3-5
文字数 1,002文字
部屋に戻ると、千愛莉ちゃんは机に突っ伏していた。僕が戻ってきても、こちらを振り向くことはなかった。
「ごめんね、千愛莉ちゃん。嫌な思いをさせちゃって」
「……え? ううん。そんなことないよ」
僕が話しかけると、千愛莉ちゃんは抜けてた魂が戻るのに時間が必要だったような間をもってから、笑顔で返事をしてくれた。僕はベッドへと腰を下ろす。
「こっちこそごめんね、麗さん、怒らせちゃったみたいで」
「いや、あれは怒ってたわけじゃないよ。そうじゃなくて――」
「心配してたんだよね」
そのとおりだった。麗は紅ちゃんのことを心配して、僕らに注意をしたのだ。だから僕らもぐうの音も出ず、ただうな垂れたのだ。
「麗の言うとおりだったら、もう昔みたいには戻れないのかな……」
「ううん。そんなことは無いと思うよ」
千愛莉ちゃんは優しい顔をしていた。それは、人を安心させようとする笑顔だ。僕は色々な人にそういう顔をさせていた。きっと、僕が弱いからだろう。
「私ね、麗さんの言うことは正しいと思うけど、それだけじゃないと思うの」
「どうして?」
僕は言葉を頭で咀嚼せずに、反射的に質問をした。
「だって、麗さんはあんなに紅輝さんのことを考えてた。そんな人が紅輝さんのそばに戻ってくれたら、それは絶対に紅輝さんにとって良いことだと思うもん。私よりも、ずっと」
千愛莉ちゃんは自虐っぽい言葉を付け加えた。僕はすぐに否定したかったけれど、言葉が出てこなかった。
「だからね、紅輝さんの寂しさを全部なくすことはできないかもだけど、やっぱり三人は仲直りしたほうが良いって思うな」
それが、千愛莉ちゃんの結論だった。僕は言葉を詰まらせたまま、必死に頷いた。
「こうなると、まずは紅輝さんに二人と仲直りしたいって思ってもらわないと、だよね。紅輝さんが仲直りしたいって言ったら、麗さんは受け入れてくれそうだし」
そして、いつもの前向きな千愛莉ちゃんに戻って、そう言ってくれた。僕は胸が一杯になる。
「ありがとう」
「へ?」
千愛莉ちゃんは少し間の抜けた顔になる。僕は自然と笑ってしまう。
「千愛莉ちゃんが、紅ちゃんの友達で、本当に良かったよ。千愛莉ちゃんは、麗と同じくらい紅ちゃんのことを考えてくれてるよ。絶対に」
僕がそう言うと、千愛莉ちゃんは照れたように、えへへとは笑った。
〇
「ごめんね、千愛莉ちゃん。嫌な思いをさせちゃって」
「……え? ううん。そんなことないよ」
僕が話しかけると、千愛莉ちゃんは抜けてた魂が戻るのに時間が必要だったような間をもってから、笑顔で返事をしてくれた。僕はベッドへと腰を下ろす。
「こっちこそごめんね、麗さん、怒らせちゃったみたいで」
「いや、あれは怒ってたわけじゃないよ。そうじゃなくて――」
「心配してたんだよね」
そのとおりだった。麗は紅ちゃんのことを心配して、僕らに注意をしたのだ。だから僕らもぐうの音も出ず、ただうな垂れたのだ。
「麗の言うとおりだったら、もう昔みたいには戻れないのかな……」
「ううん。そんなことは無いと思うよ」
千愛莉ちゃんは優しい顔をしていた。それは、人を安心させようとする笑顔だ。僕は色々な人にそういう顔をさせていた。きっと、僕が弱いからだろう。
「私ね、麗さんの言うことは正しいと思うけど、それだけじゃないと思うの」
「どうして?」
僕は言葉を頭で咀嚼せずに、反射的に質問をした。
「だって、麗さんはあんなに紅輝さんのことを考えてた。そんな人が紅輝さんのそばに戻ってくれたら、それは絶対に紅輝さんにとって良いことだと思うもん。私よりも、ずっと」
千愛莉ちゃんは自虐っぽい言葉を付け加えた。僕はすぐに否定したかったけれど、言葉が出てこなかった。
「だからね、紅輝さんの寂しさを全部なくすことはできないかもだけど、やっぱり三人は仲直りしたほうが良いって思うな」
それが、千愛莉ちゃんの結論だった。僕は言葉を詰まらせたまま、必死に頷いた。
「こうなると、まずは紅輝さんに二人と仲直りしたいって思ってもらわないと、だよね。紅輝さんが仲直りしたいって言ったら、麗さんは受け入れてくれそうだし」
そして、いつもの前向きな千愛莉ちゃんに戻って、そう言ってくれた。僕は胸が一杯になる。
「ありがとう」
「へ?」
千愛莉ちゃんは少し間の抜けた顔になる。僕は自然と笑ってしまう。
「千愛莉ちゃんが、紅ちゃんの友達で、本当に良かったよ。千愛莉ちゃんは、麗と同じくらい紅ちゃんのことを考えてくれてるよ。絶対に」
僕がそう言うと、千愛莉ちゃんは照れたように、えへへとは笑った。
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