108話 浪こす岩

文字数 229文字

女が、男のうつろう心をうらんで、
 
 風が吹き いつも波にぬれる 岩のよう
 私の服の袖は 涙で乾く時もなく
 
と、いつも、口癖のように言っていた。
それを聞かされた男は、
 
 夜ごと 蛙がたくさん鳴く あなたの田では
 男の涙で 水が増えるね 雨は降らなくても
 
   *
 
 風吹けば とはに浪こす (いは)なれや
 わが衣手(ころもで)の かわく時なき
 
 よひ毎に (かはづ)の あまた鳴く田には
 水こそまされ 雨は降らねど
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