怪獣王 at the backstage

文字数 498文字

「はいでは間もなく本番でーす」
 楽屋で待つ怪獣王の耳にそんな声が届く。改めて事前に渡されていた台本に目を通しながら怪獣王は息を吐き出した。

「久しぶりの日本での実写か…」

 怪獣王は少しナーバスになっていた。ここのところアメリカでのシリーズやアニメ3部作になったりと定期的に出番はあったが生まれ故郷である日本での実写作品は実に7年振りだ。

「今回の舞台は…1940年代か…」

 それは今までのどの作品でも扱われたことがない年代だった。久しぶりの作品で新しいことをするのはリスクがある。そんなことも怪獣王をナーバスにさせる要因だ。

 その他にも不安要素はいくつかあった。

 今作での怪獣王はひたすらに暴れ回る存在だ。過去には人間の味方となりヒーロー的な立ち回りを演じることが多かったが最近はそういう役回りはない。これも時代の流れだろうか。

 そして今作は怪獣王のソロ出演作だ。他に出演する怪獣はいない。昔は色々な怪獣と闘ってきたがそういうのも今の時代には合わないのだろう。

…感傷に浸っている場合ではない。もう本番だ。
 最後に小さな咆吼(ほうこう)をあげながら背びれを発光させて声と身体の状態を確認してから楽屋のドアを開けた。
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