第17話 鹿児島 とりあえずサウナ

文字数 1,825文字

 翌日、朝。
 目を()ませば二日酔い。昨夜飲んだウエルカムドリンク、ゆず酒なるものの影響だろう。すぐに酔っぱらったから、度数は不明だけど20パーくらいあったのではと思われる。酔うのは好きですが元々アルコールに弱いのです。
 夕食はたこ焼きだけだったからお腹がグゥと鳴る。ホラーアクションゲームで体力を減らした主人公がお腹を抑えながら辿々しく歩くあのポーズをとりながら、朝食バイキングの開始時間ピッタリに会場へと(おもむ)く。



 だご汁があって感激した。郷土料理、食べたいと思ってたんだ。だいこん、にんじん、ごぼう、さといも、小麦粉から作られるだんごが入っていて胃に優しい。だご汁は別名だんご汁と呼ばれるとか呼ばれないとか。
 さらにご飯トッピングの種類が豊富で、僕は明太子とシラス、鮭で謎の三色丼を作った。ウインナーや青椒肉絲(チンジャオロースー)も胃に取り込んで、〆はやはりコーヒーだ。朝食バイキング、あり寄りのあり。

 支度を整えてホテルを出る。なんだ結構涼しいじゃないかと思ったのも束の間、陽射しのある所は相変わらずの暑さだった。それでも快晴だから湿気はそれほど感じられず、風さえ吹いていればきっと快適なのだろう。風さえ吹いていれば……。

 九州新幹線で鹿児島中央駅へ向かう。土曜日の朝だからか、車内はスカスカ。九州に住んでいたら、県またぎの旅行はかなり快適なのでは。今日泊まるホテルの予約を済ませて観光の順序を考えていると、いつの間にやら終着駅の鹿児島中央。さすが新幹線。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 まだ朝の10時だけど、サウナへ行くことにした。繁華街である天文館のアーケード近く、鹿児島で人気があるというそのサウナは朝割で入館料が安かった。さあ、二日酔いを吹き飛ばすほどのパンチ(りょく)があるのか体験してみようじゃない。

 風呂場に入ると、2つのサウナ、水風呂、温泉とジャグジーが所狭しと存在していた。他の客は5人くらいか。
 まずは身を清める。洗体用のジャリジャリしたタオルで垢を落とし、シャンプーとボディソープを使って身体の汚れを流した。温泉に触れてその温度を確認すると結構熱いみたい。普段は先に湯船へ入って汗をかきやすくするのだけれど、今回は最初からサウナ室へ。

 いきなりムワッとした熱気にやられそうになる。温度計は約90度を指していた。そんなに高い設定でもないが、おそらく蒸気がどこかから出ているのだろう、感覚的にはもっともっと熱い気がした。
 じっくりコトコト()され、10分程度でサウナ室を出る。
 そして水風呂は15度程度。体温のジェットコースターに乗車したみたい。一気に身体の熱が奪われて、鼓動がゆっくりになっていく。
 1分ほど水風呂でジッとして、外気浴スペースは無いけどプラスチックの椅子が空いていたのでお湯をかけて座る。なんだか涼しいなと思ったら、横からエアコンの風が吹いてきていた。
 そうして10分程度リラックスして目を(つむ)っていたら、フワーっと無重力の世界に飛び込んだ様な気分になった。だが(ととの)うにはまだ早い。あと2セットあるのだ。

 備長炭温泉蒸気サウナなる部屋にも入ってみた。高温で蒸されるのではなく、部屋を埋め尽くす温泉の蒸気で発汗を促すようだ。実際15分程度入っていたら、明らかに蒸気ではなく自分の汗がじんわり放出されるのであった。

 そして高温サウナをもう1セット楽しんで椅子に座っていると、11時のアウフグースが行われるとの知らせ。戦地へ(おもむ)くかの如く、しっかりとした足取りでサウナ室に入る。すでに数人の戦士たちがスタンバイしていた。
 積まれた焼け石にアロマ水がかけられると、一気に室内にアロマの香りと蒸気が立ち込め熱くなる。さらに大判タオルで蒸気がかき混ぜられることにより温感が増し、汗が止まらなくなった。
 さらにさらに、ひとり5回の熱波が浴びせられていく。はたから見ていると「熱いのかな?」と思う。でも、タオルによって凝縮された熱波が自分に向かってくると、なんだろうゴメンナサイ、熱波ナメてました。メチャクチャ熱いです。完全にノックアウトされました。

 アウフグースという聖戦が終わり、水風呂に浸かり、その(あと)は椅子でリラックス。ああ、整った整った。完璧でございました。
 風呂上がり、無料のジャスミンティーを飲んで、休憩室でソファにもたれ(ほう)けていると、もう今日は動かなくてもいいんじゃないかなって……。

 イカンイカン。旅を続けなければ。
 そして僕の足は城山公園展望台へと向かう。
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