頭上のなにか
文字数 804文字
頭の上を何かが飛んでいる気がする。
意識を集中させると、それは蚊や蝿と言った独特の羽音がする虫ではなく、もっと大きくて高い空を飛んでいる物だというのが分かる。大きさは最低でも上下左右の大きさが五メートル以上あり、六〇〇メートルくらいの高さを飛んでいる物だ。その正体が鳥なのか飛行機かドローンなのか、あるいは宇宙人に由来する飛行物体なのか。その正体は判らないが、僕の上を何かが飛んでいるのだ。
遠くの頭上に何かが飛んでいる感覚を意識しながら僕は目覚めて、朝食を食べて仕事場に向かった。通勤途中、爽やかに晴れた冬の青空を見上げたが、そこには雲一つ浮かんでいなかった。
だが何もないことを自覚しても、頭の上から何かが飛んでいる感覚は消えなかった。仕事で建物の中に入っていても、建物の上、天井の向こう側に何かが飛んでいるという感覚が常にあった。仕事が終るたびに空を見上げるのだが、あるのは淡い青色の寒空だけで、何も見えなかった。
もしかしたら疫病神が憑いているのかもしれない。そう思った僕は有名な神社を訪れて、他の人達と一緒に厄払いを受けた。受けた当日は気分が優れたが、次の日になると元に戻ってしまった。頭上に感じる何かが飛んでいる感覚の正体は疫病神ではない事は判ったが、解決方法が見つかった訳では無かった。
それからも僕は何かが飛んでいる感覚に悩まされ続けた。仕事をしても風呂に入っても、彼女と食事をしてその後一緒に寝床に入っても、自分の上を何かが飛んでいるという感覚が消えなかった。いずれこの感覚にもなれるだろうかと楽観的になってみるのだが、そうはいかないらしく、意識するたびにその感覚が強くなってくる。どうやら僕は頭上を飛んでいる何かを強く意識する事で、その何かを引き寄せている様だった。
やがて頭上の何かは僕の元に降りてきて、何かをもたらしてしてくれるだろう。それが災厄なのか幸福なのかは、判らない。
(了)
意識を集中させると、それは蚊や蝿と言った独特の羽音がする虫ではなく、もっと大きくて高い空を飛んでいる物だというのが分かる。大きさは最低でも上下左右の大きさが五メートル以上あり、六〇〇メートルくらいの高さを飛んでいる物だ。その正体が鳥なのか飛行機かドローンなのか、あるいは宇宙人に由来する飛行物体なのか。その正体は判らないが、僕の上を何かが飛んでいるのだ。
遠くの頭上に何かが飛んでいる感覚を意識しながら僕は目覚めて、朝食を食べて仕事場に向かった。通勤途中、爽やかに晴れた冬の青空を見上げたが、そこには雲一つ浮かんでいなかった。
だが何もないことを自覚しても、頭の上から何かが飛んでいる感覚は消えなかった。仕事で建物の中に入っていても、建物の上、天井の向こう側に何かが飛んでいるという感覚が常にあった。仕事が終るたびに空を見上げるのだが、あるのは淡い青色の寒空だけで、何も見えなかった。
もしかしたら疫病神が憑いているのかもしれない。そう思った僕は有名な神社を訪れて、他の人達と一緒に厄払いを受けた。受けた当日は気分が優れたが、次の日になると元に戻ってしまった。頭上に感じる何かが飛んでいる感覚の正体は疫病神ではない事は判ったが、解決方法が見つかった訳では無かった。
それからも僕は何かが飛んでいる感覚に悩まされ続けた。仕事をしても風呂に入っても、彼女と食事をしてその後一緒に寝床に入っても、自分の上を何かが飛んでいるという感覚が消えなかった。いずれこの感覚にもなれるだろうかと楽観的になってみるのだが、そうはいかないらしく、意識するたびにその感覚が強くなってくる。どうやら僕は頭上を飛んでいる何かを強く意識する事で、その何かを引き寄せている様だった。
やがて頭上の何かは僕の元に降りてきて、何かをもたらしてしてくれるだろう。それが災厄なのか幸福なのかは、判らない。
(了)