた。
 門番は、四人の季主たちの顔を見ると、驚いて門をあける。
 すんなりと聖殿の中に入った四人は、そこの奥の部屋(私室)にいる創造主リアスに声をかける。
 
「リアスさま。今日は私たちの世界をまた、確かめるためにここにきました」

 レイファルナスが言うと、ルファが付け足す。

「偶然、四人ともが同じことを考えていたようです」

 慈愛のこもった笑顔を浮かべた。

「アレイゼスとネイスクレファもか」

 リアスが言うと、二人もこくりとうなずく。

 リアスは、四人が一緒になるなんて初めてだな、と思案顔になりながらも、四人を奥の部屋へと通す。

 そこには、四台のベッドがあった。
 それは、季主たち一人ひとりに割り当てられた、専用のベッドだ。

「ではリアスさま。私たちは、自分の浮島を見てきます。身体をよろしくお願いします」

 レイファルナスはそう言ってベッドへと横になる。
 それに続いて、ほかの三人もおのおののベッドへと横になった。

 四人は目をつむる。
 
 

 大神殿から、四色の光が矢のように四方へと飛んでいった。

 赤、青、緑、銀色の光は、主島から遠く離れた自分の浮島へと向かう。

 赤い光が、あたたかい大気となって春島を覆う。
 青い光は、海を駆け巡る波動になり。
 緑の光は、大地を撫でる風になる。
 銀色の光は、冷たい木枯らしになって雪の上をすべる。

 四人の季主たちは、体から抜け出した精神体のみで、己の浮島の様子をみていく。

 ルファは、春島が変わらず緑に満ちている様子を確認した。虫も鳥も動物も、つつがなく暮らしている。
 レイファルナスは、夏島の大きく青い海と、緑濃い土地に暮らすものが、賑やかに暮らしていることを確認した。
 アレイゼスは、秋島の乾いた大地と山々で暮らすものたちを、風になって垣間見た。
 ネイスクレファは、冬島の冷たい空気の中でも、力強く生きる生物を微笑ましく見守る。

 四つの光は、強く、淡く光りながら、四つの浮島を撫でて行った。

 そして、四つの者は確認した。

 ――生物たちは、昔も今も変わらずに、この世界で力強く息づいているということを




 完
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

ゼス (秋主) 


秋島の季節を守る季主。守り神のような存在。ゼスは愛称でアレイゼスという。

頑健な体つきにおおらかな性格。

ミローズ


小さなころから絵を描くのが好きで、絵描きになった女性。

多くの耳飾りや変わった髪型という奇抜なファッションをしている。


ネイスクレファ(冬主)


冬島の季主。長く生きてきたので、しゃべり方が老婆のよう。


ルーシャス白神官


冬島の筆頭神官。冬島の人間達の長。

三十代という若さで筆頭神官になった、少し変わった男。

ルファ(春主)


春島の季主。

女性体の体を持っているせいか、季主にしては女性的なものの考え方をする。

レイファルナス(夏主)


夏島の季主。人間に肩入れしやすい性格。

男性体の体をもっていて、とても美しい。

コウ・サトー (博士)


夏島出身の天才的研究者。

彼の発案から、この世界のしくみが変わる。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み