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文字数 1,451文字

「ハジメちゃん!!」

 外に連れて行かれると、そこには数人の黒服の人と、千愛莉ちゃん、それに末松くんが待っていた。

「千愛莉ちゃんも来てたんだ」
「だ、大丈夫? 酷い怪我だよ……」

 顔を殴られた分、僕は酷い有様のようだ。千愛莉ちゃんは駆け寄ってきて、髪や服を優しく払ってくれた。

「……やっぱりあたし、ぶん殴ってくる!」
「いいから。あんたが行ったってしょうがないでしょ」

 麗が僕を、唯奈が紅ちゃんを支えてくれていた。僕はあちこちが腫れているようで、上手く動くことができなかった。紅ちゃんも同じようで、支えられてやっと立っていた。

「それに、真二郎があんなに怒ってたの、久しぶりに見たわよ。普通はこんな相手に人数なんて割かないのに、結構連れてきてるし。真二郎もハジメを気に入ってるから、そりゃもう、最低でも同じ目に合わせてくれるわよ」
「こ、殺したりしない?」
「ふふふ、大丈夫よ」

 麗は笑うと、僕を抱き寄せて頭を撫でた。僕は他の人の目が気になり、すぐに離れた。

「末松くん。ちゃんと連れてきてくれたんだね、ありがとう」

 急に名前を呼ばれた末松くんは、体をびくつかせた。

「お、おう」
「真二郎に話しかけたみたいよ。末松くんだっけ? 感謝するわ」
「え、ど、どーも」

 末松くんは感謝されることに慣れていないような返事をした。

「どうやって入ったの?」
「ああ、あたしが家の鍵の場所を知ってたんだよ。ここ、たまにああいうやつらが集まってんだよ」

 僕の質問を返してくれたのは唯奈だった。溜まり場になっているから、電球だけがあそこに設置されていたわけか。

「まあ最悪、ドアをぶち破ったけどね。ただそうすると警察に通報されてたかもしれないから、鍵があってよかったわ」

 もっと大事になったかもしれない。色んなことが一つ間違えればまずい状況になっていたらしい。

「……ごめん」

 次に口を開いたのは紅ちゃんだった。それは小さな声だったけれど、誰一人聞き逃さなかった。

「……あたしも、ごめん。殴ってごめん」
「……なんのこと?」
「だいぶ昔のこと! ああもう! 早く帰ろう! ここにいたら一発ぶん殴りに行きたくなる!」

 唯奈はそう言って、肩を支えている紅ちゃんを強引に歩かせた。黒服の人たちに一礼してから、僕らもそれについていく。

「で、では僕はこれで!」

 末松くんはびしっと敬礼した。紅ちゃんや麗にビビッているためか動きが固い。僕にとっては恩人なのだから、なんだか申し訳なかった。

「本当にありがとう。末松くん」
「ありがとう」
 紅ちゃんが言うと、末松くんは凄い愛想笑いで返した。

「あんがとー、末松。今度何かおごるからさ」
「末松くん、ありがとーございます」

 みんなで見送ると、末松くんは一礼して去っていった。あんなに礼儀正しい人だっただろうか。いっそのこと、末松くんも真面目な高校生になってほしいものだ。

「なんだ、見た目に寄らずいい奴じゃん」

 こらこら、唯奈が言うな。同じようなタイプのくせに。

「……末松? 末光じゃなかったか?」

 ずっと頭にハテナマークが浮かんでいた紅ちゃんが、僕にそんなことを聞いてきた。

「……そうだったっけ?」

 言われてみればそうかもしれない。しかし、それならなぜ末光くんは何も訂正せず、末松を受け入れていたのだろうか。

 言ってくれればよかったのに。今度、ちゃんと謝ろうと思った。


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登場人物紹介

・三木本一(みきもとはじめ)
 幼く、女の子みたいなルックスの男子高校生。人見知りで大人しいが、三人の不良娘にだけは強気で、その真面目さで時に彼女たちを説教する。三人を敬愛しているがツンデレなところがある。

・梅木唯奈(うめきゆいな)
 ぼさっとした髪と短いスカート、眉間にしわを寄せながら歩く様はどう見ても小物な不良。それは一種の背伸び行為であり、子供っぽく見られることを嫌がっている。普通にしていると無邪気さとその童顔によってかなり可愛い。馬鹿だが人情味のある人。

・竹原紅輝(たけはらこうき)
 黒髪ショートで、中性的なほど整った顔立ちをしているが、喧嘩が強い一番の問題児。その凛とした美しさとは対照的に、過去には数々の暴力で問題を起こしている。普段は大人しく、ハジメにとってはただの優しい年上の女性。ちょっと天然ボケ。

・松坂麗(まつざかれい)
 ウェーブした髪で、上品そうな見た目をしている。背は唯奈よりも少し高いくらいだが、雰囲気から年上に見える。場所によってはクールビューティーという感じで過ごしているが、ハジメたちの前では時に子供っぽくキーキー怒る。三人の中では一番の常識人。極道の娘ということを利用しつつも負い目を感じている。

・佐久間千愛莉(さくまちえり)
 紅輝の子分を自称する元気っこ。同じく年下の兄弟の居る唯奈と気が合う。その純粋さは敵を作らず、三人の橋渡し役を買って出る。

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