84話 さらぬ別れ

文字数 403文字

男がおり、その官位は低かったが、
母親は、皇女(桓武天皇の娘、伊登内親王)であった。
 
その母は、京の長岡というところに住んでいた。
 
子は、都で宮仕えしていたので、
母の家へ行こうとは思っても、
そうたびたびは行かないでいた。
 
たった一人の子であったので、
母親は、とても、いとしがっていた。
 
そんな中、
十二月に、急の用事として、
男のもとに手紙がきた。
 
おどろいて見ると、母からの歌があった。
 
 年をとり さけられない別れもある といいます
 なおさら 会いたいと思っています あなたに
 
その子は、ひどく泣いて、詠んだ。
 
 世の中に そんな別れは なくしてほしい
 いつまでも と祈る 子どものために
 
   *
 
 老いぬれば さらぬ別れの ありといへば
 いよいよ 見まくほしき 君かな
  
 世の中に さらぬ別れの なくもがな
 千代も と祈る 人の子のため
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