6-5
文字数 1,451文字
「ハジメちゃん!!」
外に連れて行かれると、そこには数人の黒服の人と、千愛莉ちゃん、それに末松くんが待っていた。
「千愛莉ちゃんも来てたんだ」
「だ、大丈夫? 酷い怪我だよ……」
顔を殴られた分、僕は酷い有様のようだ。千愛莉ちゃんは駆け寄ってきて、髪や服を優しく払ってくれた。
「……やっぱりあたし、ぶん殴ってくる!」
「いいから。あんたが行ったってしょうがないでしょ」
麗が僕を、唯奈が紅ちゃんを支えてくれていた。僕はあちこちが腫れているようで、上手く動くことができなかった。紅ちゃんも同じようで、支えられてやっと立っていた。
「それに、真二郎があんなに怒ってたの、久しぶりに見たわよ。普通はこんな相手に人数なんて割かないのに、結構連れてきてるし。真二郎もハジメを気に入ってるから、そりゃもう、最低でも同じ目に合わせてくれるわよ」
「こ、殺したりしない?」
「ふふふ、大丈夫よ」
麗は笑うと、僕を抱き寄せて頭を撫でた。僕は他の人の目が気になり、すぐに離れた。
「末松くん。ちゃんと連れてきてくれたんだね、ありがとう」
急に名前を呼ばれた末松くんは、体をびくつかせた。
「お、おう」
「真二郎に話しかけたみたいよ。末松くんだっけ? 感謝するわ」
「え、ど、どーも」
末松くんは感謝されることに慣れていないような返事をした。
「どうやって入ったの?」
「ああ、あたしが家の鍵の場所を知ってたんだよ。ここ、たまにああいうやつらが集まってんだよ」
僕の質問を返してくれたのは唯奈だった。溜まり場になっているから、電球だけがあそこに設置されていたわけか。
「まあ最悪、ドアをぶち破ったけどね。ただそうすると警察に通報されてたかもしれないから、鍵があってよかったわ」
もっと大事になったかもしれない。色んなことが一つ間違えればまずい状況になっていたらしい。
「……ごめん」
次に口を開いたのは紅ちゃんだった。それは小さな声だったけれど、誰一人聞き逃さなかった。
「……あたしも、ごめん。殴ってごめん」
「……なんのこと?」
「だいぶ昔のこと! ああもう! 早く帰ろう! ここにいたら一発ぶん殴りに行きたくなる!」
唯奈はそう言って、肩を支えている紅ちゃんを強引に歩かせた。黒服の人たちに一礼してから、僕らもそれについていく。
「で、では僕はこれで!」
末松くんはびしっと敬礼した。紅ちゃんや麗にビビッているためか動きが固い。僕にとっては恩人なのだから、なんだか申し訳なかった。
「本当にありがとう。末松くん」
「ありがとう」
紅ちゃんが言うと、末松くんは凄い愛想笑いで返した。
「あんがとー、末松。今度何かおごるからさ」
「末松くん、ありがとーございます」
みんなで見送ると、末松くんは一礼して去っていった。あんなに礼儀正しい人だっただろうか。いっそのこと、末松くんも真面目な高校生になってほしいものだ。
「なんだ、見た目に寄らずいい奴じゃん」
こらこら、唯奈が言うな。同じようなタイプのくせに。
「……末松? 末光じゃなかったか?」
ずっと頭にハテナマークが浮かんでいた紅ちゃんが、僕にそんなことを聞いてきた。
「……そうだったっけ?」
言われてみればそうかもしれない。しかし、それならなぜ末光くんは何も訂正せず、末松を受け入れていたのだろうか。
言ってくれればよかったのに。今度、ちゃんと謝ろうと思った。
〇
外に連れて行かれると、そこには数人の黒服の人と、千愛莉ちゃん、それに末松くんが待っていた。
「千愛莉ちゃんも来てたんだ」
「だ、大丈夫? 酷い怪我だよ……」
顔を殴られた分、僕は酷い有様のようだ。千愛莉ちゃんは駆け寄ってきて、髪や服を優しく払ってくれた。
「……やっぱりあたし、ぶん殴ってくる!」
「いいから。あんたが行ったってしょうがないでしょ」
麗が僕を、唯奈が紅ちゃんを支えてくれていた。僕はあちこちが腫れているようで、上手く動くことができなかった。紅ちゃんも同じようで、支えられてやっと立っていた。
「それに、真二郎があんなに怒ってたの、久しぶりに見たわよ。普通はこんな相手に人数なんて割かないのに、結構連れてきてるし。真二郎もハジメを気に入ってるから、そりゃもう、最低でも同じ目に合わせてくれるわよ」
「こ、殺したりしない?」
「ふふふ、大丈夫よ」
麗は笑うと、僕を抱き寄せて頭を撫でた。僕は他の人の目が気になり、すぐに離れた。
「末松くん。ちゃんと連れてきてくれたんだね、ありがとう」
急に名前を呼ばれた末松くんは、体をびくつかせた。
「お、おう」
「真二郎に話しかけたみたいよ。末松くんだっけ? 感謝するわ」
「え、ど、どーも」
末松くんは感謝されることに慣れていないような返事をした。
「どうやって入ったの?」
「ああ、あたしが家の鍵の場所を知ってたんだよ。ここ、たまにああいうやつらが集まってんだよ」
僕の質問を返してくれたのは唯奈だった。溜まり場になっているから、電球だけがあそこに設置されていたわけか。
「まあ最悪、ドアをぶち破ったけどね。ただそうすると警察に通報されてたかもしれないから、鍵があってよかったわ」
もっと大事になったかもしれない。色んなことが一つ間違えればまずい状況になっていたらしい。
「……ごめん」
次に口を開いたのは紅ちゃんだった。それは小さな声だったけれど、誰一人聞き逃さなかった。
「……あたしも、ごめん。殴ってごめん」
「……なんのこと?」
「だいぶ昔のこと! ああもう! 早く帰ろう! ここにいたら一発ぶん殴りに行きたくなる!」
唯奈はそう言って、肩を支えている紅ちゃんを強引に歩かせた。黒服の人たちに一礼してから、僕らもそれについていく。
「で、では僕はこれで!」
末松くんはびしっと敬礼した。紅ちゃんや麗にビビッているためか動きが固い。僕にとっては恩人なのだから、なんだか申し訳なかった。
「本当にありがとう。末松くん」
「ありがとう」
紅ちゃんが言うと、末松くんは凄い愛想笑いで返した。
「あんがとー、末松。今度何かおごるからさ」
「末松くん、ありがとーございます」
みんなで見送ると、末松くんは一礼して去っていった。あんなに礼儀正しい人だっただろうか。いっそのこと、末松くんも真面目な高校生になってほしいものだ。
「なんだ、見た目に寄らずいい奴じゃん」
こらこら、唯奈が言うな。同じようなタイプのくせに。
「……末松? 末光じゃなかったか?」
ずっと頭にハテナマークが浮かんでいた紅ちゃんが、僕にそんなことを聞いてきた。
「……そうだったっけ?」
言われてみればそうかもしれない。しかし、それならなぜ末光くんは何も訂正せず、末松を受け入れていたのだろうか。
言ってくれればよかったのに。今度、ちゃんと謝ろうと思った。
〇