【漆ノ肆】
文字数 1,101文字
蒼太はゆうの家の前に着いた。呼んでみる……だれも返事をしない。呼び鈴は壊れているのか音はせず、すかすかと空振りしている。
『今日、お家に行けば会えると思いますよ』
居ないじゃんか。帰ろうと思って引き戸の前から立ち去ろうとして振り向いたしゅんかん。玄関の戸が、ほんの少し空いているのが見えた。
あれ。居るのかな……蒼太は、意を決した。
(父さんや母さんにしかられたって構わない。俺は……ゆうに会いたいんだ……)
からから、と、そーっと引き戸を開けた。そして呼んでみる。
「いるよ」
まさか、返事が帰ってくるとは思ってなかったから、心臓が爆発しそうになった。
「えっ、いんのっ? どこ?」
「二階の……僕の部屋」
目の前には階段がある。たしか電気はこの辺に……あったあった、ぱちり。けれど、電気が止まってるのか停電なのか、電気はつかず階段は暗いまま。でも、上の部屋は明るい。彼女の部屋はたしか、お日様がよく差す部屋だった。
いまいく、そういって蒼太はその子の部屋のふすまを開けた。
そこには、ずっとずっと好きだった女の子が、青いパジャマで座っていた。
「ゆう! 何してたんだよ、心配したよ」
ごめんね。なんだか悲しそうに、そう言って笑った。
床に付くくらい長い髪。クセのあるブロンドヘアは、お人形か人魚みたいだった。夕日の光だけの部屋でもわかる青い瞳。この瞳が、何より好きだった。蒼太はゆうの前に座った。
「なあ。悩んでること、あるなら言ってみ? 俺、そうだんのっからさ」
「悩み?」
「たとえば……その……髪の毛のこととかさ。翔かなんかに言われたんだろ、きっと。あいつデリカシー無さすぎだからさ。俺が」
「今日はね。君を待ってたんだ」
蒼太の話を遮って、ゆうは言った。蒼太は思わず聞き返すと、信じられないことを言った。
「僕、さ。ずっと、ずっと前から蒼太のこと、好きで」
そう言うと、ゆうはぷちぷちとパジャマのボタンを外した。……下には何も着てなかった。
蒼太は何が起きているのかわからない。
「お嫁さんに、してくれるんでしょ? いいよ、触って? ……お嫁さんに、して?」
大好きなゆうの、膨らみかけた胸を見て、蒼太は、身震いした。大好きな女の子が、目の前に。
そして、手を伸ばした。
とても、美味しそうだった。
……
『いいよ、愛しいきみ。おおかみはきみの虜だ。あとはその拳銃で脳髄を飛ばすんだ』
ゆうは、半裸のまま右手に隠したコルトを、ヨダレを垂らすおおかみの喉に突きつけた。そして、人差し指をトリガーに掛けた、その時。
「……其ノ手ハ 食ワナイゾ……」
びくん、おおかみが固まる。ベルが脳内で叫んだ。
『まずい、オリジンだ!』
『今日、お家に行けば会えると思いますよ』
居ないじゃんか。帰ろうと思って引き戸の前から立ち去ろうとして振り向いたしゅんかん。玄関の戸が、ほんの少し空いているのが見えた。
あれ。居るのかな……蒼太は、意を決した。
(父さんや母さんにしかられたって構わない。俺は……ゆうに会いたいんだ……)
からから、と、そーっと引き戸を開けた。そして呼んでみる。
「いるよ」
まさか、返事が帰ってくるとは思ってなかったから、心臓が爆発しそうになった。
「えっ、いんのっ? どこ?」
「二階の……僕の部屋」
目の前には階段がある。たしか電気はこの辺に……あったあった、ぱちり。けれど、電気が止まってるのか停電なのか、電気はつかず階段は暗いまま。でも、上の部屋は明るい。彼女の部屋はたしか、お日様がよく差す部屋だった。
いまいく、そういって蒼太はその子の部屋のふすまを開けた。
そこには、ずっとずっと好きだった女の子が、青いパジャマで座っていた。
「ゆう! 何してたんだよ、心配したよ」
ごめんね。なんだか悲しそうに、そう言って笑った。
床に付くくらい長い髪。クセのあるブロンドヘアは、お人形か人魚みたいだった。夕日の光だけの部屋でもわかる青い瞳。この瞳が、何より好きだった。蒼太はゆうの前に座った。
「なあ。悩んでること、あるなら言ってみ? 俺、そうだんのっからさ」
「悩み?」
「たとえば……その……髪の毛のこととかさ。翔かなんかに言われたんだろ、きっと。あいつデリカシー無さすぎだからさ。俺が」
「今日はね。君を待ってたんだ」
蒼太の話を遮って、ゆうは言った。蒼太は思わず聞き返すと、信じられないことを言った。
「僕、さ。ずっと、ずっと前から蒼太のこと、好きで」
そう言うと、ゆうはぷちぷちとパジャマのボタンを外した。……下には何も着てなかった。
蒼太は何が起きているのかわからない。
「お嫁さんに、してくれるんでしょ? いいよ、触って? ……お嫁さんに、して?」
大好きなゆうの、膨らみかけた胸を見て、蒼太は、身震いした。大好きな女の子が、目の前に。
そして、手を伸ばした。
とても、美味しそうだった。
……
『いいよ、愛しいきみ。おおかみはきみの虜だ。あとはその拳銃で脳髄を飛ばすんだ』
ゆうは、半裸のまま右手に隠したコルトを、ヨダレを垂らすおおかみの喉に突きつけた。そして、人差し指をトリガーに掛けた、その時。
「……其ノ手ハ 食ワナイゾ……」
びくん、おおかみが固まる。ベルが脳内で叫んだ。
『まずい、オリジンだ!』