2-1
文字数 1,338文字
三人との出会いは、僕が小学六年生の頃だった。三人は中学一年生で、皆、すでに高校生だった僕の姉さんにくっ付いてきたのだ。
やんちゃな姉さんだったけど、人望はあった。色々とどうこうしているうちに、三人に懐かれ、姉さんも三人を気に入り、よく家に連れてくるようになった。
姉さんが僕を猫かわいがりしていたので、三人も実際は一つしか歳の違わない僕を、ちっちゃな弟として優しくしてくれた。姉さんを含めた五人でいる時は本当に楽しかった。
それから今でも三人は僕の家へと、なんらかの理由をもって訪ねてくる。ただ、三人が揃ってということはなくなってしまっていた。
三人より一年遅れて僕は高校生になった。僕は三人と同じ高校へと入学した。一番近い公立、というシンプルな理由だったけれど、三人がいることを全く意識していないわけではなかった。揃って家に訪れないのに同じ高校に通う三人が、どんな生活をしているのか気になっていたのだ。
春から夏に移ろうとしている五月の終わり。春風がより暖かくなってきて、夏の気配が感じられる。
しかしその前に、面倒な梅雨という時期が待っていて、心中は穏やかではない。早く終わったらいいのに、といつも思う。
僕は雨が大嫌いなのだ。
「ハジメぇー!」
校内を歩いていると、ヤンキー女に話しかけられた。唯奈だ。学校内でもバカみたいに制服を着崩している。
「学校内で大声で呼ばないでよ。不良と仲良しと思われるじゃないか」
まあ、僕が他の人といるときはちゃんと距離を置いてくれているのは分かっている。三人とも僕には優しいのだ。
「なんだよ、あたしら仲良いべ?」
「べって言うのはやめてって言ってるでしょ」
「はいっ!」
良い返事。唯奈はいつも返事だけは良いのだ。
「今度さ、一緒にゲームしねぇ? 久しぶりにさ!」
そういえば、昔はよくゲームをしていた。みんなが僕を子ども扱いしていたから、僕との交流はテレビゲームが主流だったのだ。
唯奈のしている子どもっぽい笑い方は、当時でも幼く見えたのに、今でも全く変わっていない。
「いいけど……唯奈、いつも逃げるように帰るじゃん」
「だからさ、あいつらの来ない日が分かってたら、その日にしようよ」
そんなにゲームがしたいのか、あるいは僕と遊びたいのか。単に家に上がりたいだけかもしれない。唯奈は暇を持て余している。
でも、三人の中で最も友人が多いのは唯奈だ。他の学校の同じような種類の人と仲良くしているのをたまに見かける。
多分、唯奈は一人でいるのが苦手なのだろう。いつも誰かといることを望み、手頃なのが僕なのだ。
「まあいいよ、暇だし。じゃあ今日で」
「今日? いいけどさー」
今日こそが他の二人の来なさそうな日だった。紅ちゃんは基本的に休日だし、麗は順番という意識が強いのか、最低でも二日以上空け、休日も避けている。
ふと、唯奈は僕の後ろのほうを見た。誰か来たのか、唯奈は「じゃ」と短めの挨拶をして去っていった。
僕がすぐに振り返ると、チラッと紅ちゃんの姿が見えた。しかし、こちらへ来るでもなく、どこかへ行ってしまった。僕はこの距離感が嫌いだ。
〇
やんちゃな姉さんだったけど、人望はあった。色々とどうこうしているうちに、三人に懐かれ、姉さんも三人を気に入り、よく家に連れてくるようになった。
姉さんが僕を猫かわいがりしていたので、三人も実際は一つしか歳の違わない僕を、ちっちゃな弟として優しくしてくれた。姉さんを含めた五人でいる時は本当に楽しかった。
それから今でも三人は僕の家へと、なんらかの理由をもって訪ねてくる。ただ、三人が揃ってということはなくなってしまっていた。
三人より一年遅れて僕は高校生になった。僕は三人と同じ高校へと入学した。一番近い公立、というシンプルな理由だったけれど、三人がいることを全く意識していないわけではなかった。揃って家に訪れないのに同じ高校に通う三人が、どんな生活をしているのか気になっていたのだ。
春から夏に移ろうとしている五月の終わり。春風がより暖かくなってきて、夏の気配が感じられる。
しかしその前に、面倒な梅雨という時期が待っていて、心中は穏やかではない。早く終わったらいいのに、といつも思う。
僕は雨が大嫌いなのだ。
「ハジメぇー!」
校内を歩いていると、ヤンキー女に話しかけられた。唯奈だ。学校内でもバカみたいに制服を着崩している。
「学校内で大声で呼ばないでよ。不良と仲良しと思われるじゃないか」
まあ、僕が他の人といるときはちゃんと距離を置いてくれているのは分かっている。三人とも僕には優しいのだ。
「なんだよ、あたしら仲良いべ?」
「べって言うのはやめてって言ってるでしょ」
「はいっ!」
良い返事。唯奈はいつも返事だけは良いのだ。
「今度さ、一緒にゲームしねぇ? 久しぶりにさ!」
そういえば、昔はよくゲームをしていた。みんなが僕を子ども扱いしていたから、僕との交流はテレビゲームが主流だったのだ。
唯奈のしている子どもっぽい笑い方は、当時でも幼く見えたのに、今でも全く変わっていない。
「いいけど……唯奈、いつも逃げるように帰るじゃん」
「だからさ、あいつらの来ない日が分かってたら、その日にしようよ」
そんなにゲームがしたいのか、あるいは僕と遊びたいのか。単に家に上がりたいだけかもしれない。唯奈は暇を持て余している。
でも、三人の中で最も友人が多いのは唯奈だ。他の学校の同じような種類の人と仲良くしているのをたまに見かける。
多分、唯奈は一人でいるのが苦手なのだろう。いつも誰かといることを望み、手頃なのが僕なのだ。
「まあいいよ、暇だし。じゃあ今日で」
「今日? いいけどさー」
今日こそが他の二人の来なさそうな日だった。紅ちゃんは基本的に休日だし、麗は順番という意識が強いのか、最低でも二日以上空け、休日も避けている。
ふと、唯奈は僕の後ろのほうを見た。誰か来たのか、唯奈は「じゃ」と短めの挨拶をして去っていった。
僕がすぐに振り返ると、チラッと紅ちゃんの姿が見えた。しかし、こちらへ来るでもなく、どこかへ行ってしまった。僕はこの距離感が嫌いだ。
〇