第32話 愛媛 宇和島をブラブラ

文字数 2,149文字

 ホテルの朝食バイキングをしっかりといただき、ホットコーヒーですっきり目覚める。ご飯も食べるがパンも食べる。焼きたてパン、美味(うま)し。



 朝一番、まずはホテル近くの今治(いまばり)城へと筋肉痛の足を運んだ。この城は街の中にデンとあって、お堀でぐるっと囲まれている。日本三大水城のひとつとされる。ちなみにあとふたつは香川の高松城と大分の中津城。高松城は四国巡りの間に行けそうかな。



 入り口にある巨大な掲示を読むと、今治城は堀に海水が引かれているとのこと。どうりでお堀の外に小さなカニがいたわけだ。



 天守へ行くために通る(くろがね)御門(ごもん)は平成の時代に再建・復元されたものだが、門扉とその周辺が真っ黒。なんだか厨二病的でカッコ()い。僕の小説で門が必要になったら、黒い門にしよう。



 天守最上階から今治の街が眺められる。少し曇っているけど、方角によっては海の向こうに昨日通って来たはずの島々がうっすらと浮かんで見えた。



 最上階以外は写真撮影禁止だったのと、足と尻の痛みで、はっきりとしたことは覚えちゃいない。確か城の歴史が主として展示されていたはずだ。感心しながら別の建物含め色々観て回ったはずなのに、その記憶はどこかへ去ってしまったようだ。

 今日は特急に乗って松山を越えて宇和島へ進む。松山、特に道後温泉には行きたかったのだけれど、残念ながら3連休の初日である。圧倒的観光地の松山は、絶対混み合っていてしんどいはず。ただでさえ手負いのような状態なので、(つら)いのと面倒くさいのは御免だった。

 そんなわけで特急で松山駅へ、そして同じホームで宇和島行きの2両列車に乗り換えた。この宇和島行き、かの有名な頭をすげ替えることの出来る子供に大人気のパンを模したキャラクターがラッピングされていた。列車内の天井にもバイキ……黒い敵役のキャラが貼り付けられていた。
 その列車は松山駅で折り返しとなるのだが、降りてきた人たちも今から乗る人たちも大人ばかり。なんだか滑稽だ。

 だが列車が走り出すと、線路沿いでこの列車を見つけた子供たちが楽しそうに手を振ってくる。なるほど、乗る人へというよりも列車自体の宣伝なのかな。

 宇和島に着いたのは午前11時頃。まずは駅の北に位置する和霊神社へ行こう。新しい土地に行ったらやることは2つ。ひとつはその土地の神様に挨拶をする、そしてもうひとつは郷土資料館などでその土地について知ることだ。それでなんとなく観光した気分になれる。はず。



 和霊神社へは大鳥居をくぐり石造りの神幸橋(みゆきばし)を渡る。よく手入れされているのか、すごく綺麗な神社だった。僕が行った時間には枯葉もほとんど落ちてないくらいで、気持ちよく参拝出来た。漁業などの産業の神として(あが)められる和霊信仰の総本山だそうです。



 そして宇和島城へ。スマホの地図アプリの案内で近付いてみると「山だったか!」って、してやられた気分。それでもワシは(のぼ)るでぇ。



 (ふもと)の門に竹杖が用意してあった。そ、そんなにキツいのですかなと震えつつも、とりあえず杖を使わずに登り始める。石の階段を(のぼ)っていくが、わりと段差がまばらだ。そうなるとスイスイとは歩けず、どうしても一段一段気を付けながら足を上げることになり、どっと疲れる。これは確かに杖が欲しくなりますなあ。さらに途中、「荷物運搬」用のモノレールがあることに気付く。展示品とかを頂上まで運ぶためだろうか。これに乗ったら楽ちんだろうな、荷物運搬用って書いてあるけど。って思うくらい筋肉痛が……。



 こういう時に限ってよく晴れているわけで、僕はまたもや汗だくになりながら天守へと辿(たど)り着く。



 城内は古い構造のままとなっており、よって木造の階段が急である。足を上げると筋肉痛が……と険しい顔をしながら最上階へ上がり、窓柵の隙間から宇和島の城下町を見下ろす。山がボンボンボンと置かれている。それを避けるかのようにズラッと民家やビルが建ち並ぶ。西側は海。自然に囲まれた美しい町だ。



 天守の他にも城山郷土館なる建物で、宇和島ゆかりの文豪たちが紹介されていた。実際に宇和島が登場した小説や冊子が誰でも読めるように置いてあり、小説などの一部抜粋も展示されていた。司馬遼太郎や井上靖など数々の作家が宇和島を舞台にしたり、有名な闘牛を扱ったりしているのだ。
 時間があればじっくり本を読みたかったが、いかんせん僕は腹が減りました。寿司だ。寿司を食べよう。



 ということで海辺の回転寿司、でも回ってなくてタブレット注文の寿司屋さんにて遅めの昼食デス。関東、関西、四国、九州で計7店舗あるチェーン店。宇和島産シマアジや、宇和島五貫王なる宇和島の魚を堪能出来るメニューがたくさんある。それとマグロもブリも、分厚くてプリップリ。食感楽しくシャリも美味(うま)い。少々値は張ったけれども宇和島ならではの食事で満足、大満足の昼食となった。



 この寿司屋は道の駅の一部みたいだ。別の建物には軽食や土産物売り場があった。中に入って物色していると、酒饅頭とか、銘菓の最中(もなか)などがバラ売りされていた。もう夜はこれと酎ハイで良いのではと思い、幾つか購入。食べ切れなければ次の日に回せばいい。

 こうして筋肉痛を引き()ったままの一日は終わり、本日は駅近のホテルに泊まるのであった。しまなみ海道の雑文を書いて、寝る。
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