第64話 盛岡 啄木はたくぼくと読む、他

文字数 2,228文字

 美術館を(あと)にして、来た道を戻り今度は駅の東へ。街歩き開始だ。



 と、20分くらい歩いたところで足がパンパンなことに気付く。前日、前々日とかなりの距離を歩いてたからなぁ。
 少し休憩するかと喫茶店を探す。ショッピングセンターの1階に、僕に似合わないおしゃれな喫茶店を発見。僕には似合わないけど入ってみる。

 ブレンドコーヒーとスコーンを注文して革のベンチシートに座り、店内を見回しながら待つ。岩手関連の本や、歴史小説などが目につく。大きな棚には装飾品も置かれており、なんだか知的な雰囲気だ。



 スコーンは超絶パサパサした焼き菓子で、子供の頃から不思議と(えん)のある菓子。これがコーヒーに合うんだ。この店ではスコーンにクロテッドクリームを添えて出してくれるみたい。
 ブレンドコーヒーとスコーンを受け取り、もう一度席に着く。スコーンを(かじ)り、コーヒーを(すす)る。Ohうまーい。クロテッドクリームをつけて……また齧る。めっちゃうまーい。
 ゆっくりスコーンとコーヒーを味わい、足を回復させて喫茶店を出た。よし、行けるぞ。

 盛岡城跡を散策する。歴史文化館なるものがあったけど、今回は時間の都合でスルーした。そのせいで悲しいかな盛岡城のことは分からず仕舞いだ。今日は石川啄木と宮沢賢治について知りたいから仕方ない。



 それでも盛岡城跡の一番上まで行くと、ちょうど(あか)くなったモミジを見ることが出来た。なぜか僕以外はほとんど外国人で、(みんな)が上を向いてスマホでパシャパシャやっている。僕もパシャパシャやった。空の(あお)色がモミジの(あか)を強調して、とても美しかった。

 盛岡城跡に来るタイミングとしては最高だったかも。これからだんだんと紅葉(こうよう)が南下していくのだろう。そういえば、盛岡はかなり寒い。薄着しか持ってきていない僕は、次に行く青森の寒さに耐えられるだろうか。

 次は、もりおか啄木・賢治青春館を訪問。古い銀行の建物をそのまま使用している場所で、石川啄木と宮沢賢治の資料を無料見学できる。



 岩手の出身であり、ふたりとも病気がちで(つら)い人生だったようだ。啄木はあまりにも不運なその人生の悲哀を詩にして、賢治は「雨ニモマケズ」の通り、それでも懸命に生きていたのだと思われる。

 刊行された書籍のおそらく原本が置いてあり、歌集「一握の砂」の表紙が圧倒的に手書きでビビる。その前の詩集「あこがれ」はプロっぽい装丁(そうてい)なのにどうして……。
 詩集の一部は(ひら)いた状態で置かれており、読むことが出来た。当時の人たちは読んでパッと意味が分かったんですかねぇ。難しかったので、詩集を読むなら解説本が必須ではなかろうか。
 宮沢賢治の童話集「注文の多い料理店」は発刊当時、全然売れなかったそうだ。今じゃ何版刷られているか分からないくらい売れてるのに。

 ふたりのエピソードに明るいものが少なすぎて切なくなりつつも、だからこそ後世に残る作品が生まれたんだろうとポジティブに考えることにした。同時に、医療が発達して、こうして安穏(あんのん)と暮らせていることに感謝しなきゃ、とも思う。

 盛岡には、石川啄木ゆかりの建物や場所がたくさんあるようだ。しかし今日はそれらを(まわ)る時間は無い。いつか……どうだろう、そのためにここまで来るかは分からない。とりあえず東北の旅が終わったらふたりの作品を読んでみよう。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 盛岡八幡宮や盛岡城跡公園内の櫻山(さくらやま)神社に(まい)ったら午後5時近くになった。もう辺りは薄暗くて、急激に気温が下がってきた。そういえば、東北地方は11月中旬頃には雪が降り始めるのか。



 外を歩いて居酒屋なんかを探すより、駅の地下で風を()けつつ飲食店を探そう。

 地下のグルメ街を歩いていると、牛タン専門店の立て看板に牛タン・冷麺セットの写真があった。冷麺のスープは赤くないようだ。昨日食べた牛タンと、今日の午前中に食べた冷麺。このセットと比較してみるのも面白そうだ。

 ということで、外食に(うと)い僕でも名前を知っている牛タン専門の有名チェーン店に入る。まだ混み合う前のようで、ゆっくり食べられそうだ。セットを頼み、しばし待つ。注文が入ってから牛タンを焼いている、って当たり前か。
 そうして牛タン・冷麺セットが目の前に。冷麺のスープは赤くない。さて、韓国風じゃないスープのお味は、と。



 あー、なるほど、甘酸っぱい。これは酢が多めなのかな。だとすれば、漬け物がスープに合うのは納得だ。甘さもあるから、リンゴも合うだろう。
 冷麺の具は多分牛チャーシューと、リンゴと、キュウリの漬け物とネギ。麺は午前中の店よりも少しだけ太くて、これもプリプリで透明感のある麺だ。やはり盛岡冷麺は美味(うま)い。

 じゃあ牛タン、いってみますか。ひと切れを口にホイ!
 うおおおお、これは流石(さすが)の専門店だ。口の中でウシが暴れる暴れる。麦飯がどんどん進むぜ。タンを噛むたび(あふ)れる(あぶら)美味(おい)しさよ。永遠に咀嚼(そしゃく)していたくなる。

 いやはや、このままでは石川啄木と宮沢賢治のことよりも字数が多くなってしまう。……グルメ旅だからそれでいいのか?

 ただ、冷麺のスープは、午前中の韓国風冷麺に軍配(ぐんばい)をあげたい。味が複雑な分リピート性は高いと思うから。ってワシは何様やねん。
 すいません、調子に乗り過ぎました。

 腹を幸福で満たした(あと)は、東北地方にしかないコンビニチェーンで地ビールを買ってホテルにチェックイン。
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