カマキリの女(ひと)

文字数 997文字

 中学校に入って間もない明夫は、通学路にある公園でよく読書をしている一人の女に恋をした。
 その女は二十歳前後の、長い黒髪が美しい女性だった。夏場の薄着時は白く若々しい肌が夏の日差しに照らされ美しく輝き、長い脚と豊かな胸のふくらみや腰回りが強調されて、女を求め始める時期に差し掛かった明夫の気持ちを強く刺激した。彼は通学時に公園の前を通り、読書をしたり身体を屈伸させている彼女を目に焼き付けていたが、次第に彼女の事を知りたくなり、秋口に思い切って彼女に声を掛けた。
「あの」
 明夫に声を掛けられた女は驚く様子も見せず、余裕を持った感じで明夫を見た。
「ああ、あなたこの公園の前を通学路にしている中学生ね。何か用?」
 年上の女性特有の余裕と自信に満ちた言葉で返されると、明夫はそこで言葉に詰まった。すると女は小さく鼻で笑って、明夫に助け舟を出すようにこう囁いた。
「私の事が気になった?別にいいわよ」
 極端かつ的確な表現で自分の意図を読まれた明夫は、心臓が凍り付きそうな感覚を覚えた。
「別に嫌な気持ちはしないわ。嬉しい位よ」
 女の話す言葉に明夫は呆然としていたが、その気持ちを整えるようにして彼の手を女が握った。
「私もあなたを欲していたの。こっちに来て」
 そう囁いて女は人気の無い場所に明夫を連れ込んだ。そして掴んだ手を自分の肉体に這わせて、明夫を興奮させた。
「私の事が欲しかったんでしょう?好きにしていいのよ」
 女は明夫に自らを好きにさせた。その素肌を触らせ、豊かな乳房をさらけ出して、弄ばせて貪らせた。そして長い手足で彼を絡み取り、自らの性器に明夫の性器を導かせた。
 明夫がすべてを投げ出し、女の中で何度も射精してぐったりすると、彼は女の胸の中で果てた。女は明夫の後頭部を優しく撫でながら、小さく漏らした。
「ありがとう。これで多くの子供が産めるわ」
 その言葉を聞いた瞬間、明夫は驚いて声を上げそうになったが、それよりも早く女の爪が彼の背中に突き刺さり、彼の声は突然の痛みに消えてしまった。
「私ね。実は雌のカマキリなの。自分の事を好きになってくれる、交尾の相手になる雄を探していたの。元気な子を産むから、あなたはその栄養になってね」
 女はそう優しく微笑んだ後、明夫の喉元に食らいついた。明夫は悲鳴を上げる事も出来ずに、頭から女に食われてしまった。
                         (了)
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み