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文字数 747文字
紅ちゃんと縁を切った翌日、僕は風邪をひいた。
ずぶ濡れで帰ってきた僕に、母さんは何も聞かなかった。僕はすぐにシャワーを浴びてから部屋へと戻り、倒れるように寝た。
その時点で、僕の体調には異変があった。呼吸をすると鼻が妙に熱を帯びる。頭が痛くて寒気がする。もう体も心も、使い物にはならなくなっていた。
「今日は無理ね」
体温計の数値を見ながら、母さんはポツリと呟いた。僕のおでこには冷却ジェルシートを貼られていた。すっかり子どもである。
「薬、貰ってきといてあげるから。ゆっくり寝てなさい」
「いいよ。自分で行くから」
「無理よ。全く、そうやって無理をしようとするところがまだまだ子どもなんだから。自分の体のこと、もっとちゃんと見つめられるようにならないとね」
唯奈に対し、僕は「背伸びをしている子ども」なんて表現を使うけれど、僕も全然変わりはなかった。やっぱり、まだまだ子どもだ。
僕は生まれつき体が弱く、頻繁に熱を出して寝込んでしまっていた。
僕は本当に弱い人間だ。体も、心も。
「ハジメちゃんにはもっと強くなってもらわないと困るんだからね。これからのためにも」
僕は母さんが言ったことが、将来へ向けての総合的なことなのか、具体的に何かを示しているのかよくわからなかった。僕は目だけで返事をする。
「じゃ、ちゃんと寝てなさいね」
そう言って母さんは部屋を出ていった。僕は言われたとおり、大人しく目を瞑った。
今日は少し晴れ間も見えるほど天気は回復しているようで、雨の音も聞こえない。ただ僕の頭の中は、工場の中みたいに音を出して動き続けている。
その動きにまとまりがなくなり、何も考えられなくなっていくと、ようやく僕は眠りに落ちていった。
〇
ずぶ濡れで帰ってきた僕に、母さんは何も聞かなかった。僕はすぐにシャワーを浴びてから部屋へと戻り、倒れるように寝た。
その時点で、僕の体調には異変があった。呼吸をすると鼻が妙に熱を帯びる。頭が痛くて寒気がする。もう体も心も、使い物にはならなくなっていた。
「今日は無理ね」
体温計の数値を見ながら、母さんはポツリと呟いた。僕のおでこには冷却ジェルシートを貼られていた。すっかり子どもである。
「薬、貰ってきといてあげるから。ゆっくり寝てなさい」
「いいよ。自分で行くから」
「無理よ。全く、そうやって無理をしようとするところがまだまだ子どもなんだから。自分の体のこと、もっとちゃんと見つめられるようにならないとね」
唯奈に対し、僕は「背伸びをしている子ども」なんて表現を使うけれど、僕も全然変わりはなかった。やっぱり、まだまだ子どもだ。
僕は生まれつき体が弱く、頻繁に熱を出して寝込んでしまっていた。
僕は本当に弱い人間だ。体も、心も。
「ハジメちゃんにはもっと強くなってもらわないと困るんだからね。これからのためにも」
僕は母さんが言ったことが、将来へ向けての総合的なことなのか、具体的に何かを示しているのかよくわからなかった。僕は目だけで返事をする。
「じゃ、ちゃんと寝てなさいね」
そう言って母さんは部屋を出ていった。僕は言われたとおり、大人しく目を瞑った。
今日は少し晴れ間も見えるほど天気は回復しているようで、雨の音も聞こえない。ただ僕の頭の中は、工場の中みたいに音を出して動き続けている。
その動きにまとまりがなくなり、何も考えられなくなっていくと、ようやく僕は眠りに落ちていった。
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