半端なカケラ
文字数 494文字
何もないな
まっさらな空間に一人佇む男はそう思った。そしてそれは紛れもない事実だった。
男が今いる場所には何もなかった。そして男自身も何も持ち合わせていなかった。
さて、どうしたものか
しばし男は立ち尽くしていた。
どのくらいの時が流れただろう。
ちょうど淹れられる季節を間違えたコーヒーを飲み干すのにかかるくらいの時間がたった頃、男は無意識に今自分が履いているジーンズのポケットに手を突っ込んだ。
色褪せたそのジーンズの右のポケットに何かが入っているのに男は気付いた。そしてそのままその何かを男は引っ張りだした。
それは欠片 だった。それも半端な形の、それ自体には何の価値もない欠片だった。男はその欠片をゴミ箱に捨てようと思った。
ちょうど男の足元に手頃なゴミ箱があったからだ。
その欠片を捨てようとゴミ箱を除くとそこには既にいくつもの同じような欠片が捨てられていた。
「プロ野球選手になる」
「プロレスラーになってみせる」
「歌手になりたい」
ゴミ箱の欠片達はそう叫んでいた。
男はもう一度自分が今持っている欠片を見つめた。急に熱を持ったその欠片をしばらく見つめた後、男は再びその欠片をポケットにねじ込み走り出した。
まっさらな空間に一人佇む男はそう思った。そしてそれは紛れもない事実だった。
男が今いる場所には何もなかった。そして男自身も何も持ち合わせていなかった。
さて、どうしたものか
しばし男は立ち尽くしていた。
どのくらいの時が流れただろう。
ちょうど淹れられる季節を間違えたコーヒーを飲み干すのにかかるくらいの時間がたった頃、男は無意識に今自分が履いているジーンズのポケットに手を突っ込んだ。
色褪せたそのジーンズの右のポケットに何かが入っているのに男は気付いた。そしてそのままその何かを男は引っ張りだした。
それは
ちょうど男の足元に手頃なゴミ箱があったからだ。
その欠片を捨てようとゴミ箱を除くとそこには既にいくつもの同じような欠片が捨てられていた。
「プロ野球選手になる」
「プロレスラーになってみせる」
「歌手になりたい」
ゴミ箱の欠片達はそう叫んでいた。
男はもう一度自分が今持っている欠片を見つめた。急に熱を持ったその欠片をしばらく見つめた後、男は再びその欠片をポケットにねじ込み走り出した。