第74話 那覇の街をブラブラ

文字数 4,615文字

 ホテル予約サイトのクチコミに、このホテルの朝食は種類豊富で美味(おい)しいと書かれていた。6時半ちょっと前に部屋を出て会場へ行くと、ちょうど開店したところだった。



 ゆし豆腐、ラフテー、焼き(サバ)、ゴーヤチャンプルー、クラムチャウダー、ミニ沖縄そば等々、沖縄の料理がかなりの種類並んでいる。いつもなら全部ちょっとずつ皿に乗せていくのに、種類が多すぎて半分くらいしか取れなかった。これなら連泊の人も飽きないはずで、またしてもクチコミの信頼度が上昇してしまった。

 ゆし豆腐はふわふわの豆腐で、薄い出汁(だし)と共に結構多めに取ってみた。これは朝にピッタリのあっさりトロふわ豆腐ですわ。これと濃い味のラフテーを交互に食べるとバランス良し。焼き鯖も(くさ)みが無くておいしい。ゴーヤチャンプルーは家でも時々食べるけど、やっぱり本場、ウマウマである。

 タコライスコーナーもあった。でも朝からそこまでガッツリいく気にならず。代わりにデザートを多めにして、サーターアンダギーや沖縄ぜんざいを食べた。サーターアンダギーは以前沖縄出身の人から手作りしたものを(いただ)いたりして、思い出深いお菓子だ。ネットで調べると首里の方言であり直訳すると「砂糖の油揚げ」、砂糖、卵、小麦粉を混ぜて丸めて油で揚げた物とのことだ。
 沖縄ぜんざいは金時豆を使うのが特徴だということで、(あま)ぁい。黒糖も入ってたのかな。



 朝食でどんだけ字数使うねん。
 ……朝は那覇市内が激混みしそうな気がして、10時まで雑記を書いて過ごした。これで今日は、今日の分だけ書けばよくなったぜ。結局3時間しか寝てないから今日は早めに寝たいんだー。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 ホテルを出て港の方向に歩いて行く。途中で神社や、15メートルの高さの龍柱に寄って、あと公園もブラブラしながら花や樹木の写真も撮った(あと)、砂浜に面した波上宮(なみのうえぐう)(まい)る。またしても人がわんさかいて、さっさと砂浜へ退避。



 今日は晴天につき、透き通ったエメラルドグリーンの海がお出迎えだ。真っ白な砂浜から沖に向かって徐々に淡い(みどり)色へと変化していく景色は唯一無二。その先は突如として(あお)色に変わるのもまた、他の海で見ることの出来ない色変化だろう。



 砂浜にヤンキー座りしてみる。足元には貝の欠片(かけら)のほか、珊瑚(サンゴ)の一部と思われるものも流れてきていた。ここがイノーだとすれば、やはりこの白さはサンゴが砕けて砂になり堆積したからなのであろう。



 五百円玉大のサンゴの欠片(かけら)を拾い上げると、なかなかの重量だった。もっとスカスカで軽いのだと勝手に思ってた。これはそうだなぁ、陶器の箸置きくらいの重さかな。サンゴの欠片を砂浜に置いて立ち上がる。
 ゆっくり歩き、打ち寄せる波に触れてみる。沖縄の海といえど手には若干のひんやり感。道理で海に入った人たちが早めに浜へ戻ってくるわけだ。

 しっかし暑い、暑い暑い。これ夏でしょう。もうズボンまで汗でしっとりしているんだが。
 そろそろコーヒーでも飲んで休憩しよう。僕は再び流浪(るろう)の民となった。



 波上宮から国際通り方面にテクテク歩いて行く。本日休業日の福州園という庭園の横のカフェが()いている様子。しかし店内には他のお客さんが見当たらない。
 恐る恐る入店。天井の大きくて綺麗な沖縄っぽい赤色のシャンデリアにびっくりしてしまった。泡盛や各種お酒、ビールなどが巨大な冷蔵庫内にきちんと整列していて、かなりちゃんとした店なのだと分かる。というか夜は高級飲み屋なのでは。そうか、園の休業日だから昼下がりの時間帯に客がいないだけで、明日とかはめっちゃ混んでるんだろう。ならラッキーだったのかも。



 田芋と書いて「TARO」と読む芋を使ったチーズケーキとアイスコーヒーを注文。チーズケーキの下層が芋の色で少し青くなっている。そして三色団子も付いていた。
 チーズケーキをフォークで切ってパクリ。おおー、芋だ。芋の風味がある。全然チーズの邪魔はせず、ちゃんと主張しつつも棲み分けが出来ている感じ。僕的には新しいな、これ。三色団子もさんぴん茶っぽい色のタレを付けて食べるとさっぱりもっちり(うま)し。アイスコーヒーぐびぐび。

 体力のインジケーターがどんどん回復しているのが分かる。疲れたら甘いもの、これ常識ネ。
 おっし、それでは国際通りに行きますか。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 国際通りは那覇のメインストリートで、1.6キロもの長い繁華街に、土産物店やホテル、飲食店などが軒を連ねる。戦後にいち早く復興したことから「奇跡の1マイル」とも呼ばれているそうな。アーニーパイル国際劇場という名の映画館があったために、国際通りと呼ばれるようになったとかなんとか。

 ひ・と・が・多・い・ぞ。
 通りを西側から東へ向かって歩き始めると、歩道を歩くのが大変なほどの観光客や修学旅行の学生たち。これはかなり疲れそうだから、とりあえず最初にパパッと土産物を買って家に発送してしまおう。
 目についた土産物店に入り、色んな味の入ったちんすこうや、沖縄の唐辛子(とうがらし)を使った(から)めの海老(エビ)せんべいなんかを適当にピックアップして発送を依頼。思ったよりは配送料が安くてホッとした。

 その店を出てしばらく歩くと徐々に人がまばらになってきた。どうやら通りの西端が異常に混んでいただけのようだ。
 アロハシャツやかりゆしシャツなるものを見て歩く。うーん、少し気になるデザインのシャツはあったけど素材からして当たり前のように夏服で、持ち帰ったとしても着るのは来年の夏になる。鬼が笑うぜ。
 色んなデザインがあるのは分かったし、ま、いっか。

 泡盛を見るため酒屋に入る。ハブ(しゅ)がたくさん置いてあった。ハブが丸ごと泡盛の中に漬けられている。そういえば、亡くなった祖父(じいちゃん)がハブ酒を持っていたな。アレどうなったんだろう。
 ハブ酒1本が無印iPadの1台分くらいの値段でビビる。もしかしてこれ、飲むんじゃなくて縁起物として飾っておくものなのか? ネットで調べると滋養強壮効果があるらしく、ちゃんと飲むものらしい。ほーん。

 シーサーの陶器の置物を眺め、ゴーヤの上にペアで座るシーサー像が輝いて見えたのであっさり購入。しかしコレ、手の平に収まるくらいとはいえこの(あと)の旅程ずっとインマイバッグ状態になるのか……。
 でも、ここで買ったのも何かの縁。仕方ないからシーサーたちを最後まで連れて行ってあげましょ!

 国際通りをズンズン進む。なんだか雰囲気の違うアーケード街が現れた。これは……何か(にお)うぞ。
 通りを()れてアーケード街に入る。細い道の両端には海ぶどう専門店や手相を見る店など国際通りに似た分かりやすい店もあれば、形容し難いちょっとマニアックな感じの店も連なっている。
 さらに歩いて行く。すると徐々にシャッターの閉まっている店舗が増え始め、いわゆる寂れた感じになっていく。こ、これはさらに(にお)うぞ。

 交差点に「那覇市立壺屋焼物博物館」という名称が書かれた掲示を発見。これだ、僕を呼んでいたのはきっとコレだ。
 矢印の方向へ歩き、博物館に着いた。こぢんまりとした外観はいかにも市立の建物である。ワクワク。



 入館して観覧料を払い、1階から観る。
 Ahaaa! これは素晴らしい博物館。まず1階は、古代から現在までの土器や陶器の歴史だ。縄文時代の土器から始まり陶磁器の輸入、首里城に近い壺屋での焼物生産の開始、近代の民藝運動についてなど、順序立てた掲示とその時期に作られた土器や陶器の展示があった。

 2階は僕の知りたかった沖縄の(かわら)の作り方や()き方、原料となる粘土の説明など、おきみゅーでは分からなかった情報がたくさんアリ。(かゆ)いところにようやく手が届いた感じ。屋根に瓦を葺く際の手順を動画で流していて、瓦の置き方、漆喰(しっくい)の塗り方など分かりやすかった。屋根にも漆喰を使うのか、勉強になるなぁ。

 さらにシーサーのルーツについても仮説だが説明あり。どうやらエジプトのスフィンクス等、古代オリエント世界のライオンがルーツらしい。中国から獅子像として伝来し、古くは火災除けや村の守りのためとして石で獅子を作っており、近代に入ると焼物のシーサーを作るようになったとのこと。

 1階で陶器の製作現場の紹介動画が流れた。この博物館は壺屋(つぼや)やちむん通りという通りにあり、近くの工房が幾つか紹介されていた。説明が全て沖縄の方言によるもので、下に流れる日本語字幕を読んで理解。そういえば、高速バスの中で会話していた地元のお爺さんたち、日本語なのに何言ってるのか分からなかったな。

 3階の特別展示、縄文時代の土器の発掘や再現についてを観てフィニッシュ。
 ちなみに「やちむん」は沖縄の言葉で焼物(やきもの)のことだった。土器や陶器の博物館にいるから分かるわけで、突然その言葉だけ聞いたら「?」ってなりそうだ。

 この博物館も訪れたタイミングでは他の客がいなかった。僕はちょくちょく異世界に放り込まれているのかも知れない。でも、すごく面白かった。面白い施設を探すための旅の嗅覚(きゅうかく)が鋭くなってきているのかも。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 本日のホテルに向かう途中、またもや怪しい建物を発見。なぜか年輩者が入り口で(たむろ)している。ベンチに寝そべっている人や、階段で話し込んでいる人。中には椅子とかベンチがないのだろうかと思い、建物に入る。
 ……なるほど、食品の(おろし)が集まっている場所か。確かに休憩出来そうなベンチや椅子は無いみたいだ。

 2階もあるのかとエレベーターで上がる。飲食店はこちらとの矢印に従い進むと、多くの店のシャッターは閉まっている。()いているのは2店舗くらいだ。そして八重山そばという言葉が気になって、カウンターに座ってしまった。実は腹が減っていたのである。

 メニューにはソーキそばやコッキそばがある。コッキは「ごちそう」という意味で、ちょっと贅沢なソーキそばのようだ。
 コッキそばを注文して、流れる沖縄のラジオを聴きながら待つ。

 コッキそば、ソーキそばのぜーたくバージョンは、豚の骨付きあばら肉であるソーキと、豚の三枚肉、かまぼこを乗せた八重山そばだった。
 八重山(やえやま)そばについて調べる。沖縄そばも豚を出汁(だし)に使っているのだと知った。豚を使ってあんなにあっさりとした出汁にできるのか。沖縄そばが豚と鰹節を主体にしており、八重山そばの汁は豚のみを出汁(だし)に使っているそうだ。

 だからなのか、ソーキも三枚肉もそばと汁と良く合っている。汁が濃い味じゃないから、肉をしつこく感じない。麺は沖縄そばと同じかな、太麺で噛み(ごた)えがある。ずっとミニ沖縄そばを食べていたから、意外な場所でしっかりした量を食べることが出来てよかった。

 よっしゃホテル。本日もコンドミニアムなのであります。料金は安いのにクチコミがかなり高得点だったためココにした。
 チェックインして部屋に入ると、やはり部屋は広く、ベッドも大きく、トイレとバスがセパレートで、洗濯機と乾燥機も付いていた。部屋から出なくても洗濯・乾燥ができるのは本当にありがたい。部屋の雰囲気がハワイアンなのも嬉しい。ハワイに行ったことはないけれど。

 洗濯機を回しながらバスに湯をためて入浴。
 夜食は国際通りで買った紅芋(べにいも)タルトとナントウだ。ナントウは「年頭」のことで、かつては正月にのみ食べていた餅のことらしい。もちもち甘くてうまい。タルトは当たり前のようにうまい。沖縄のお菓子はうまい。

 明日は……、また空の上かぁ。
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