第69話 新潟 マリンピア日本海

文字数 2,415文字

 新潟駅から徒歩で1時間、新潟市水族館マリンピア日本海に着いた。



 入館してすぐ、外にあるドルフィンスタジアムなる場所でちょうど始まったイルカショーを観る。5頭のイルカがビシッと演技する豪快なショーだった。
 はじめは一斉(いっせい)に元気良く飛び跳ねる。次に海水から出て来てジッとしながら、司会の(かた)によるイルカの生殖器や骨格の説明などの手助けをする。そして反射音で位置を探査するエコーロケーションの説明があり、でも退化したといわれる目は意外に()いのだということ、呼吸を鼻でするということとその音の実演、耳の位置の説明なんかもあった。

 ここのイルカはすごく賢い感じがした。なんだかショーというものが分かっている風である。ステージに上がってジッとしている時も、しばらくして一度海水に戻って休憩し、合図されることなくまたステージに戻ってきた。5頭もいると1頭くらいは暇潰しに勝手に動きそうなものだが、指示されるまで静かに待っている。
 もちろんトレーナーさんの指導によるとは思う。それも合わせて水族館ごとの特徴を発見するのがとても楽しい。

 最後に大ジャンプやきりもみジャンプ、5頭同時のジャンプなどで観客を沸かせてショーは終了。終了後もサービスで何度かジャンプしてみせてくれていた。色んな所で何度観ても、イルカショーはワクワクドキドキして面白い。



 そのまま外にある施設で、当たり前のようにアザラシとペンギンを()でていく。ひたすら泳ぎ続けるアザラシや、子供のアザラシとぴったり引っ付いて横たわるアザラシ。ひたすらその可愛らしさに震える。外がやたらと寒いからではない、はず。



 ペンギンは30羽くらいいた。何を考えているのかイマイチ良く分からない表情で、勝手に泳いだり、割と広い場所をトコトコ歩いて行ったりしてカワイイ。彼ら、彼女らは観客である人間をどんな風に思っているのだろうか。



 その(あと)は新潟の淡水に棲む生き物や、深海の生き物、熱帯の生き物と、他の水族館でもよくある構成の館内を観て(まわ)る。寿司のネタになる魚が多くて、絶対今日は魚を食べようと思った。



 他にはクラゲ、小さな丸いコンペイトウなんかも眺めて、エイの巨大さに驚いて、なんやかんや楽しんでいるともう閉館時間の30分前。ここからまた1時間かけてホテルに戻ることになるから、そろそろ退館することにした。



 水族館を出て、夕陽が沈みゆくところを眺めるためにすぐ近くの海岸へ歩く。雲の中へと静かに落ちていくまあるいオレンジと、(いま)だに消波ブロックを襲い続ける波飛沫(なみしぶき)との雰囲気の乖離(かいり)が面白かった。日本海は一日中元気だなぁ。



 満足して戻りがけ、新潟縣護國神社(にいがたけんごこくじんじゃ)を訪れた。階段を(のぼ)って感嘆の声を漏らす。
 ……綺麗! 広い!

 まるで宮殿のように、境内(けいだい)(きら)びやかな回廊(かいろう)で正方形に囲まれている。鳥居から100メートルも参道が続く広大な神社にビビりつつ、荘厳(そうごん)な空気の中で(まい)り、少し境内を歩き回って去った。



 神社の近くに坂口安吾(さかぐちあんご)碑があって、「ふるさとは 語ることなし 安吾」と刻まれていた。坂口安吾は小説の大家だ。「白痴」とかが有名で、故郷である新潟について語った本もあるみたい。数多くの小説家の才能を見出した人である、はず。新潟市西大畑出身で、よく学校をサボってこの辺りの浜から日本海を眺めていたそうな。読みたいものリストがまた増えてしまった。

 これで今日の観光は終了。腹がペコのペコだ。坂口安吾は「ペコのペコ」とか書かなかったろうなぁ。
 ホテルに戻りがてら、アーケード街に寄ったりして()さげな店を探す。しばらく歩くと、「わっぱ飯 田舎料理」の文字が気になる店を発見。……昔からやってる風だし、期待できるかも?

 意を決して引き戸を(ひら)き中へ入る。最初にカウンター、奥に座敷と、2階もあるようで、外観よりもずっと広い店内だった。勧められるままにカウンターへ。カウンターの向こう側には結構お歳の料理人がふたり。うむ、これは美味(うま)い飯が食えそうだ。
 わっぱ飯と、のっ(ぺい)、豚角煮という構成の御膳(ごぜん)セットを注文。待ってる(あいだ)に「のっぺい」について調べる。サイトによって「のっぺ」とか「のっぺい汁」とか書かれているが、鶏肉、ニンジン、ゴボウ、レンコン、サトイモなどの季節の食材を煮込む汁物料理とな。汁は薄めの醤油などで、具材から出るとろみや旨味を使うようだ。



 わっぱ飯御膳がカウンターに置かれた。「わっぱ飯」は新潟の名物なんだってさ。 曲げわっぱの中で蒸したご飯の上に、鮭やイクラなどの海産物を乗せて食べる。この御膳では他に、カニ、(タイ)、のどぐろも乗っていた。
 のっ平は基本的な材料とさらに椎茸、絹さや、イクラも入っていた。これが基本なのかも知れないが。
 貝の味噌汁を(すす)り、まずは豚角煮を口に運ぶ。う〜ん、口の中でトロっととろけて、(アブラ)が広がる。味付けサイコー。さすが一日限定10食や! メチャクチャうまい!
 ご飯を食べたいけど、わっぱ飯の上には海鮮物がびっしり。とりあえずカニとともにご飯をかっ喰らう。ワオ! ご飯もウマッ。

 このままだと永遠にうま、ウマ、美味(うま)(うま)などの言葉が続くだけなので総評を。めっっっちゃ美味(うま)かったデス!!
 大通りからは少し離れた所で入り口も大きくないのに、入ってみたら郷土料理天国だったの(まき)。そして壁にかかったメニューを見て、僕はこの言葉をクチにするのです。

「ホタテのバター焼き、追加でお願いします」

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 ここのホタテのバター焼きは、貝柱をバター醤油で焼いたものだった。貝柱は大きいのが2つ。レモンの汁をかけてパクリ。うまうまウマウマッッ!

 あ、場面転換したの忘れてた。
 こんな感じで、新潟に来て4時間で色々と満喫してしまった。



 それでホテルに戻って、まったりビールを飲みながらこの雑文を書いて、明日は……小雨(こさめ)の予報かぁ。まあ、帰りの新幹線までは行ける所に行ってみようかなと。

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